米軍機訓練で代替地選定へ 馬毛島の買収難航 九州、四国の空港が軸 防衛省

9月17日(日)11時3分 産経新聞

 防衛省が米軍空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転先と位置づけてきた馬毛(まげ)島(鹿児島県西之表=にしのおもて=市)に代わる候補地を選定することが16日、分かった。島の大半を所有する開発会社との用地買収交渉が暗礁に乗り上げ、買収断念に追い込まれる恐れが強まっているためだ。艦載機は米軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地(山口県)に移駐するため代替候補地は九州か四国が軸で、適地が見つかり次第、馬毛島の買収交渉は打ち切る。

 FCLPは空母艦載機が陸地の滑走路を空母の甲板に見立てて離着陸する訓練で、パイロットの空母着艦資格の取得や技量向上に欠かせない。昭和57年から厚木で行われていたが、騒音の深刻化で代替施設が確保されるまでの暫定措置として平成3年から硫黄島(東京都)で実施されてきた。

 在日米軍再編に伴い、横須賀基地(神奈川県)に配備されている原子力空母ロナルド・レーガンの艦載機は今年8月、厚木から岩国に拠点を移し始め、早期警戒機E2Dが岩国に移駐。FA18戦闘攻撃機や電子戦機も11月以降に移り、来年5月までに計61機の岩国移駐が完了する。

 防衛省は岩国からの距離が硫黄島よりも3分の1以下の馬毛島をFCLP移転先に絞り込み、平成23年から買収交渉を本格化。土地の大半を所有する都内の開発会社が賃貸契約を求め、安定運用には即時売却が不可欠とする防衛省と折り合わず、交渉は停滞した。

 昨年になり開発会社が即時売却に応じる姿勢に転じ、防衛省は買収額として数十億円を提示したが、開発会社はそれを相当上回る額を要求している。防衛省は妥結は困難との見方を強め、代替候補地の選定を進めることが得策と判断し、滑走路建設が不要な既存の民間空港を中心に選ぶ。

 米軍空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転は日米両国間で10年にわたり懸案となってきた。北朝鮮への抑止力と対処力として艦載機の重要性が増す中、馬毛島(鹿児島県西之表市)移転に固執し、これ以上停滞させることは許されないとの危機感から代替候補地の選定に乗り出す。

 朝鮮半島情勢の緊迫化を受け、米軍横須賀基地(神奈川県)に配備されている原子力空母ロナルド・レーガンは今月8日、警戒監視のため横須賀を出港し、北朝鮮を牽制(けんせい)。5日には米韓両国が米空母を朝鮮半島周辺に定期的に展開させる方針を確認している。

 北朝鮮への米軍の大規模攻撃ではグアムの爆撃機と並び空母艦載機は中核をなす。空母への着艦は高度な技術が求められ、ロナルド・レーガンが横須賀で整備や修理を受けている間にFCLPができなければ、艦載機パイロットの技量の維持・向上に支障をきたす。

 在日米軍再編で艦載機の厚木基地(神奈川県)から岩国基地(山口県)への移駐が決まったのは平成18年で、FCLPの移転候補地に馬毛島が浮上したのは翌19年。艦載機の岩国移駐は実施段階に入っており、FCLP移転のタイムリミットはとうに過ぎている。

 馬毛島移転が頓挫したからといって岩国でのFCLPは地元の反対のため不可能で、硫黄島(東京都)で続けざるを得ない。硫黄島まで厚木から約1200キロだが、岩国からは約1400キロと遠ざかり、「効率が悪く、往復する際の天候悪化や機体トラブルの危険性も高まる」(政府高官)と懸念される。

 馬毛島は岩国から約400キロと近く、政府内には土地所有者の譲歩に期待をつなぐ声もあるが、「譲歩する可能性は低い」(同)とされ、防衛省は最大の難局を迎えた。(半沢尚久)

産経新聞

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