【台風19号上空ルポ】濁流にのみ込まれた街 乳児抱えベランダから救助求める女性の姿

10月13日(日)13時55分 産経新聞

台風19号 赤ちゃんを抱いた女性(左)らが、1階が泥水に浸かった民家のベランダから助けを求める=13日午前、長野市(本社ヘリから、恵守乾撮影)

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 街が消えた。茶色く濁った水が一面に広がる光景に言葉を失った。東日本を縦断した台風19号の上陸から一夜明けた13日、取材ヘリで上空から長野県と栃木県に入った。千曲(ちくま)川の堤防が決壊した長野市穂保(ほやす)地区は、かろうじて建物の屋根や高層部が水面に顔を出す程度で、泥水につかっていた。千曲川の濁流の勢いは強く、日常を完全に流し去っていた。(北野裕子)

 千曲川に沿うようにして、街中を延びる北陸新幹線の線路の一部は、泥水の中に沈んでいた。

 付近にはJR東日本の「長野新幹線車両センター」がある。上空から確認できただけでも、少なくとも7本の新幹線が窓の下部あたりまで水につかっていた。少し離れた山側を走る、しなの鉄道北しなの線も途中から線路が見えなくなっていた。

 あふれ出た濁流は住宅や学校、コンビニエンスストアなど、人々の生活の拠点を容赦なくのみ込んだのだろう。店舗があったことは看板からうかがえるが、上空から見えるのはほぼ屋根だけだ。住宅のほとんどは1階部分が水没していた。

 目をこらすと、今にも沈みそうな住宅の2階で動く布のようなものが見えた。ベランダや窓から、取り残された住民らが救助を求めて必死に合図を出している。乳児を抱え、必死にタオルのようなものを振る女性の姿も見えた。

 自衛隊や警察のヘリが上空から救助にあたっていたほか、水没した場所でボートが泥水をかきわけ、住人らを運んでいた。

 濁流はどこから流れ込んだのだろうか。堤防を目で追うと、70メートルほど決壊した所があった。濁流に削り取られたのか、堤防の一部で茶色い壁がむき出しに。川幅は大きく広がり、川沿いに生えた木が水流できしんでいた。

 一帯は一夜にして街の原形を失ったようだ。かろうじて被害を免れたであろう人々が道の所々で、沈んだ街を見つめて立ち尽くす姿が見えた。

 被害は広範囲に及び、長野県上田市では、千曲川にかかる上田電鉄別所線の赤い鉄橋の一部が濁流の中に崩れ落ちた。東御市でも、千曲川にかかる田中橋が崩落、亀裂が入った橋は半分が濁流に崩れ落ち、3人が行方不明のままだ。

 取材ヘリは続いて栃木上空に入った。市内を流れる秋山川の堤防が決壊し、多くの住宅が浸水した栃木県佐野市の様子を取材するためだ。上空に到達したのは13日午後3時半ごろだったが、住宅や水田が広がる一帯を埋め尽くした濁流は徐々に引きつつあり、地面が見える部分もあった。

 ただ、水が引いたことで、横転している車やコンビニエンスストアなどが泥だらけになった惨状があらわになっていた。水浸しの住宅街を住民らがまばらに歩く様子も見える。

 川は濁流ではあったが、水流の勢いは収まりつつあり、決壊した堤防付近では一部損傷した橋を補修するため、工事関係者らが土嚢(どのう)を積んだりして急ピッチで作業を進めていた。

産経新聞

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