【チョ・グク辞任で任命責任追及へ】背水の文在寅政権の命運を握る「朴槿恵カード」とは?

10月14日(月)23時25分 文春オンライン

《チョ・グク法相辞任》検察改革をめぐる韓国人の”複雑な国民感情”がついに爆発し、文在寅は耐えられなかった から続く


 この数日間に曺国(チョ・グク)辞任を巡って政治判断が行われたのでしょうが、最も影響があったと考えられるのは世論調査の結果です。その中でも、最大野党の自由韓国党の支持率が上がって与野党の支持率が拮抗してきたことが、大きかったと思います。


 文政権を支持していた中間層が、いよいよ野党保守勢力に流れ始めたことを感じ取ったのでしょう。いま韓国の政局は来年4月の総選挙をどう戦うかを中心に動いていますから、この世論の変化には敏感にならざるを得ません。



辞任を表明する曺国法相 ©AFLO


 さらに、「反・文在寅=政権批判派」デモの広がりも影響したでしょう。このところソウル市内では、「政権支持派」と「政権批判派」のデモが繰り返され、“街頭政治”の真っ只中ですが、政権批判派の数が確実に増えている。いまや政権支持派を上回る人数が集まっています。政権批判派の集会では、普段デモに参加しないような中高年の姿も目にするようになりましたし、デモが繰り返されているにもかかわらず、参加者は減っていない。さすがの文在寅政権も民心が離れ始めていることを実感したのではないでしょうか。



 議員内閣制の日本と違って、大統領制の韓国では、権力集中度が高いだけに権力の「水漏れ」を恐れます。一旦穴が空くと、一気に政権が崩れてしまう。だからこそ、曺国を辞任させずに来たのでしょうが、いよいよそれも難しいと感じたと思います。


 文大統領は、テレビを中心としたメディアを掌握し、政権内部の左翼勢力による謀略を含めた民心掌握術にも優れたものがありました。それらに頼って、政権の支持基盤を過信していた部分もあったのでしょう。


保守勢力を悩ます「朴槿恵」の存在


 あれだけスキャンダルが報じられながら、曺国の法相指名を強行したわけですから、文在寅大統領の責任は大きい。今後は、野党である保守政党が、大統領に曺国法相の任命責任を追及していくことになるでしょう。


 今後の文政権の行方は、保守政党がいかに勢力を拡大できるかがカギを握っています。しかし、「反・文在寅」デモは盛り上がっても、保守勢力が一枚岩にまとまっていないのが実情です。

 

 いま政権与党がまだ安心していられるのは、このあたりに理由があります。保守派のデモに行くと分かりますが、多様な人が様々な旗を立てて、いくつもある舞台で勝手な演説をしている。「政権支持派」のように、一つの舞台で一枚岩になって、参加者で一斉にウェーブをやるような集会とは違うのです。


 いま保守がまとまりきれない最大の理由は「朴槿恵問題」にあります。実は、保守政党は「朴槿恵をどう評価するか」で意見が対立しているのです。端的に言えば、朴槿恵の弾劾に賛成したか否かで、立ち位置が分かれているのです。保守派、当時の与党の中にも、当時の世論に抗せずに弾劾に賛成した勢力があったからこそ、朴槿恵政権は崩れました。彼らを「裏切り者」とする勢力がまだいるのです。

 

 いま人気を集めている保守勢力は「朴槿恵釈放」を求めています。集会でも「朴槿恵待望論」を主張するグループがいます。



 曺国辞任を契機に、自分たちの過去を水に流して「政権奪還に向けて未来志向で団結しよう」となれば、文政権にとって脅威です。しかし、特に来年の総選挙に向けて小選挙区の野党候補一人化も、まだ進められていません。



文政権の保守分裂のための「切り札」とは


 そんな中、文政権には保守の団結を阻止する“切り札”があります。政界でまことしやかに語られている、選挙直前の「朴槿恵釈放」というカードです。


 刑が確定した後に朴槿恵を釈放すれば、保守派は混乱状態に陥る。これまで釈放を主張していた“朴槿恵信者”は勢いを増します。一方で、弾劾に強く反対しない者も多かった現在の最大野党・自由韓国党の議員は厳しい立場に追いやられます。いま自由韓国党の代表を務める黄教安(ファン・ギョアン)などは、朴槿恵政権下で首相にまでしてもらいながら、弾劾問題では今尚あいまいな立場ですから、保守派の中でも様々な思いがあるのです。


 韓国の保守派は、曺国の辞任では団結できて「1勝」をあげたのに、政権奪還に向けての野党保守勢力の統合とは簡単にはいかないのです。



 そんな政治状況の中で、対日関係はどうなるのでしょうか。いまの文政権内には、対米関係が膠着していることもあり、日本とこれ以上喧嘩できないという雰囲気はあります。


 曺国を辞任に追い込んだ野党保守勢力は、デモの会場でも「文在寅は反日運動を求心力拡大に使っている」「反日扇動に騙されるな」というスローガンを打ち出しています。したがって今後、文政権から新たに民心を刺激するような反日政策がでてくると、保守勢力に批判する材料を与えるようなものです。

 

 文在寅としては、反日カードがマイナスになる環境になりつつあります。今回の曺国辞任は、文在寅の反日政策を留保ないし一歩後退させる効果はあるかもしれません。



(黒田 勝弘/週刊文春デジタル)

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