フランスの宅配は「荷物が届かない」のが当たり前。では、どうする? 日本には衝撃の郵便・宅配便事情
2024年10月28日(月)21時25分 All About
フランスで生活していて困ることの一つに、「郵便物や宅配便の紛失・返送が多い」という点があります。安全な日本とは文化も慣習も異なるため、配送関係のトラブルが後を絶たないのです。今回はそんなフランスの宅配便事情について解説します。
「安全に届くのが当たり前」な日本に慣れていると、荷物を受け取ること自体がストレスになってしまいます。
なぜ起こる? フランスの宅配トラブル
フランス在住歴6年の筆者も、これまで幾度となく宅配のトラブルに遭遇してきました。段ボールが破損して中身が汚れてしまった、自宅の庭に荷物を投げ入れられた、近所のお宅に配達された……など、散々な内容です。また、在宅だったのに不在票を入れられて、日本に送り返されてしまったこともありました。抗議しても聞く耳を持ってもらえず、結局2度の配送料金を払うはめに。
そんなフランスの宅配トラブルは、どうしてここまで多いのでしょうか。主な理由を四つにまとめてみました。
配達員の人手不足と配達環境
フランスでは配達員の労働環境が厳しく、人手不足が深刻。これにより、荷物の扱いが雑になり、誤配達や紛失が多く発生してしまうのです。郵便局員や宅配業者の運営体制や人員配置の問題があるため、解決には時間がかかるとされています。また「広域な配達エリア」も原因の一つだと考えられています。ストライキの影響で配送が混乱する
ストライキ文化が根付くフランス。労働者の権利を守るべく、郵便局員や宅配業者もストライキを行うことがあります。特に長期のストライキが発生すると、物流ネットワークが混乱し一時的に大量の荷物が遅延するため、紛失リスクが高まってしまいます。住所表記による配達ミス
フランスの住所表記は日本に比べ、大まかです。日本のようにアパート名や階数、部屋番号が記載されないことが一般的なので、配達員も正確に届けるのが難しいそうです。日本のような細かい時間指定はなし
日本では2〜3時間ごとの細かい時間指定ができますが、フランスではできません。エクスプレス便などで指定できたとしても、それは午前か午後のどちらかのみ。不在の場合は玄関先に荷物を置いていかれるか、送り返されるか、郵便局まで受け取りに行くか、のいずれかになります。フランスで流行する新たな受け取り場所「ポワン・ルレ」
フランスではこうしたトラブルを回避するため、自宅以外に配送するというサービスがどんどん増えています。その一つが「ポワン・ルレ(Point Relais)」と呼ばれる宅配ボックスです。これはスーパーマーケットやタバコ屋さんなどに設置されている、公共で使える宅配ボックスのこと。到着すると受取人に通知が届くため、期限内にピックアップすればOKです。
そのほかにも郵便局や駅などにあるロッカーでの受け取り、Amazonの注文を受け取れる「Amazon Locker」も利用者がどんどん増えています。
業者には頼らず、自分の荷物は自分で守るという意識に
こうした受け取り場所が増えたことで、フランスの宅配事情も昔に比べて改善されたという印象を受けます。ただしこれは根本的な解決方法ではないので、「自分の荷物は自分で守る」しかありません。アパレルならば「最寄りのショップまで受け取りに行く」、Amazonの注文ならば「Amazon Lockerを利用する」ことを選択するようにしています。少し面倒ですが、フランスには日本のような丁寧な配達サービスがないため、このような予防策が大切なのです。
日本の親切な「再配達システム」や安全な「置き配システム」を聞けば、フランス人もあっと驚いてしまうことでしょう。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)