神社本庁「疑惑の不動産不正取引」を告発した幹部職員が会見! 組織ぐるみの口封じの実態が明らかに

11月2日(木)19時1分 LITERA

神社本庁HP

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 先の衆院選では、安倍自民党が圧勝。いよいよ憲法改悪が政治日程に上がってくる可能性が高まったが、折も折、その安倍首相とタッグを組んで改憲を推し進めているあの神社本庁の不正を内部告発する会見が開かれた。


 本サイトで何度も指摘しているように、神社本庁は、全国約8万社の神社を包括する一方で、日本会議などと連携し、戦前回帰を目的に改憲運動や反フェミニズム運動を展開してきた。系列には神道政治連盟という極右政治団体を擁し、その国会議員部門である神道政治連盟国会議員懇談会では、安倍晋三首相が会長を務めている。


 ところが、衆院選投票日直前の10月17日、その神社本庁の稲貴夫・元総合研究部長と瀬尾芳也・元教化広報部長が懲戒処分の無効を求めて、東京地裁に提訴。同日、霞が関の司法記者クラブで稲元総合研究部長が弁護士とともに会見を開いたのだ。総合研究部長といえば、神社神道の研究や神職の研修などを統括する要職。教化広報部長も本庁の広報の要をになう立場だ。いったい何があったのか。


「提訴は決して私の本意ではございません。しかしながら、一日も早く元の職場に戻りたいという思いと、そして現在、こうした形で神社のことが話題になってしまうことは、全国の神社をお守りしている神職の方々をはじめ神社関係者の方々に申し訳ないことではあるのですが、これを契機に神社本庁の正常化、再生のきっかけになってほしいという思いで、今回提訴に踏み切りました」


 稲元部長は会見でこう語ったが、問題は稲氏らが懲戒処分を受けた理由だった。稲元部長らは勤務態度に問題があったわけでも、部下や同僚に対してなにか不当な行為を働いたわけでもない。


 2人が処分されたのは、本サイトで追及してきた"神社本庁・不動産不正取引疑惑"について、本庁内部で疑義を呈したためだった。その行為が、職員就業規則の懲戒条項に抵触するとして、神社本庁は稲総合研究部長に解雇処分を、瀬尾教化広報部長に降格減給処分を下したのである。


 つまり、内部告発者が"口封じ"処分されたというわけだが、そもそも"神社本庁・不動産不正疑惑"とはどういうものなのか。初めて知った読者のために概要をおさらいしておこう。


 2015年、神奈川県川崎市にある神社本庁所有の職員用宿舎が、東京都新宿区の不動産会社「ディンプル・インターナショナル」(以下、ディンプル社)へ、1億8400万円で売却された。ディンプル社は売買契約日当日にこの宿舎を別の不動産会社A社に2億1000万円で転売。そしてこのA社も翌年、大手ハウスメーカーB社にさらなる高額で転売していた。宿舎は最終的に3億円超の値がついたとみられている。つまり神社本庁は、本来3億円を超えるはずの所有不動産を、たったの6割程度の値段で売ってしまうという明らかな"大損"の取引を行ったのだ。


 そして、この不動産取引をめぐって、極めて不可解な事実と、きな臭い関係性が浮上した。本サイトで報じたように、疑惑の中枢は、神社本庁の不動産を転売してその差額約3000万円を儲けたとみられるディンプル社の存在だ。


 実は、神社本庁の内規では、「やむを得ない事情」により基本財産を売却する際は原則として3者以上の競争入札に付す必要があるなど、厳しい制約がある。ところが、前述の通り、問題の宿舎は入札にかけられず、ディンプル社に随意契約で売却され、買値を大きく上回る額で即日転売されていたのである。


 これだけでも異様だが、しかもディンプル社は過去に神社本庁の別の不動産取引にも関わっており、その際もやはり即日転売で儲けを出していたという。誰がどう見ても、不動産転がしによる典型的な"中抜き"の構図で、このような売り手に損害を与えるような売買契約が認められてことを踏まえれば、これは神社本庁の一部とディンプル社が"癒着関係"にあると考えるのが自然だ。そして、本サイトが取材を進めるなかで、その線上に、ディンプル社の社長と神社本庁上層部の"昵懇な関係"が浮かび上がってきたのだ。


 ディンプル社は新宿の古いマンションの一室にオフィスを構える小さな会社だが、そのドアには並んで「日本メディア・ミックス」という会社の名前が掲げられている。日本メディア・ミックスは季刊誌「皇室 Our Imperial Family」という宮内庁お墨付きの"皇室ファン雑誌"の販売元。表向きの発行元は扶桑社だが、事実上、神社本庁の外郭団体である「日本文化興隆財団」が企画している雑誌であり、メディア・ミックス社はその定期購読などを担うことで利益を上げてきた。


 これもまた、神社本庁系の財団がメディア・ミックス社という第三者に業務を委託することで、直接販売を手がければ得られるはずの販売利益の一部をみすみす手放していることになる。つまり、神社本庁は出版事業をめぐっても、疑惑の不動産取引と同じような構図を長年続けており、そこに噛んでいる会社が同じオフィスにあるというのである。


 しかも、このディンプル社とメディア・ミックス社は両社とも高橋恒雄氏という人物が社長を務めているのだが、神社界関係者によれば、高橋社長はある"神社界の大物"と20年来の付き合いで「昵懇の仲」であるという。


 それが、神道政治連盟会長の打田文博氏だ。打田会長は、閣僚や官邸幹部、自民党幹部などとも直接面会を重ねており、神社界と政界をつなげる"キーマン"の一人と目されている人物。田中恆清・神社本庁総長と"一心同体"といわれ、「本庁内で多大な影響力を持つ、事実上の2トップ」(前述・神社界関係者)という。


 現在は本庁の役職についていないが、前述の日本文化興隆財団の理事のひとりであり、かつて同財団が所有する渋谷の土地を売却し、ディンプル社を通じて代々木にビルを購入した際にも財団側から関わっていたとされる。


 こうしたことから、神社本庁から不動産取引を通じてディンプル社に流れた巨額の金の一部が神社本庁幹部に還流しているのではないかという見方が浮上してきたのだ。


 まさに、組織ぐるみの不正のにおいがぷんぷんしてくるが、そのきな臭さは、稲総合研究部長らが懲戒処分を受けた経緯を聞くと、ますます濃厚になってくる。


 この不動産取引については、2016年の春ごろから、神社界内部でも問題になっていた。不正を糾弾する複数の匿名文書が出回り、そのなかには上層部の関与を疑うものもあったという。そして、評議員会や役員会でもこの問題が取り上げられた。


 稲部長が行動を起こしたのはそのあとだった。全国の神社からの浄財である神社本庁の財産がこのような状況でよいのか、問題提起をする"檄文"を書き、本庁役員2名に渡したのだという。その理由について、稲氏は会見でこう語った。


「昨年5月の評議員会、あるいは役員会で、百合ヶ丘職舎売却に疑惑があるんじゃないかという問題提起がされながら、神社本庁執行部がその隠蔽を図ろうとしているということ。それから百合ヶ丘職舎のディンプル・インターナショナルへの売却は当時の瀬尾財政部長が、いろんな圧力を受けてそういう決定をしたわけなんですけど、疑惑が浮上してくるとその責任を瀬尾財政部長ひとりに負わせようとする動きが明らかなってきたものですから、こうなった以上は役員のみなさんに、言葉ではなかなか理解いただけない内部の状況も含めて、私が文章にしたためて、当時の小串(和夫)副総長と理事ひとりに提出をしたという経緯でございます」


 実は、今回、稲部長とともに懲戒処分を受けた瀬尾教化広報部長は、問題の不動産取引が行われた当時、財政部長で、取引の担当者の一人でもあった。そのため、神社本庁内部では、疑惑が明るみに出ると、瀬尾部長に責任を押し付ける動きが出てきたのだという。しかし、瀬尾部長が職員宿舎のディンプル社への売却を進めたのは、上層部からの圧力によって、取引を強要された結果だった。


 実際、本サイトが以前、取材した神社本庁関係者もこんな証言をしていた。


「匿名文書にも書かれていたことですが、瀬尾さんは、打田さんと主従関係にある複数の幹部職員からディンプル社への売却を急かされるようなことを言われていたようだ。本庁のある中堅職員が彼に『早く売却先を決めろ!(ディンプル社の)高橋社長が怒っているぞ』ということを言って追い詰めたという話もある。しかも、後になってこの中堅職員は『そのように言ったのは、実は打田さんに頼まれたからなんだ』と漏らしていたというのです」


 つまり、稲部長は、当時の担当者である瀬尾部長がトカゲの尻尾切りにされてしまわないよう、役員に真相の解明を求める提案をしたということのようだ。さらに、当の瀬尾部長もこの不正取引に利用されたとの怒りから、圧力について内部で証言を始めていた。稲氏は会見で、不在だった瀬尾氏にかわってこう説明している。


「瀬尾さん自身も、自分が責任を負わされそうになりましたけど、それは違うと。いろんな圧力を当時受けて、随意契約という方針を当時示したんだ、と。ただ、そういう主張がなかなか受け入れてもらえない。なので、それは違うということを部長会等の会議で主張しました」


 その結果、今年3月になって、ようやく神社本庁内部で不動産取引の調査委員会が設置された。委員会は、稲氏から檄文を受け取った小串副総長が中心となったという。


 だが、委員会設置の事実は外部には一切秘密にされ、一方で、稲氏、瀬尾氏には神社本庁上層部からさまざまな嫌がらせが加えられた。


 両者とも、匿名文書とはまったく無関係なのに、犯人扱いされ、稲氏は謹慎処分に。瀬尾氏はディンプル社の高橋社長から脅迫とも取れる言辞を浴びせられたり、神道政治連盟の打田氏、神社本庁の田中総長に呼び出されて、圧力をかけられていたという。


 上層部による明らかな口封じが行われていた訳だが、結局、疑惑解明の動きも信じがたい幕引きを迎えることになる。7月には調査委員会が"売買契約が不当だったとまでは言えない"という趣旨の結論を出して、疑惑の職員宿舎売却はおとがめもなしにしてしまったのだ。そして、8月には、前述したように、稲総合研究部長が懲戒解雇、瀬尾教化広報部長に降格減給という懲戒処分が下されたのである。


 稲部長の懲戒理由は、"思い込みによって事実に反する情報を流布し、神社界の信用を傷つけた"等というもの。瀬尾教化広報部長の懲戒理由も、不正な不動産売却を担当したことではなく、反対に、彼が後日に売買価格や取引先の選定について疑義を呈したことで"業務を混乱させた、職場秩序を乱した"等が理由だという。


 言っておくが、この2人は、今回の不正な不動産取引疑惑をめぐって、あくまで組織の自浄作用を期待して内部で問題提起したにすぎない。


 そうした職員を、逆に「神社界の信用を傷つけた」などとして懲戒処分にするというのは、どう考えても筋が通らない。明らかに不当労働行為であり、2人が処分取り消しを求めて裁判を提訴するのは当然だ。


 しかも、このめちゃくちゃな懲戒処分は、逆に、今回の疑惑が神社本庁という組織ぐるみでおこなわれたものであり、上層部が深く関わっていることを証明したとも言えるだろう。その経緯を見ると、不動産取引の真相を明るみに出されてはまずいと考え、2人の"口封じ"をしたとしか考えられないのだ。


 さらに、この幕引きにはもうひとつ不可解なことがある。神社本庁が設置した調査委員会が7月にこの不動産取引を問題なし、と結論付けたことは先に述べたが、驚くことにその直後、稲部長の檄文を受け取り、調査委員会の責任者となった小串副総長が辞表を提出し、8月末には副総長を辞任しているのだ。神社本庁関係者はこう語る。


「小串副総長の辞任は本庁内でも波紋を広げている。田中総長は"檄文"を小串副総長が受け取ったことなどに対する"引責"のように言っています。ですが、神社界では別の見方も根強い。それは、今回の騒動と"その根の存在"を重くみた小串副総長が、田中総長に対する"抗議"として辞任したのではないか、というものです。事実、副総長が病気などの理由以外で任期途中に辞めるなんてことは、神社本庁の71年の歴史で初めてだと思います。それだけ異例の辞任だったんです」


 不可解な不動産取引に、神社本庁職員2名への不当としか思えない懲戒処分、そして副総長の異例の辞任──。処分の不当性については今後、司法の場で争われることになったが、他方で、本サイトが前回の記事で触れたように、ディンプル社が不動産取引等で儲けた金が神社本庁幹部らに還流されているのではないかという"噂"も神社界で後を絶たない。こちらも真相を明らかにすべく、本サイトでは続けてこの問題をリポートしていくつもりだ。
(編集部)


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