「ネットの集団リンチに抵抗」 被告側、責任能力争う姿勢 福岡・IT講師「Hagex」さん殺害初公判

11月11日(月)10時51分 毎日新聞

福岡地裁などが入る庁舎=福岡市中央区六本松で、平川昌範撮影

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 福岡市で昨年6月、IT関連セミナーの講師を刺殺したとして、殺人などの罪に問われた同市東区の無職、松本英光被告(43)は11日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)の裁判員裁判の初公判で「間違いありません」と起訴内容を認めた。インターネット上のトラブルが原因で面識のない相手に恨みを募らせ、殺人にまで発展したとされる今回の事件。被告側も動機について「ネット社会での集団リンチへの抵抗だった」と説明した上で、責任能力について争う姿勢を示した。


 起訴状によると、松本被告は昨年6月24日午後8時ごろ、講師として同市中央区にある市の起業支援施設(旧大名小学校)を訪れていた岡本顕一郎さん(当時41歳)の首や胸などをレンジャーナイフで多数回突き刺し、殺害したなどとされる。岡本さんはセミナー終了後、施設内のトイレに入ったところで襲われた。検察側は精神鑑定結果などを踏まえ、完全責任能力はあると判断し起訴した。


 検察側は冒頭陳述で、事件の背景について、ネット上の投稿サイトに他のユーザーを罵倒する投稿を繰り返していた被告が、サイトの運営会社に投稿を通報され、アカウントを凍結されたことがきっかけだったと説明。アカウントが凍結された被告は「ネットリンチされている」と思うようになり、被害者を含む通報者への「怒り・憎しみを募らせ、誰かを殺害したいと考えるようになった」と主張した。


 被害者については「ネット上でのやり取りだけで面識は一切ない」とした上で「たまたま福岡に来ることを知って殺害計画を立てた」と指摘した。検察側によると、被告は2012年に仕事を辞めた後、自宅アパートで引きこもり、ゲームやインターネットに没頭するようになった。検察側は初公判で、松本被告がアパートで毛布を被害者に見立てて殺害の練習をしていたとの趣旨の供述をしていたと明かし、実際に約10カ所の傷がある毛布が見つかっていたという。


 一方、弁護側は殺害行為については争わない姿勢を示す一方で▽事件当時被告が心神耗弱状態だった▽自首が認められる——などとして、刑の減軽を求めた。


 弁護側はまた被告の父親の「この1年半ほど、息子がなぜこのような事件を引き起こしたのかと、親として自問自答するつらい日々でした。裁判で少しでも息子が真実を語ってくれればと思うのみでございます。自分の引き起こしたことの重大さ、周りの人たちに与えた苦難に気付いてくれることを願ってやみません。被害者やご遺族、関係者の皆さまに父として心よりおわび申し上げます」とのコメントを読み上げた。


 岡本さんはネット上で「Hagex(ハゲックス)」というハンドルネームを名乗る人気ブロガーで、ネットの炎上発言などを監視する「ネットウオッチャー」としても知られた存在だった。東京都内のサイバーセキュリティーコンサルタント会社に勤務し、匿名化ソフトを使ってアクセスする「ダークウェブ」など最新のサイバー犯罪にも精通していた。


 一方、松本被告は、投稿サイトで他のネットユーザーを「低能」などと頻繁に中傷していたことから、他のユーザーから皮肉を込めて「低能先生」と名付けられていた。岡本さんは「低能先生」による目に余る誹謗(ひぼう)中傷があった際に、サイトの運営会社に通報してアカウントを凍結させ、「低能先生」が投稿できないようにさせていた。


 事件の直後、ネットの投稿サイトには、松本被告によるとみられる「ネット弁慶(ネット上だけで強気な発言を繰り返すこと)卒業してきたぞ」「俺を『低能先生です』の一言でゲラゲラ笑いながら通報&封殺してきたお前らへの返答だ」などの投稿があった。また「これから近所の交番に自首し責任を取る」との書き込みもあった。松本被告は事件の約3時間後に福岡市内の交番に名乗り出た。【宗岡敬介、浅野孝仁】

毎日新聞

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