箱根駅伝の行方を占う“山上り”と“山下り” 青学は今季も苦戦必至か?

11月14日(木)11時0分 文春オンライン

「駅伝は、ミスのないチームが勝つ」


 近年、繰り返し言われてきた格言である。大エースがいればそれに越したことはないけれど、それ以上に各選手がミスなくたすきを繋ぐことこそが、勝ちへの近道。


 近年のスピード駅伝では、派手な区間新記録よりも、全選手が区間上位でしっかり走ることの方が大切なのだ。


 事実、前回の箱根駅伝で優勝した東海大の区間賞はわずかにひとつ。


 2位に敗れた青学大が4つの区間賞を獲得したのとは対照的である。青学大は4区と5区のたった2区間の失速で、苦汁をなめることになった。



前回大会では、東海大が青学大の5連覇を阻止して、初の総合優勝を果たした ©文藝春秋


東海、青学、駒澤、東洋、國學院 “5強”それぞれ強さと脆さ


 ところが、出雲駅伝、全日本大学駅伝を終えたいま、今シーズンの大学駅伝を振り返ると、今季はこの「ミスのないチーム」が存在しない。大小の差こそあれ、優勝チームであっても流れを崩す走りが目についてしまった。


 全日本の後、あるチーム関係者はこうこぼしていた。


「今季は特に、1つミスがあるだけで優勝争いから一気にシード争いまで落ちてしまう。混戦模様です。上位のチームもどこも盤石という感じではないですし、箱根駅伝も小さなきっかけで大きく順位が変わる気がします」


 そんな言葉の示す通り、シーズン前に“5強”と言われた東海大、青学大、駒澤大、東洋大、國學院大の各校も、2つの前哨戦を通してそれぞれ強さと脆さを見せる形となった。


 東海大は圧倒的な選手層の厚さがある一方で、“黄金世代”と呼ばれる4年生が故障の影響もあり安定感に欠け、その好不調で一気に流れが変わってしまう。青学大と駒澤大は、総じて堅実な走りができるものの、絶対的と呼べるエースがいない。東洋大と國學院大は、エースの爆発力は抜群だが、層の薄さが課題となっていた。


 そんな風に結果的に圧倒的な優勝候補校がいない状況を考えると、2020年の箱根本戦でも各チームに予想外の事態が出てくると考えた方がいいのだろう。仮にそうなった場合、優勝を占う上でもっとも決着に影響を与える区間は——やはり山である。


 そこで、箱根路の最大の特徴である5区と6区の山区間から“5強”の各校を見てみると、まず、上りに大砲を備えるのが東海大と國學院大だ。


「区間賞と総合優勝を狙う」東海大・西田


 昨季の王者・東海大は前回大会で5区を走り区間2位だった西田壮志(3年)がここまで絶好調。出雲で区間2位、全日本で区間賞と平地の走力が去年よりかなり成長している。大きなレースでの失敗がほとんどなく、チームでもエース級の活躍を見せている。本人も山への意気込みは十分。


「今までは力のある4年生に頼ってきていた部分があったので、今季は先輩たちに恩返しができるような走りをしたいです。箱根は山一本で考えていますし、区間賞と総合優勝を狙っていきます」




区間記録を期待される國學院大・浦野


 出雲の優勝で一気に上位戦線に出てきた國學院大は、前回5区の区間賞・浦野雄平(4年)がトラックシーズンから学生トップクラスの活躍を見せている。前哨戦ではエース区間を任され、レースを積極的に引っ張る走りを見せたため、区間賞こそ獲れていないが、その実力は十分だ。


 浦野本人はエース区間の「2区を走りたい気持ちもある」とこぼすが、チーム状況等を考えると今季も5区への登場は濃厚で、前回を上回る区間記録が期待されるだろう。



もう一度調子を上げたい駒大・伊藤


 駒大と東洋大も、いずれも昨季の経験者が残るが、前回区間5位の駒大の伊東颯汰(3年)は春先以降調子を落としており、全日本でも区間2ケタ順位と振るわなかった。あと2か月でもう一度、調子を上げてくることが必要になる。東洋大は前回8位の田中龍誠(3年)が3度目の山上りに挑めるか。今季はここまで大会・記録会への出場がほとんどなく、調子が読めないが、“山籠もり”で5区に備えているとしたら、大崩れはないだろう。



山下りが勝負どころ 東洋大・今西


 一方で山下りに目を向けると、ここでは東洋大が圧倒的アドバンテージを持つ。昨季区間3位で走った今西駿介(4年)は、平地でもエース級の走力をつけており、出雲・全日本でもともに区間2位。レース展開を見ても区間順位以上に良い走りを見せており、箱根では区間新記録も十分に狙える。今西が万全の走りができれば、ここで一気に後続を引き離せるだろう。ただし、走力が高いがゆえに往路の平地区間への起用も可能性がある。6区に今西を置けるかどうかが東洋大のひとつのキーポイントになるかもしれない。



 それに次ぐのが駒大の中村大成(4年)。前回は区間6位でまとめている。今季は駒澤のエース格として出雲・全日本でも好走しており、上積みが期待される。安定感は十分なので、あとは優勝候補のチームと比べても爆発力のある走りができるかどうか。今季の駒大は選手層が厚く、平地でトップクラスの走力のある中村大成を6区にほぼ確実に起用できるのもアドバンテージだ。



東海大、國學院大の下りは


 東海大は中島怜利(4年)の復活次第。前回大会区間2位の“下り職人”だが、今季は夏まで調子が上がらず、トレーニングを積めていない。


「強い同期たちと比べた時に、僕には目立てるのが箱根しかない。ここにすべてを懸けていました」


 年始のレース後にはこう語っていたように気持ちが強く、経験値も豊富な選手。果たしてどこまで昨季の走りに近づけることができるだろうか。


 國學院大は下りに経験者がいないため、ここに誰を起用するかが大きなポイントになる。平地のスピードがある島崎慎愛(2年)あたりが候補だろうが、夏以降に故障もあっただけに判断が難しい。5区の浦野ではかなりの貯金が期待できるだけに、この6区次第で國學院大の上位進出可能性が大きく左右されるだろう。


「上りへの適性は十分」青学大・竹石


 そしてこの2区間を見た時に、もっとも苦境に立たされているのが青学大だ。5区の経験者である竹石尚人(4年)は、今季ここまでもうひとつ結果が出ていない。「上りへの適性は十分」と原晋監督が太鼓判を押す選手だけに、課題はメンタル面だろうか。



 山下りも前回大会まで4年間担った区間記録保持者の小野田勇次(現トヨタ紡織)が卒業。「小野田がいると下りで2分離される計算をしないといけない」とある監督がぼやいたほどの実力者の穴は大きい。誰を起用するにせよ、小野田よりは割引いて考える必要がある。


総合優勝では6区までが前半戦


 ただし、そこは百戦錬磨の原監督のこと。全日本後のイベントではこんな気炎を上げていた。


「山上りと山下りにもようやく『光』が見えてきた。あとは、選手が冷静に走れるかどうかでしょう」


 策士ではあるが三味線は弾かないのが原流だけに、特殊区間にも目算は立っているようだ。


 往路は5区までで一区切りをするものの、総合優勝を考えた時には6区までの区間が前半戦と考えられる。山を下ったところまでで先頭に立つことができれば、その後の平地区間は先導車両を風よけに、自分のペースで押すことで、非常に走りやすくなる。


 果たして箱根の山を下った時に、先頭を走っているチームはどこだろうか?



(山崎 ダイ)

文春オンライン

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