人材不足の救世主、外国人労働者の賢い使い方

11月15日(水)6時0分 JBpress

岡山の裸祭りで見た日本の不思議と伝統。(c)AFP/Behrouz Mehri〔AFPBB News〕

 外国人労働者がここ数年で急増している。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると2016年10月末時点で日本で働く外国人は108万3769人と、初めて100万人を超えた。

 ここ5年間では、およそ1.6倍ほどに増えている。業種別では製造業が一番多く33.9万人で31.2%、続いて卸売、小売業が13.9万人(12.9%)、宿泊・飲食サービス業が13.1万人(12.1%)と続く。

 日本では外国人を採用する際に、就労ビザの取得にあたり日本人と同等かそれ以上の待遇での雇用が企業に求められている。

 また以前から労働環境の問題があるとされていた、技能実習生においても、2016年11月に技能実習適正化法が成立し、本年11月1日より施行。こちらでも日本人と同等かそれ以上の待遇での雇用が必須となった。

 こういった環境の中で、外国人労働者を雇用するための理由として単なる労働力不足の解消という企業もあるだろう。

 しかし、それ以外に外国人労働者という「付加価値」を求めて雇用を進めている企業・施設もある。浅草にあるホテル、アゴーラ・プレイス浅草(東京都台東区)もその1つだ。

 今から5年前の2012年、1人の台湾人の女性がワーキングホリデーを利用して日本で職を探していた。呉以琳(Elaine Wu)さん、当時は24歳。

 大学で日本語を専攻していた彼女は卒業後、台湾の飲食店グループで日本語を利用する業務を行っていた。

 当初から日本で働きたいと考えており、1年ほどその飲食店グループで働いた後、日本に来日した。その経験を生かし、ホテルでの就労を希望。人材会社を通じてアゴーラ・プレイス浅草で働き始めた。

 当時は日本人客8割に対して、外国人客は2割程度と圧倒的に日本人客が多かったものの、すでに外国人客が急増し始めており、アゴーラ・プレイス浅草は現地語を話せる呉さんの採用を決めた。

 呉さんは当初、フロントとして働き始めた。中国語(台湾)、日本語だけではなく、英語も話すことができたため、中国・台湾からの宿泊だけではなく、その他の国からの宿泊客の対応も行った。


言葉の壁でユーザーニーズつかめず

 「海外からの宿泊客は、言葉が通じないために実際に希望しているサービスを積極的にはホテルに伝えないケースが多かった。そのため、十分に満足されていない方もいた」

 「しかし、実際に現地語で会話ができる呉さんが入ってからは、その希望がしっかりと伝わり、より良いサービスを提供できた」

 アゴーラ・プレイス浅草の総支配人、坂口敏樹さんはこのように話す。

 実際、外国人を雇用するサービス業が求めるのも語学力だ。ここまでは当初、ホテル側でも想定していたものだが、実際に呉さんを雇用してからはいくつも驚きがあったと言う。

 まず、1つ目は直接的な集客に貢献したことだ。

 呉さんが何気なくホテルでの活動内容やキャンペーン内容をフェイスブックに中国語(台湾)で挙げていたところ、非常に多くの人が興味を持ち、台湾からの宿泊客が急増した。

 台湾ではフェイスブックの利用が日本よりはるかに活発だ。2016年のフェイスブック発表データによると、台湾のインターネット利用人口に対する利用者率は90%を超えている(日本では21%程度)。

 これだけフェイスブックの利用が活発な国の出身の呉さんの宣伝力は非常に強い。この呉さんの活動が起点となり、今では観光客の8割近くが台湾人となっている。


ビジネススキルの高い外国人

 2つ目はビジネススキルが高いことだ。

 日本で働く前に、ビジネス用の他言語を勉強している場合が多い。特に台湾人は中国語、日本語、英語の3か国語話すことができる人が多く、また真面目なため、すぐに日本のマナーも覚えて対応ができる。

 さらに、旅行ブローカーに対する海外観光客向け企画などは、日本人では分からない現地事情を考えたうえで提案できる。

 3つ目は仕事に対してのモチベーションが日本人よりも高いこと。

 日本で働きたいと思っている外国人は日本での定住を希望している場合が多い。そのため短期で結果を出す必要と考えているからだ。実際に呉さんは、「生活のすべてが仕事」と言い切るぐらい、仕事に没頭してきた。

 4つ目は上司、部下の間柄でもしっかりと意見をぶつけ合える点だ。

 日本では、部下から上司へ意見をなかなか言いづらい。その影響もあり、現場の状況や課題が上司へ伝わりづらいことがある。

 しかし、坂口さんが驚いたのは「言わない、ということはない」ことだ。そして次のように話す。

 「もちろん波が立つこともあるが、呉さん含めて外国人のスタッフは本当に皆が気持ちよく働くためには何が必要かということを考え、改善すべきことは指摘する」


LINEグループで社員同士がやり取り

 さらにアゴーラ・プレイス浅草では、対面や書面だけではなく、引継ぎも兼ねて「LINEグループ」を作ってやり取りを行っている。

 現在、アゴーラ・プレイス浅草で働いている20人(うち外国人労働者3人)が皆グループに入っており、全員が確認できる場で公平に話ができているという。

 こういった付加価値を発揮する一方で、雇用に関して課題もある。大きく分けて2つ。

 1つ目は職場側の観点だ。

 実際に外国人労働者を採用して、役立つ仕事を割り振ることができるかどうか。

 初めにも記載したように最低賃金法に従って採用することになるため、単純労働者として採用するのではなく、より効果が上がる仕事を割り振るべきだが、初めて外国人労働者を採用しようと考えた場合、どういった仕事を割り振ることがいいかの情報が必要だ。

 2つ目は雇用される側の外国人労働者の仕事以外のサポートについてだ。


日本での生活を始めるうえで困ること

 例えば、役所への書類の提出や、賃貸契約、家財道具の購入など、日本で初めて働く際に困ることが多くある。

 通常2つの課題はそれぞれの企業・労働者が自己責任で採用・就労することになる。しかし、「それではお互いのためにはならない」と今回、呉さんの日本での就労をサポートしたアプリ(東京都新宿区)代表の庄子潔さんは言う。

 リゾートバイトという住み込み型の派遣サービスを提供しているアプリでは、住居が用意される点と、日本に来る前にインターネット通話などを利用したしっかりとしたインタビューを行っている。

 その結果、外国人労働者と採用企業とのミスマッチを極力防ぐことができ、外国人労働者に受け入れられ急成長をしている企業だ。

 受け入れ企業に対して、他の企業でどのように外国人労働者が活躍をしているかを伝え、ノウハウを提供することによってミスマッチを防ぐ。

 また、すべての労働者に提供しているわけではないが、各担当者の裁量で役所への書類の提出や、日用品の購入のサポートなども行っている。

 「丁寧なサポート活動を行うことで、サービス開始当初から現地エージェントを一切使わずに、友人同士での紹介やSNSで情報が伝わり、日本で働きたい人が弊社に直接登録してくれている」(庄子潔さん)という。


生活サポートで仕事に専念

 呉さんも日本で働くことに当初は不安もあったようだが、日本に来て一番最初に嬉しかったことはアプリの担当者から、「困っていることはないか?」と連絡があり、生活面でしっかりサポートされたことだという。

 「生活習慣の違うところできめ細かくサポートしていただいたからこそ、仕事に集中できた」と呉さんは言う。

 今後、日本人の労働人口が減少するにつれて、外国人労働者を即戦力として生かせるかどうかが日本企業にとって成長するための条件となるだろう。そのためには、いま見てきたようなサポート体制は特に重要と言えそうだ。

筆者:石塚 裕介

JBpress

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