「万博とカジノ」のほかに大阪経済浮上に必要なもの

11月24日(土)6時0分 JBpress

2025年大阪万博の会場となる夢洲(写真:アフロ)

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 2025年の国際博覧会は大阪で開かれることになった。会場は大阪湾の埋立地、夢洲だ。大阪に住む者の1人として素直に喜びたいと思う。まずは誘致の成功、おめでとうございます。

 とは言うものの正直なところ、私は「大阪万博」の開催自体については特に賛成でも反対でもない。ただ、大阪府政や大阪市政を長年ウォッチしてきただけに、今回の誘致には素直に喜べないものがある。これまでの誘致活動の背景に、大阪の複雑な政治的思惑があることを感じているからだ。


万博誘致と「大阪都構想」はワンセット!?

 この万博誘致は大阪府の松井一郎知事が言い出したもので、その最大の目的は「大阪経済の発展」にある。もちろんそのことに異議をはさむ余地はない。私も賛成である。

 ただ、松井知事が考える「大阪の経済を発展させたい」という願望の裏には、別の願望も混じっていると推測している。いわゆる「大阪都構想」の実現である。

 松井知事は大阪維新の会の代表でもある。その大阪維新の会は大阪都構想(以下、都構想)を最大の政治的目標とする政党だ。その都構想のキモは大阪市を廃止することである。と同時に、府と市に横たわる二重行政を解消し、事務を簡素化。行政コストを引き下げ、大阪の知名度を上げることで大阪経済を発展させようというのが都構想の狙いである。だが、2015年5月の住民投票で反対票が賛成票を上回り、都構想も一度は否決されている。

 松井知事が万博誘致を言い出したのは、1回目の住民投票で負けた後のことだった。おそらく松井知事の頭の中には、万博と都構想をワンセットにすることで、万博誘致の成功も、それに伴う経済波及効果も都構想の効果の1つだと訴えたいのだろう。実際、大阪府と大阪市は現在、2度目の住民投票の準備を進めている。

 2025年の大阪万博は決定した。松井知事が純粋に大阪経済を活性化させたいのであれば、まずは都構想と万博とは切り離して考えてもらいたい。事実、都構想に反対の自民党と公明党も大阪万博の誘致には前向きなのだ。ここに政局を持ち込んでもらいたくはない。


発想がハコモノ行政の延長線上にありはしないか

 さらにもう一点、疑問に思っている点がある。2025年大阪万博で、本当に経済が発展するのかということだ。経産省は約2兆円の経済効果があると説明しているのだが、果たしてそろばん通りにいくものなのか。会場の建設が始まって海外からも観光客が押し寄せればゼネコン、ホテルなどのサービス業は潤うだろう。ただし、課題はそれが長続きするかどうかだ。単に万博を開催しただけでは一時的な効果はあっても、景気は長続きしない。
 
 今の万博は、昔の万博と違うのだ。1970年の大阪万博は日本の高度成長期にぶつかっていた。日本の経済発展が右肩上がりに続いている中で開かれたものだったから、その勢いを加速させる役目を見事に果たすことができた。

 ところが今の日本経済に当時のような勢いはないし、大阪経済にいたっては地盤沈下が著しい。なるほど、万博は景気のカンフル剤にはなるだろう。多くの観光客も来るだろうし、インバウンドで利益を上げる産業もあるだろう。だが大切なことは、その勢いを長期間にわたって維持する方法ではないのか。

 一方で支出は膨大なものになる。会場整備費だけで約1200億円かかると言われているし、交通網のインフラ整備も必要だ。相当な金が必要になるのだが、大阪府も大阪市も必ずしも金に余裕があるわけではない。もちろん万博の費用は国と自治体、企業の三者で分担するのだが、フランスは効果が見込めないとして立候補を途中で辞退したのだ。不透明な経済効果に目を惑わされて万博に巨額の金を投じて大丈夫なのだろうか。
 
 万博誘致で経済を発展させようという考えは、ひと昔前のハコモノ行政と本質的には変わらない。ハコモノを作れば、確かに建築土木業や設備系の企業は儲かる。しかし、効果はその程度だ。

【写真】ハコモノ行政の失敗で一時は財政破綻寸前に追い込まれた大阪(2018年8月9日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / Toshifumi KITAMURA〔AFPBB News〕

 かつて大阪は、ハコモノ行政で手痛い失敗を経験している。2005年ごろの大阪市は財政破綻寸前だった。その大きな原因は、大阪湾岸エリアの開発に失敗したからだ。今回の万博の会場となる夢洲も、その負の遺産である。大阪湾岸を埋め立て、大きな土地を作って整備し、企業誘致をすれば、企業も人も集まり、経済発展していくだろう——。こんな思惑が当時の大阪市を支配していたのだが、思ったほど企業は誘致できず、結果は大失敗。多額の借金だけが残ってしまった。

 今回の万博誘致の発想は、このときの発想から抜け切れていないのではないか。それが、また同じ間違いを繰り返すのではないか、と心配する所以である。

 大阪の経済がこれほどひどくなったのは、もともと大阪に本社を置いていた企業が、東京に移ってしまったことも原因だ。裏を返せば、それだけ大阪が魅力ない街になってしまっているのだ。

 万博開催を契機に持続的な経済発展に結びつけようと思うのなら、まずは企業が根付くような環境を作ることが大切だろう。法人税の優遇や優秀な人材を呼び込む雇用体制など、企業や研究機関を呼び込むような施策とワンセットでなければならない。万博終了後も「やっぱり事業をするなら大阪だ」と思わせるくらい企業にとって魅力ある街にしないことには本当の経済発展は望めない。万博を開催しただけでは企業が集まってきたり、転入してくる世帯が増えてくることはない。


カジノと万博、だけでは大阪経済は甦らない

 大阪万博には、政府の思惑も絡んでいる。1964年の東京オリンピックで敗戦国からの復活を世界にアピールした日本は、6年後の大阪万博で先進国としての姿を各国に知らしめた。事実、それなりの経済効果もあった。今回も昔の夢を見ようと、2020年の東京オリンピックと2025年の大阪万博をセットで考えている。ただし当時と今では経済環境がまるで違うことは注意しなければならない。

 政府は2020年の東京オリンピックに、景気を大きく刺激する効果を期待している。オリンピック終了後の反動で景気の谷がやってくることも織り込んでいる。その緩衝材として、5年後の大阪万博でもう一度景気を押し上げようと目論んでいるのだ。

 しかし2000年代に入って以降の各国の事例を見てみても、万博の後に景気が長続きした事例は少ない。唯一の成功例は2010年の上海万博くらいだろう。
 
 1990年には、大阪で国際園芸博覧会である「大阪花博」(大阪花と緑の博覧会)が鶴見緑地(大阪市鶴見区)で開催された。花博自体はまずまずの成功だった。ところが、この時に作ったインフラである地下鉄・長堀鶴見緑地線は現在、赤字路線なのだ。博覧会に合わせて作った交通インフラが、その後の地下鉄経営を圧迫しているのである。これもつい28年前の出来事なのだ。

 2025年の万博開催に合わせて、今度は夢洲まで地下鉄を伸ばす計画がある。延伸された路線はその後どうなるのだろうか。

 夢洲の万博会場の隣は、IR、つまりカジノの有力な候補地になっている。推進派の思惑通りに進めば、万博開催時にカジノはすでに開業しているはずなので、「2025年はカジノと万博の相乗効果で景気拡大」ということになる。そのときは延伸された地下鉄も活用されるだろう。

 ただ繰り返しになるが、大事なのは持続的な経済成長だ。「大阪に来れば企業活動がしやすい」「科学技術が集積していて、研究開発拠点を置くのに最適」と感じてもらえる環境を作ることが大切だ。今の国や大阪府と大阪市には、その施策がまだまだ十分ではない。

 国や大阪府、大阪市に望みたいのは持続的な経済発展である。万博誘致に成功したのだから、万博が一時的な打ち上げ花火にならないようにしてもらいたい。その経済波及効果が万博の開催期間だけで終わるのではなく、長く持続するような取り組みをしてもらいたいのだ。

 2025年の大阪万博が一時的な打ち上げ花火に終わってしまうと、また経済破綻寸前の大阪に逆戻りしてしまう可能性が高い。大阪の人たちは、そんな悪夢は二度と見たくないのだ。

筆者:吉富 有治

JBpress

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