歴代最長の安倍政権は一体いつ終わるのか? あえて憲法改正に踏み込まない「政権維持術」——文藝春秋特選記事

12月1日(日)6時0分 文春オンライン


「文藝春秋」12月号の特選記事を公開します。(初公開 2019年11月24日)



 11月20日、安倍首相の通算在職日数が、桂太郎(2886日)を抜き、歴代1位となった。なぜ「歴代最長政権」となり得たのか。政治学者の御厨貴氏と片山杜秀氏は、次のように分析する。



新元号「令和」を解説する安倍首相 ©共同通信社


「前の民主党政権よりいい」「他に人がいないから」


御厨 安倍さんは、1年しか続かなかった第1次政権で失敗して、その後、民主党政権から政権を奪い返して首相に返り咲きました。これが安倍さんの強み。自民党議員にとって、安倍さんは今でも政権を奪還してくれた恩人なんです。


 世論調査を見ても、安倍政権の主要な支持理由は、「前の民主党政権よりいい」とか「他に人がいないから」。安倍さんを熱烈に支持していたり、安倍さんによってこの国が変わると期待しているわけではない。ただ、この「他よりマシ」というのは、なかなか渋い(笑)。


片山 むしろ長続きの理由になっているわけですね。


御厨 あまり熱烈ファンがつくと、一時は良くても覚めたら、あっという間に風向きも変わる。


本当に憲法改正まで踏み込む気はあるのか?


 御厨氏が「長きがゆえに尊からず」と言うように、その長さだけで政権評価はできない。安倍政権は、どんな実績を残し、今後、どんなレガシーを遺すのか。


御厨 5年後か10年後か、「安倍政権とは何か」という座談会をやったら、「目立った業績はないのに、なぜこんなに続いたのか」と、答えに窮するのではないか。むしろ“これといったこと=リスクを伴うこと”をやらないから、これだけ続いているという不思議さがある。


 その意味では、安倍政権の至上課題は本当に「憲法改正」なのか。口ではそう言っていても、本気で考えているようには思えない。最初はやるかやらないかも曖昧で、「96条の手続きだけ変えればいい」と言ってみたり、「9条に1項を加えればいい」と言ってみたり。



片山 真面目に考えていない雰囲気があります。


御厨 安倍さん自身が、「憲法改正一つに絞ったら、危ない、政権はもたない」と感じているのでしょう。しかも憲法改正は、最後に「国民投票」という高いハードルがある。


片山 そこでしくじったら、さすがに総辞職するしかありませんね。


御厨 憲法改正を国民投票にかけるには、この国の国家像のようなものも語らなければなりませんが、そうすると、「他よりマシ」で支持していた層は離れてしまうでしょう。


片山 「やります、やります」と言い続けながら、本気ではやらないままでいるのが、政権を維持するには一番いいのでしょうね。



「憲法改正の実現こそ安倍政権の悲願」という安倍政権のコアな支持層からの声もあるが、実際は、「政策の実現」よりも、「政権の維持」が自己目的化しているかのようだ。


片山 「生前退位」に消極的だったはずの安倍政権も、最終的には「令和改元」をうまく利用したわけですね。「厳しい寒さの後に咲く梅の花のように」などと首相みずから新元号の解説までして、この改元が安倍政権の継続に寄与してしまった面があります。だとすると、安倍政権は一体、いつ終わるのか。


御厨 それこそ天皇陛下ではないけれど、安倍さん自身が辞めると言わない限りは続くのでしょう。



これが“平成30年間の政治改革”の帰結だ


 では、なぜこんな事態に至ったのか。


御厨 振り返ってみると、今の安倍政権の“永続化”は、この平成30年間の「政治改革」とも大いに関係しています。


片山 「政治改革」が目指したのは、「二大政党制」と「官邸主導」ですね。平成初期の1994年に、中選挙区に代わって小選挙区制が導入されます。そこで有権者は、マニフェストや公約の達成度を見て「次はこちらにしよう」などと投票することが期待され、政権の方も、3、4年で政策を実現するために、従来の官主導の調整型政治ではなく、むしろ官邸主導で官僚にプランを降ろしていくことが期待されました。



御厨 まさにそうした改革が、橋本内閣の行革以来、平成期を通じて積み重ねられてきたわけですが、良くも悪くも、その帰結が今の安倍政権であるわけです。


片山 建前としては「二大政党による政権交代」を目指していたのに、民主党が悪かったのか、そもそも日本の政治風土と合わなかったのか、あるいは何か別のやり方をすべきだったのか、「二大政党」はいまや影も形もありません。残ったのは、強力な「官邸主導」の長期政権だけです。


「歴代最長政権」も、何も安倍さんや菅さんが一代で築いたものではなく、冷戦終結後の小沢さんや政治学者も含めたさまざまなアイデアを今の政権が独り占めした結果に見えてきます。


御厨 悲しいかな、これが“平成30年間の政治改革”の帰結です。しかも今のところ、他に代替物が見当たらない。今の政権は、もう何もしないで自動的に回っているようなものです。



「親アベ」でも「反アベ」でもない視点から「歴代最長政権」の実態を看破した両氏の対談「 安倍政権は『桂園時代』に似ている 」の全文は、「文藝春秋」12月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。



(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年12月号)

文春オンライン

「安倍」をもっと詳しく

「安倍」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ