散り方が大きく違う!? ツバキとサザンカの見分け方
2024年12月6日(金)5時10分 ウェザーニュース
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2024/11/28 05:10 ウェザーニュース
ツバキ(椿)とサザンカ(山茶花)は冬にかけて花を咲かせる植物の代表品種で、和歌や俳句など詩歌の題材としてもよく取り上げられています。
ところが、どちらも赤やピンク、白い花びらと濃い緑の葉という姿がよく似ているため、「違いがよくわからない」という人も少なくないようです。
この季節ならではのツバキとサザンカそれぞれの特徴と見分け方などについて、公益財団法人日本花の会研究員の小山徹(こやま・とおる)さんに教えて頂きました。
どちらもツバキ科ツバキ属の植物
ツバキとサザンカがよく似ているのは、どうしてなのでしょうか。
「ツバキとサザンカは、どちらも常緑広葉樹のツバキ科ツバキ属に属する植物だからです。学名はツバキ(ヤブツバキ)がCamellia japonica、サザンカがCamellia sasanquaといいます。
ツバキは学名に日本を表わす『ジャポニカ』が付いているように、日本に多く自生している植物ですが、台湾や朝鮮半島にも自生しています。一方のサザンカは、日本の固有種です」(小山さん)
まず、ツバキとサザンカの簡単な基本情報について、教えてください。
「ツバキの原産地は日本の本州・四国・九州・沖縄と、台湾や朝鮮半島南部、中国の山東省・浙江(せっこう)省です。草丈・樹高が5〜10mの常緑性高木で、耐寒性・耐暑性ともに強く、日陰でも育ちます。そのため、生け垣によく用いられています。
花色は赤、ピンク、白で、複色のものもあります。開花時期は11〜12月と2〜4月です。
サザンカの原産地は日本です。草丈・樹高が2〜6mの常緑性中高木で、耐寒性は普通ですが耐暑性は強く、こちらも日陰でも育ちますので生け垣に向いています。
花色は白、ピンク、赤と複色です。開花時期は園芸品種群のサザンカ系が10〜12月、カンツバキ系が11〜3月、ハルサザンカ系が12〜4月です」(小山さん)
カンツバキ(寒椿)と呼ばれる植物もサザンカの一種なのですか。
「日本原産の固有種であるツバキと、同じく固有種であるサザンカとの交雑により生じた園芸品種であるといわれています」(小山さん)
ツバキとサザンカの見分け方
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ツバキとサザンカの開花時期は冬場の12〜2月頃に重なっているようですが、ともに花が咲いている時に見分けるには、どんな点に注目すればいいのでしょうか。
「まずは花の形をよく見てください。ツバキの花は立体的で厚みがあるのに対し、サザンカの花は平面的で花びらが平たく薄くなっています。
花の中心部に『花糸(かし)』という黄色い部分がありますが、その形も異なります。ツバキは花糸同士が接着していて、茶の湯で使う茶筅(ちゃせん)のような形をしています。サザンカの花糸は一本一本が離れています。
ツバキの花には香りがほとんどありませんが、サザンカは強く香ります。
違いが最もはっきりわかるのは、花の散り方です。ツバキは花の頭ごとポトッと落ちますが、サザンカは花びらが一枚一枚パラパラと散ります。
開花期でもツバキの花はいくつも落ちているのが見られますので、わかりやすいサザンカとの見分け方といえるでしょう」(小山さん)
葉や枝、散り方などにも違いがあるのでしょうか。
「ツバキの葉の大きさは5〜12cmで、ワックスがかかったようにつやつやしています。サザンカの葉は3〜7cmとツバキに比べてやや小ぶりで、表面につやがありません。
葉の縁にできるのこぎりのようなぎざぎざの切れ込みを『鋸歯(きょし)』といいますが、ツバキには鋸歯がほとんどなく、サザンカにはしっかり入っているという違いがあります。
葉を太陽にかざすと『葉脈(ようみゃく)』と呼ばれる筋が、ツバキは白くサザンカは黒く見えます。
また、ツバキの若い枝にはうっすらと毛が生えていますが、サザンカに毛はありません。ツバキの実はつるつるしていますが、サザンカの実には毛があります」(小山さん)
スキンケア用品として珍重されていた!?
ツバキもサザンカも観賞用として愛でられる花ですが、実用にも使われているのでしょうか。
「ツバキから採れる椿油は髪や肌になじみやすいといわれ、毛髪香油やスキンケア用品として珍重されてきました。伊豆諸島(東京都)の大島と利島が主産地として知られています。
椿油は凝固点が低く凍りにくく腐敗しにくい、乾燥しない不乾性油で匂いがないといった特徴があることから、食用油としても使われます。
山茶花油も椿油と同様に、毛髪香油や軟膏基剤に用いられます。
ツバキは成長が遅いため木質が堅く、磨くと光沢が出ることから主に漆器、彫刻などの材料や、道具の柄など小物の材料として利用されます。
サザンカの新芽は鹿児島・宮崎県で古くから製茶して飲まれたり、香りがよいことから香袋の素材として使われたりしています」(小山さん)
そのほかにも“豆知識”があります。
「ツバキは平安時代、『高貴な花/聖なる花』として扱われていました。 その一方で江戸時代の武士の間では、花が首からぽとりと落ちる様を切腹の際の介錯(かいしゃく=首が斬り落とされること)に見立てたことから、『縁起が悪い花』とされていました。
ツバキの花言葉は『控えめな優しさ/控えめなすばらしさ/誇り』で、サザンカは『理想の恋/ひたむきな愛/ひたむきさ』です」(小山さん)
ぱっと見では似ているツバキとサザンカですが、いくつもの違いがあるようです。見分け方を参考に、庭先や公園などで見比べてみてはいかがでしょうか。