流行語大賞ハゲ落選問題 「しつこい東スポ」の本領を見た

12月8日(金)7時0分 文春オンライン

 先週はオヤジジャーナルが待ちに待った「新語・流行語大賞」の発表があった。私はかねてから勝手に解説しているのですが、流行語大賞とは「おじさんによるおじさんのためのプレゼン」だと思えばいい。おじさんに届いた言葉の発表会だ。


 だからズレているのも妙味。



2016年の流行語大賞の面々 ©杉山秀樹/文藝春秋


ネットでツッコまれるまでが流行語大賞


 昨年の大賞は「神ってる」で一昨年が「トリプルスリー」。どちらもおじさんが好きな野球用語だった。大賞が発表されるやネットを中心に「そんなの流行ったのか?」というツッコミが発生した。毎年恒例の風景。「家に帰るまでが遠足」ならぬ「ネットでツッコまれるまでが流行語大賞」なのである。


 実際にスポーツ紙では流行語大賞の扱いは大きい。発表翌日は別の話題の見出しでも使用する。昨年は「モデルの蛯原友里が髪の毛を20センチ以上切った」というイベント報告記事に、


「髪切ってる エビちゃん」(スポーツ報知 2016年12月2日)


 と見出しをつけた。「髪切ってる」と「神ってる」。新聞はあくまでもアツいのだ。


「このハゲーーッ!」まさかの落選を追う東スポ


 では今年はどうだったか。まずノミネート発表の時点でアツく問題提起をしていたのが東スポである。


「流行語大賞候補 どれもこれもちーがーうーだーろー!」(11月10日)


「『このハゲーーッ!』まさかの落選のワケ」をレポートしている。



豊田真由子氏 ©志水隆/文藝春秋


《昨年、『日本死ね』を選出して猛批判されたことは確実にトラウマになっている。『忖度』『共謀罪』など政治ワードを拾っているが、肝心の『モリ・カケ』『安倍一強』を外すなど与党にニラまれるのは嫌だという意識が透けて見える。》というITジャーナリストの井上トシユキ氏のコメントを紹介し、


《井上氏は「『このハゲーーッ!』をおおっぴらに大賞にして『ハゲは差別用語なんじゃないか』と論議を呼ぶのが嫌なんでしょう」と推察する。昨年の「日本死ね」での炎上はもうごめんというワケか。》


 ハゲ落選にこだわった東スポ。



さらにハゲ落選の「忖度」をやくみつるに直撃する東スポ


 12月1日に大賞「忖度&インスタ映え」が発表されたあともこだわる。


「『インスタ映え』とともに受賞も……流行語大賞に“忖度”はあったのか」(12月2日)


 選考委員を務めた漫画家やくみつる氏にインタビュー。



やくみつる氏 ©石川啓次/文藝春秋


《ガラケー派のやく氏でさえ「今年を代表する言葉と認識していた」と太鼓判を押した。》


 流行語大賞は「おじさんに届いた言葉の発表会」という私の見立ては間違っていなかったようだ。そして注目したいのはこの部分。


《また、やく氏は豊田真由子元衆院議員(43)の「このハゲーーッ!」についてネット上で流れる“噂”に言及。増毛した「元ハゲ」のやく氏が嫌ったため、手心を加えてノミネートから外されたという噂だ。》


 ハゲ落選に忖度はあったのかどうかを、やくみつる氏に言わせるという「しつこい東スポ」の本領発揮。やく氏は《「アホなネット住民が想像するようなアホな人間ではなく、私は深謀遠慮の人。おまえらより賢いよ」と完全否定。》


 真相はと言えば「このハゲーーーッ!」は豊田氏が書類送検されたので選考会で「まずい」となったという。


《『ちーがーうーだーろー!』は送検対象にギリギリ入ってない言葉だと解釈してノミネートされた》(やくみつる氏)


 東スポがこだわったハゲ落選問題はこうして解明された。どうでもいいと思う人もいるかもしれないが、自分が謎だと思う視点にこだわり見事に解明した。ジャーナリズムである。



昭恵夫人批判に「インスタ映え」をぶっこむゲンダイ


 続いては「日刊ゲンダイ」。流行語大賞をどう料理したか。


「いい気なもんだよ昭恵夫人。インスタ映えを狙う日々」 「深まる森友『忖度』疑惑」(12月2日)


 なんとゲンダイは「忖度」だけではなく「インスタ映え」も安倍昭恵氏の記事に持ってきた!



左から2人目が安倍昭恵氏 ©雑誌協会代表


《今年の流行語大賞に「忖度」が選ばれるほど、国民の疑念はますます深まっているのに、アッキー本人にその自覚は感じられない。》


《11月のFB(※Facebook)の投稿を見ても、連日のようにパーティーに出席し、時間が余れば趣味の土いじりや山登りの日々。同じく流行語大賞の「インスタ映え」しそうな写真ばかり載せている。》


 流行語大賞ネタもぶっこんできたゲンダイ、あわせ技に「いいね!」。


 いや、確かに「森友学園疑惑」では「忖度」が注目されたが、安倍昭恵氏が名誉校長ということで耳目を集めたわけだからあれは究極の「インスタ映え」とも言える。


 森友問題は今年の流行語大賞「忖度」「インスタ映え」のどちらにも絡んでいた。新聞を読んだらわかったのである。



インスタ映えのみなさん ©時事通信社



(プチ鹿島)

文春オンライン

この記事が気に入ったらいいね!しよう

流行語大賞をもっと詳しく

BIGLOBE
トップへ