実現間近の電気飛行機、空飛ぶ車もSFの世界脱す

12月14日(金)6時12分 JBpress

独ジーメンスの電動システムを用い、時速300キロ以上のスピードを出す電動飛行機「Extra 330LE」(出所:エクストラ社ウエブサイト)

写真を拡大

 今はやりの自動車のEV化は、これまで100年以上内燃機関を動力源にしてきた自動車の一大転換点として関心の的となっている。

 一方、「軽さ」が絶対条件となる航空機では、電池・モーターの重量や電池の化石燃料に対するエネルギー密度の低さから、実現性のハードルは高いと思われてきた。

 筆者も電動では重量の壁を超えられないのではないかと思っていた。しかし、近年、世界各国で電動航空機の研究が進んでいる。

 日本でも電動航空機の試験機を飛ばし始めたし、欧州のエアバスは電動旅客機の実験機を開発するそうだ。

 実は、電動航空機は遠い将来のものではない。近未来に実現するものである。


電動航空機は2種類

 現在考えられている電動航空機は、小型機を想定した純電動航空機と、大型機を想定したハイブリッド機である。

 純電動航空機は、小型機のガソリンエンジンとガソリンを、モーターと電池に置き換えたものである。

 サイズは小型機の中の小型機と呼べる1人乗りのもの。電動に置き換わるガソリンエンジンは、街中の乗用車を走らせているものとさほど変わらない。

 ハイブリッド機は、機内に積んだガスタービンエンジンで発電し、その電気を用いてモーターにつないだファンやプロペラを回して飛行するもの。旅客機のような規模の大きい航空機を想定している。こちらは次回紹介する。


純電動小型航空機は実現目前

 純電動航空機は電気自動車と同じく、バッテリーから供給する電力でモーターを回し、モーターがプロペラを回転させ、飛行する。

 すでに小型の純電動航空機は、実現目前である。

 EVが実現していることから分かるとおり、自動車を動かす程度の出力のモーターは、すでに十分に実用的なものが普及価格帯に入っており、技術的に大きなハードルはない。

 また、電池も自動車を動かす程度のパワーは供給できる。

 JAXAが飛行させた電動飛行機のモーターの出力は60キロワットであるが、例えば電気自動車の「日産リーフ」は、モーターの最大出力は110キロワットである。

 ここで、事情を知る人であれば、航空機に搭載できる重量の電池がどれだけの時間持つのかが気になるであろう。

 EVもかつては少ない電池容量から航続距離が問題だったが、航空機では自動車より軽さが求められるため、搭載できる電池の容量にも自ずと制限が出てくる。

 前述のJAXAの試験機は2015年に17分間飛行した。

 ドイツのジーメンスのシステムを搭載し、時速342.86キロの速度記録を持つ「Extra 330LE」も20分間の飛行を想定し設計されている。

 これではいささか実用化には短すぎるが、現状、1時間を超えて飛行できる電動飛行機も現れているようだ。

 それでもまだ短く感じるが、現状、純電動飛行機が想定されている1人乗りの小型機では、その程度の飛行ができれば十分だそうだ。

 純電動飛行機のメリットは大きい。一つにはエネルギー費用が挙げられる。

 EVの電気代がガソリン車のガソリン代よりはるかに安いのは知られているが、同じ理屈で電動航空機の燃料代はガソリンエンジンの航空機よりはるかに安い。

 実際の燃料代・電気代を比べてみると、電気自動車はガソリン車の3〜4倍有利である。

 ガソリンは税金が高く、ガソリン代の半分近くが税金である。しかし、電気自動車はガソリンにかかる税金がゼロだったとしてもまだ優位である。

 現在のピストンエンジンを積む航空機は、価格が自動車用の2倍以上になることもあるアブガスと呼ばれる航空用ガソリンを用いる。電気飛行機の動力費の優位性は、自動車の場合よりもさらに大きい。

 誘導モーターはエンジンよりメンテナンス性が良く、整備の手間も省ける。高度を下げる際は、プロペラを風車にして発電することで高度差をエネルギーに変換できる。

 電車やEVが、減速の際にスピードを電力に変換できる回生ブレーキを備えているのと同じ理屈である。

 かつて電動は非常に大がかりなものであった。昔の鉄道車両は制御のために大きな抵抗器を積み、大型で定期的にブラシの交換が必要な直流モーターを積んでいた。

 それが、パワー半導体の進化で小型のインバーターを使って小型の交流モーターを駆動できるようになった。

 パワー半導体と交流モーターの組み合わせで電力の回生が簡単になり、鉄道も大幅な省エネも実現した。

 そして、インバーターで交流モーターを回す仕組みは自動車に搭載されるようになり、ハイブリッド車やEVができた。

 ハイブリッド車が現れた20年ほど前も、電動航空機などあり得ないと考えられていた。航空機は軽量でなければならないが、電池があまりに重すぎた。

 ガソリンとリチウムイオン2次電池のエネルギー密度の差は現在でも約100倍。

 これは、同じ距離を飛行する場合、ガソリンで飛ぶ場合の燃料の重量の100倍の重さの電池を積む必要があることを意味する。当時の差はそれよりはるかに大きかった。

 初期のハイブリッド車やEVは電池の寿命が短かったり、すぐ電気がなくなったりしたが、この20年ほどで大幅に進化した。

 電池はエネルギー密度を上げ、軽くなっていった。そこで、電動航空機が現実味を帯びてきた。


空飛ぶクルマは電動航空機の延長

 現在、ドローンが急速に普及しているが、人が乗ることができるドローン、いわゆる「空飛ぶクルマ」の研究も始まっている。日本でもトヨタ自動車や経済産業省が参加する官民協議会ができたりしている。

 この空飛ぶクルマは電動が想定されている。要求される俊敏な動きは応答性のよいモーターならではだし、経費の面でも電気が優位である。

 空飛ぶクルマは必ずしもこれまで紹介してきたような固定翼機ではない。しかし、空を飛ぶことは同じであり、飛ぶためには軽く強力な動力が必要であることも同じである。

 電動航空機と同じく、空飛ぶクルマは軽いモーターと電池の開発が必要である。言い換えれば、小型純電動航空機の開発の延長線上に空飛ぶクルマの実現がある。

 空飛ぶクルマは4人程度が乗ることを前提としているものがあり、前述のExtra 330LEと比べても大型である。

 こうしたものを飛ばすための、実用的な飛行時間と飛行するものに搭載できる重量を両立させる電池はまだ開発されていない。

 また、空飛ぶクルマが技術的に実現できたとして、東京のような場所で無秩序に飛び回られると、どのようなことになるかは明らかである。

 技術だけでなく制度面の整備も必要である。電気自動車と同様、充電のためのインフラも必要であろう。

 しかし、これまでの急速なモーター、電池、パワーエレクトロニクスの発達を見るに、非現実的と一蹴できるものではない段階にきているように見える。

筆者:渡邊 光太郎

JBpress

「世界」をもっと詳しく

「世界」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ