冬に雪が多く降る理由は? 冬型の気圧配置って何? 気象予報士が徹底解説

2021年12月21日(火)18時4分 tenki.jp

冬の天気について3000人にアンケートを実施しました。各地域の冬の天候の特徴やその仕組みを詳しく解説します。この冬の見通しについてもラニーニャ現象の仕組みと共にお伝えします。

あなたの思う「冬の空」 北・東日本ほど顕著な差が見られる結果に

皆さんの地域の「冬の空」とはどのような空でしょうか。実は、日本列島の冬の空は地域によって大きな違いがあります。
今回、Yahoo!ニュースの協力を得て、全国にお住まいの皆さまに冬の天気に関するアンケートを実施しました。その回答をもとに、日本気象協会の気象予報士が地域ごとの冬の天気や雪が降る仕組みについて解説します。
はじめに、各地域の冬の空のイメージを確認するために「あなたのお住まいの地域で、冬の空といえばどんなイメージですか?(単一回答)」と聞きました。
その結果、北日本と東日本を中心に、日本海側の地域では「雪が降っている」、太平洋側の地域では「快晴または晴れ」とそれぞれ答える方が多い傾向がありました。
一方で、西日本では「快晴または晴れ」「曇り空」と答えた方が多く、北日本や東日本のように太平洋側の地域と日本海側の地域での明瞭な差が見られませんでした。
さらに同じ地域の中で見てみると、北日本や東日本では、1つの空のイメージに回答が集まる傾向があり、その地域の冬の空のイメージについて同じ認識を持つ方が多かったのに対し、西日本では「快晴または晴れ」と「曇り空」がほぼ同数である地域が多いなど、同じ地域に住んでいても冬の空のイメージについてばらつきがありました。

冬の空の違い 「冬型の気圧配置」と「脊梁山脈」が影響

冬の天気予報で「冬型の気圧配置」「西高東低の気圧配置」などの言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
冬になると、大陸からの冷たい空気が高気圧として日本列島へ張り出し、日本列島の上空では西側に高気圧、東側に低気圧が天気図上で確認できるようになります。これがいわゆる「冬型の気圧配置」または「西高東低の気圧配置」です。この気圧配置になると、日本海には筋状の雲が現れ、日本海側の地域に雪を降らせます。
また、日本列島には「脊梁(せきりょう)山脈」と言われる列島の中心を縦断する山々が多数伸びています。日本海で発生した雪雲は、これらの山にぶつかって越えられないため、太平洋側の地域では晴れる傾向になります。
脊梁山脈の中でも、東北地方の奥羽山脈、関東地方と北陸地方の間にある越後山脈、中部地方の飛騨山脈などは標高の高い山脈としてしられ、これらは北・東日本に集中しています。これが、北・東日本では太平洋側と日本海側で冬の空のイメージが明瞭分かれた原因となります。
一方で、西日本にも山脈や山地はあるものの、北・東日本の山脈ほど標高が高くなく点在しているため、寒気や季節風が強まった時は、太平洋側にも雪雲が流れ込むことがあります。これが、西日本で冬の空のイメージが、北・東日本のように太平洋側と日本海側で明瞭に分かれなかった理由だと考えられます。

日本海側でたくさんの雪が降る仕組み 詳しく解説

日本海側の地域で雪が降る仕組みをもう少し詳しく解説していきます。
大陸から冷たい季節風が日本列島に向かって吹くと、その空気よりも比較的温度が高い日本海からたくさんの水蒸気が発生し、これが雪雲になります。この雪雲は季節風に乗って日本列島まで到達すると、脊梁山脈にぶつかって上昇し、さらに大きな雪雲となり、これが日本海側の地域に大量に雪を降らせるのです。
この雪雲は脊梁山脈を越えられず太平洋側の地域には乾いた空気が流れ、晴れをもたらします。

雪に慣れている地域とそうでない地域 積雪何cmで通常の生活ができる?

雪が多く降る地域とそうでない地域があることがわかったところで、各地域の積雪に対する認識を確認するために「夜から朝にかけて雪が降り続き、新たな積雪が何cmになると、通常の冬の生活ができなくなると思いますか?」という質問をしました。
代表地点として、道央(北海道)、新潟、東京、大阪、福岡、沖縄の回答をそれぞれ見ていきます。
雪が多く降る道央や新潟では30cmや50cmと回答した方が多かったのに対し、普段雪の降らない東京、大阪、福岡、沖縄では5cmや10cmと回答する方が多い結果となりました。やはり、普段から雪に慣れているとそうでないで大きな差があるようです。
これらの気候の差は、気象警報の発表基準にも影響しています。
例えば、東京都千代田区では12時間降雪の深さ10cmが大雪警報の発表基準であるのに対し、豪雪地帯で知られる新潟県湯沢町では12時間降雪の深さ60cmが大雪警報の発表基準となっています。普段雪が降る地域とそうでない地域では、雪への耐性も変わってくるため、このように発表基準が異なっているのです。

今年の冬はどうなる? ラニーニャの冬に

最後に、今年の冬の傾向について確認していきましょう。
今年の冬は、ラニーニャ現象が発生する可能性が高いと予想されています。ラニーニャ現象が発生すると、日本付近では気温が低くなる傾向があります。
ラニーニャ現象とは、南米ペルー沖の赤道付近で海面水温が平年より低い状態が続く現象で、日本など遠く離れた地域にも影響を及ぼします。発生すると、太平洋の赤道付近で平常時よりも強い東からの風が吹き、インドネシア近海に温かい海水が蓄積して積乱雲の活動が盛んになります。その影響で、偏西風が南に蛇行して寒気が日本列島に流れ込みやすくなるのです。

3か月予報 厳しい寒さと大雪に注意

11月24日に気象庁から発表された3か月予報によると、この冬は西日本を中心に強い寒気が入りやすいのが特徴で、西日本は平年よりも寒さが厳しい冬になりそうです。東日本も、気温は平年並みか平年より低めの傾向で、冬らしい寒さになるでしょう。
予想降雪量は、西日本の日本海側で平年より多いでしょう。12月、1月と西日本に強い寒気が入りやすいことから、山陰など西日本の日本海側や北陸で雪雲が例年より発達し、ドカ雪による車の立ち往生も懸念されそうです。
今年の冬は、雪や寒さが例年に比べて厳しくなる地域がありそうです。雪や寒さへの備えをしっかりして、この冬を乗り越えていきましょう。私たち気象予報士も、気象・防災情報などの情報を発信し、皆さまの生活を少しでも支えていけるよう努力してまいります。
この記事は日本気象協会とYahoo!ニュースによる共同企画記事です。
Yahoo!ニュースが実施したアンケート調査を活用しています。
アンケートは11月22日〜11月25日に、全国のYahoo!クラウドソーシングユーザーを対象に行い、3000人(北海道在住の方1000人、北海道以外に在住の方2000人)から有効回答を得ました。

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