『いだてん』宮藤官九郎と北島康介が語る「なぜオリンピックはこんなに楽しいのか?」

12月28日(土)11時0分 文春オンライン

 日本人が初めてオリンピックに参加した年をご存知だろうか。


 答えは、1912(明治45)年。スウェーデンで開催されたストックホルム大会が初参加だった。陸上短距離で三島弥彦、マラソンで金栗四三の2名が出場したが、世界の圧倒的な実力を前に両者とも散々な結果で終わっている。


 そこから様々な大会への参加を経て、1964年に東京大会が実現。2020年には再び東京にオリンピックが戻ってくる。100年以上にわたり、日本人にとってのオリンピックはどのような存在であり続けたのか——。


いだてん』で日本水泳界の歴史を学び直した


「文藝春秋」1月号では、アテネ・北京五輪金メダリストの北島康介氏(37)と、日本人とオリンピックの歴史を描いたNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(現在は放送終了)の脚本家・宮藤官九郎氏(49)の対談をおこなった。



宮藤官九郎さん  ©文藝春秋


 ちなみに、北島氏は『いだてん』でドラマデビュー。「戦後日本のヒーロー」と言われた水泳選手・古橋廣之進を演じた。


『いだてん』で日本水泳界の歴史を学び直したという北島氏は、先人達の努力が今の水泳界の土台を築いたことを感じたという。2人の話題は、メダル獲得へのこだわりに……。


「0.1秒」に4年間を懸ける


宮藤 勝ちへのこだわりで言うと、前畑秀子さん(1914〜1995年)が1932年のロサンゼルスで銀メダルを取った時にトップと0.1秒差で、当時の東京市長から「なぜ金メダルじゃないんだ。たった10分の1秒の差じゃないか」と責められるんですよね。あの言葉って、どういう意図で言ったのかなと思うんですが……。


北島 僕は、逆にその言葉に水泳の魅力が詰まっていると思っています。0.1秒という数字にこそ、4年間積み上げてきたものが発揮されるんです。前畑さんはその0.1秒が悔しくて、もう4年頑張ってベルリンで金を獲得する。その時の前畑さんの気持ちや行動が、僕にはすごくよく理解できます。



 僕もシドニーであとちょっとのところで4番になって。日本に帰ってきた時に、メダリストとして扱われるのとそれ以外として扱われるのとの差に、悔しさを感じました。それが「もっと強くなりたい」と思った大きなきっかけでした。



オリンピックは「夏フェス」だ!


 脚本執筆前は、オリンピックの魅力がよく理解できなかったと明かした宮藤氏。だが、取材を進めていくうちにその楽しさに気づいたという。


宮藤 田畑(政治)さんが「ロサンゼルスの選手村はとにかく楽しかった」と書き残していて。黒人も白人も有色人種もごっちゃになって、どこの国かも何の選手かも分からない人達が談笑していたと。それを読んだ時に、「お祭りじゃん」と思ったんですよ。僕がよく参加する夏フェスのイメージが出てきて、すごく理解できたんです。


 それを受け、北島氏は自身の“オリンピック観”をこう語る。



北島 僕にとっては小学校の運動会をどんどん大きくしていったのが、オリンピックでした。運動会の会場で感じるワクワク感とドキドキ感、お父さんやお母さんに見に来てもらって楽しませたいという気持ち——そういうものの延長線上で、僕はずっと水泳を続けていたので。自分が強くなることで自分自身も喜びたいし、周りも楽しませたいという思いが根本にあるんです。


「お祭り精神」を思い出そう


『いだてん』第37話では、オリンピックの東京招致に尽力した嘉納治五郎(役所広司)が、興奮気味にこう語っていた。


「これから一番面白いことをやるんだ、東京で!」


「皆が驚く、皆が面白い、そんなオリンピックを見事にやってのける。これこそ一番!」


 宮藤氏の言葉は、嘉納治五郎の台詞と重なっている。



宮藤 当時のシンプルな「お祭り精神」を、皆が少しでも思い出せたらと思います。だって、これまで以上に多くの外国人が来日するんですよ。「東京、楽しかったな」って帰ってほしいじゃないですか。オリンピックなんか……って捻くれる気持ちも分からなくはないけど、東京でやるって決まったんだから、楽しんだほうがいいじゃん、って。そういう思いが根底にあって『いだてん』を書いていたので、皆で楽しさを共有できれば嬉しいです。


 ついに2020年——。東京オリンピックの年が幕を開ける。



 北島氏と宮藤氏の対談「 オリンピックはでっかい運動会だ 」全文は、「文藝春秋」1月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。



(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年1月号)

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