正規雇用は消滅する? シェアリングエコノミーが変える「未来の働き方」

1月4日(木)12時30分 Forbes JAPAN

米国を中心に急速に広がるエアービーアンドビーやウーバーなどのシェアリングエコノミー。ユーザーと提供者をつなぐプラットフォームが特徴で、日本でも2018年6月に民泊の一部解禁が決まった。

「シェアリングエコノミー」の著者で、ニューヨーク大学スターン・スクールのアルン・スンドララジャン教授はシェアリングエコノミーや他のイノベーションによって将来の働き方が大きく変わると予想する。同教授にシェアリングエコンミーと働き方の未来について伺った。(前回の記事はこちら

ー日本では働き方改革を推し進めようとしています。シェアリングエコノミーの普及で日本の働き方はどのように変わっていくでしょうか。

シェアリングエコノミーが一般的になると、在宅勤務などのリモートワークが自然に受け入れられるようになるでしょう。特にオンデマンドの労働を提供するプラットフォームにとって、リモートワークは根本となる働き方です。フリーランスのプラットフォームが普及すれば、企業も変化するでしょう。

例えばニューヨークタイムズでは、プロジェクト・マネジャーが正規・非正規・フリーランスに関係なく様々な人をシームレスに使ってプロジェクトができる新しいシステムを始めました。この日には3人のカメラマン、2人の動画撮影者、3人のライターを使い、その数日後は3人の編集者と動画編集者を使う、といった具合です。

システムがワークフローを出し、正規スタッフとフリーランスを使った場合のどちらの費用が少なくなるか弾き出してくれます。このシステムによって、複雑な組織でも簡単にオンデマンドの労働者を使えるようになりました。

多くの企業がフリーランスやオンデマンドの労働者を使うようになっています。同じ時に同じ場所で仕事をするシステムはリモートワークには馴染みません。しかしシステムを変えて、シェアリングエコノミーを導入すれば、リモートワークも定着すると思います。

ーフリーランスの普及に関して、日本では会社の副職禁止規定の問題もあります。

会社に規定を変えろというのは困難です。一つの解決策は、政府が会社の副職禁止規定を禁止することです。でも時間はかかります。

将来的には、ほとんどの仕事がフリーランスのような雇用関係のないものになると思います。政府はセーフティーネットの提供について検討を始めるべきです。社会保険、年金、収入の安定など。日本はそういったセーフティーネットの多くを企業が負担しているため、今後大きな課題になる可能性が高いです。

また、企業に対する人々の信頼が高いことも移行に時間がかかる理由として挙げられます。政府が言うことより企業が言う方が信用されている。米国では半々ぐらい、ヨーロッパでは政府の方が信用度は高いです。これらを考慮すると、日本のセーフティネットの制度改革は複雑で長期間かかるでしょう。

しかし時間がかかるのは日本だけではありません。解決法を編み出すのに10年ほど時間はあります。議会は今から検討し始めないといけません。人々の幸せは、政府が入念にセーフティーネットの構築を準備できるかにかかっています。

ーシェアリングエコノミーでは、ウーバーなどのプラットフォームを運営する会社が多額の手数料利益を得る一方で、運転手などのサービス提供者は収入が少なく不安定になる可能性があるとの懸念があります。このような懸念をどう考えますか?

そういった懸念は当然ですが、シェアリングエコノミーを認めないことは解決策になりません。解決策は、新規ビジネスの創生につながるプラットフォームを政府が推進することです。単なるオンデマンドの労働提供者ではなく、事業主としてビジネスができるプラットフォームが重要です。

例えばエアービーアンドビーとウーバーを比較してみると、ウーバーの運転手はある程度独立しているものの、事業主とは呼び難い。顧客との関係性が薄く、顧客にとって運転手は誰でもいい。プラットフォームが経営判断権を握り、提供者の権限が少ない。全てがプラットフォームによってコントロールされています。

対するエアービーアンドビーは多くの経営判断を提供者に委ねています。信用とブランドをエアービーアンドビーがある程度提供していますが、サービス提供者は事業主として値段を決め、計画を立て、競争相手を見ながら自分の立ち位置を決める。顧客サービスもやる。ユーザーの高評価を集めてブランド力を高め、さらにビジネスを拡大する。プラットフォームによって生まれた事業者と言えるでしょう。これは不平等の是正につながるし、事業主の利益になっています。

政府は、こういったプラットフォームを促進し、提供者に経営判断権がなく事業主になれないサービスのプラットフォームには罰則を設けるべきでしょう。どのようなプラットフォームを推進するのかは、それぞれの社会が選べます。正しいプラットフォームを推進できれば、長期的に見て労働者のためになります。

ー将来の働き方はどのように変わるのでしょうか。

プラットフォーム・モデルと人工知能によるオートメーション・モデル。この二つのモデルによって、今後20年で仕事のあり方は大きく変わるでしょう。ある仕事は人間がやる仕事ではなくなり、ある仕事は人間がやるけれども、オンデマンドでできる仕事になる。

解決法として、所得を均等にするというアイデアが多く提案されています。オートメーションの技術を使う人に対して課税を増やし、雇用機会に恵まれない人々に再分配する。これは所得の再分配の形と言えるでしょう。一番極端な形のユニバーサル・ベーシックインカムでは、全員に毎月同じ金額を支払います。

個人的には、「所得」ではなく「資本」の再分配が好ましいと考えています。

プラットフォーム・モデルでは、プラットフォームが資本を持ちます。ここで言う資本とは、ビジネスを創出し、経営判断を行い、時間や資産や労働力をサービスに換える知識を持っていることです。これらは従来、企業が握っていて、人々は給料を得る被雇用者でした。

正しい解決策は、ある資本は企業が持ち、ある資本は提供者が持つ、という形だと思います。歴史的に不平等が生まれるのは、少数の人が全ての資本を支配する時です。資本を再分配すれば不平等は減り、より安定した社会につながります。

政府がフォーカスすべき政策は、資本の集中を避け、提供者に資本が分配されるようにプラットフォームを促すことです。だから資本もクラウドによって分散される、クラウドベースの資本主義が重要になります。

資本主義によって資本の集中を避けることができるかどうかは、そのデザインにかかっています。全員が小規模な事業主でお互い競争していればいいですが、そこに資本を独り占めする巨大プラットフォームができたなら、政府が介入して規制するのが役目です。

米国議会の委員会でヒアリングの機会がありましたが、25人もの議員から質問を受け、意識の高まりを感じました。日本でも関心を持っている国会議員はいます。私は将来を楽観的に見ています。

アルン・スンドララジャン◎ニューヨーク大学経営大学院(レナード・N・スターン・スクール)情報科学・オペレーション科学・経営科学科教授。シェアリングエコノミーの第一人者として、積極的に著述やメディア活動をしている。

Forbes JAPAN

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