2019年に日本で一番売れた軽自動車「N-BOX」は何がすごいのか

1月9日(木)16時30分 文春オンライン

 いま、日本で一番売れているクルマといえばホンダの軽自動車「N-BOX」だ。2018年の販売台数は24万1870台、2019年は25万3500台。月平均で約2万台売れていることになる。消費税増税後の落ち込みも思いのほか小さく、2018年の実績を上回る販売台数となった。


もはや現代の国民車



2019年の軽自動車販売台数ランキングで1位に輝いたホンダ「N-BOX」 ©AFLO


 N-BOXは、軽自動車の車型の中では「スーパーハイトワゴン」と称されるカテゴリーに属する。全高は1750mm前後と成人男性の平均より高く、後席ドアはスライド式、前席左右間はウォークスルー可能といった特徴が共通で、スズキなら「スペーシア」、ダイハツなら「タント」が同じ属性となる。


 というよりも、そもそもこのカテゴリーは2003年にタントが先鞭をつけたもので、以来N-BOXやスペーシアなどのフォロアーを伴いつつ、着々と大衆に受け入れられてきた。ちなみに2019年の軽自動車販売台数ランキングではタントが2位、スペーシアが3位。もはや現代の国民車と位置づけても差し支えはないだろう。



普通車よりも高くても……


 スーパーハイトワゴンは軽自動車でありながら、価格帯は130万円前後からと、普通車とモロに被っている。限りなく同等な加飾、快適装備を持つグレード同士で比較すると、例えばタントは同門のリッターカーよりも高いくらいだ。いやはや近頃の軽自動車はそんなに高いのか……といえばさにあらず。傍らでは同等装備で100万円を切るモデルもきちんと用意されている。おまけにそちらの方が軽いぶん歴然と燃費がよく、タイヤやブレーキなど消耗品のことを考えると維持費も安い。


 つまり国民車と位置づけられるほどの人気の理由は値札ではない。軽自動車や小型車の価格競争はライバルより3万円高ければ致命傷といわれるほど熾烈だが、一方でユーザーは30万円高いお金を払ってスーパーハイトワゴンを買っているわけだ。



こんな広さはどんなに高級なセダンでも絶対に得られない


 それほどの余分を払ってまで期待される機能は、大半が背高ボディからなる爆発的な室内容量に起因している。後ろのスライドドアを引き戸よろしくガラガラと開けて後席に乗り込むと、膝や腰を大きく屈めずともスルッと車内に収まる乗りやすさ、そして後席に座ってみれば圧倒的な足元空間に心を掴まれる。こんな広さはどんなに高級なセダンでも絶対に得られない。なんなら住めるぞこりゃあと思いきや、グレードによっては件の引き戸が電動で開閉したりもするし、施錠も鍵を出す必要がない。もはや家より気が利いている。



 車庫にあって下手な物置より莫大な空間は、もちろん様々なニーズを受け止める。とりわけユーザーが利便を実感するのが、26〜27インチタイヤの自転車をまるっと1台、立てたまま積めるというもの。27インチといえば中高生や大人が乗るシティサイクルの車格だ。


 たとえば朝、通勤や通学で自転車で駅に向かったものの帰りは雨……となると、バス等の交通手段もないエリアなら在宅の母親が駅に迎えに行くというのはよくある話だ。と、この際、もしクルマに自転車が積めれば、母親は翌朝の送りの手間が省けることになる。


家族生活の些細な欲求にエンジニアが真正面から応え続けた


 あるいは塾通いに自転車を使う子供を、夜遅い時にはクルマで迎えに行きたいということもあるだろう。スーパーハイトワゴンは重い自転車を女性の力でも楽に出し入れできる大きな開口部と低い床面を採用し、この要望を叶えた。前述3車種の車両紹介HPをみると、揃いも揃って自転車が立て積みされている。



 他にも子供とレジャーに出掛けた際に立ったまま着替えさせたいとか、チャイルドシートに座らせやすいとか、家族生活の些細な欲求にエンジニアが真正面から応え続けた結果、スーパーハイトワゴンは完全機能形状として今のプロポーションに落ち着いたのだと思う。


 というわけで既にライバル間で激しく切磋琢磨されてきたこともあり、前述3車種の機能面について、特筆するような差異はない。そんな中、N-BOXが販売において大きく他を引き離す理由はどこにあるのか。



一気にシンプル路線に向かっているホンダ車のデザイン


 身も蓋もない理由として販売店舗数が他2社よりも多いということもまず挙げておくべきだろうが、クルマ屋的な視点でみれば、N-BOXは他2車種に比べて各項目が綺麗に少しずつ抜きん出ている。使い勝手面ではホンダ独自のセンタータンクレイアウトもあって後席側の床面がきっちりフラットにできているとか、内装の質感が普通車もかくやの仕上がりとか、エンジンや路面からのノイズがよく整理されているとか、乗り心地も雑なところが少なく高重心の割には不安感がないとか、そういった細かな加点要素の積み重ねで商品の魅力を高めている。



 と、それはすなわち、「高速を使った長距離ドライブもしないから普通車はもういらない」という熟年層からも受け入れられるクオリティでもあるわけだ。自分の価値観がしっかりした大人にとって、ファンシーやトイジーなクルマというのは我慢ならないものだろうが、この点、N-BOXは中性的ですっきりとしている。世代や性別に偏らないという点も、N-BOXの強さの秘密だろう。近年ホンダ車のデザインは意味が伝わらない複雑怪奇なところから、踵を返して一気にシンプル路線に向かっている。これもまた、N-BOXが世に広く認められた功績かもしれない。


日本人が今クルマに求めるもの


 とはいえ、N-BOXの圧勝状態はいつまでも続くかは不透明だ。スペーシアはマイルドハイブリッドを搭載、実燃費でライバルをリードしている。タントは昨年力の入ったフルモデルチェンジで走行性能も使い勝手も一気にジャンプアップし、子供からお年寄りまであらゆる移動のニーズに応えるライフパートナーと銘打ってコンセプトの社会性を高めてきた。そして今年は日産&三菱がこのカテゴリーのモデルをフルモデルチェンジさせる。



 ともあれ言えるのは、スーパーハイトワゴンの切磋琢磨による差別化はそのまま、日本人が今クルマに求めるものを最も直接的に反映した成果だということだろう。



(渡辺 敏史)

文春オンライン

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