相場展望1月13日号・「米イラン対立は『攻撃』ではなく、『口撃』の範囲で市場への影響は限定的」だが注意

1月14日(火)13時20分 財経新聞

・「NYダウのPERは21倍台と異常に高く、金融相場による仕手相場化を懸念」
・台湾総統選挙の結果を受けて、その跳ね返りが中国本土に向かう影響を懸念

■I.米国株式市場
●1.米イラン対立で原油相場が急騰した場合はオイル・リスクが発生する可能性
 1)金融緩和で潤う投機マネーが原油価格を更に押し上げる可能性が高まっている。高騰した場合は世界景気にマイナスの影響を与えることから、楽観的な景気見通しに水を差す可能性が高い。

 2)しかし、米国市場で(1)株価下落や(2)金利が大幅上昇はみられず、全面的なリスクオフには至っていない。このため米イラン対立の影響は、限定的となる可能性が高そうだ。

●2.イランによるイラクの米軍駐留基地へのミサイル攻撃の被害は人的被害なく軽微の模様だが、注意が必要
 1)米軍による対イラン軍事行動を制限する法案が、米下院が可決し、トランンプ政権の紛争拡大を制約。

 2)イラン政府はミサイル反撃後に沈静化を図ったが、イラン司令官爆殺時に同時殺害されたイラク民兵組織指導者サイドによる偶発的リスクは依然残ったままなので注意が必要。

●3.米大統領選の株価経験則では2020年は上昇だが?
 1)米大統領選挙の前年株価が20%超上昇した場合の翌年・選挙年の平均上昇率は+11%となっている。なお、前年に当たる2019年の上昇率は22.3%。

 2)ただし、2020年の企業業績の見通し次第では外れる可能性が出てくる。

●4.楽観ムードに陰り
 1)景気見通しに対する過剰な楽観ムードに陰りが出始めたことから、1月7日の米指標(ISM非製造業指数)に注目した。ISM非製造業景況指数は12月55.0(予想54.5 11月53.9)と予想を上回り改善した。ただし、2019年全体では平均55.5と2018年平均58.9を下回った。

 2)非製造業は堅調維持ながら、製造業の12月は50割れの47.2と冴えず片肺飛行続く。

●5.世界銀行のGDP予測は下方修正(2019年6月時点比)
 1)世界GDP成長 2020年         2019年
    世界   +2.5%増(▲0.2%減)  +2.4%(▲0.2%減)
    先進国  +1.4%増(▲0.1%減)  +1.6%(▲0.1%減)
    日本   +1.1%増(+0.3%増)  +0.7%(  —   )

 2)日米欧は米中の関税措置の悪影響で、製造業が引き続き弱い見通し。よって、2020年度は改善が見込まれるが、見通しは総じて弱い。

●6.決算発表待ち(2019年1〜12月決算)
 1)2019年決算と2020年見通しがアナリスト予想との差異が生じた場合によっては波乱もあり得る。

続いて、「中国市場」の分析へ)■II.中国株式市場
●1.米中の通商合意「第2段階」は今年11月の米大統領選挙後まで見送りの公算
 1)第1段階合意の署名のため劉鶴副首相は1月13〜15日に訪米と中国商務省が表明。昨年12月31日にトランプ大統領がツイッターで、1月15日にホワイトハウスで署名と表明している。

 2)「第2段階」について、9日にトランプ氏が記者団に対し、「大統領選挙後まで妥結を見送る方が、はるかに良い取引に持ち込めると思うから」と語った。

 3)上記の通りなら、米中通商協議を巡る「関税問題での株価変動要因は11月まで先送り」の可能性がある。

●2.中国経済に悪影響をもたらす「アフリカ豚コレラ(ASF)」
 1)中国の主食肉である豚肉は、世界の豚肉消費量の5割を占めているが、ASFで中国国内の豚の飼育頭数は▲30%以上減らした上に、追加関税で輸入がままならないため、豚肉価格が前年比+110%と高騰している。

 2)このため中国の消費者物価指数(CPI)は8年ぶりの高い伸び率を記録した。中国農業大学によると、ASF流行の直接的な損失額は1,400億ドル(約15兆3,300億円)を超えているとみている。

 3)世界で豚肉の輸出余力が最大の米国から輸入せざるを得ないが、中国は対米輸入に追加関税を課した。この困難に対処するため、中国は最近になって追加関税をゼロにした。

 4)中国の豚生産の約75%は家族経営の小規模な業者が手掛けているため、ASF流行前の養豚数に回復するのに、少なくとも5年は掛かるとみられている。

 5)以上のことからASFが中国に及ぼす影響は、(1)国民の政府不満の高まり(2)物価上昇によるインフレ(3)輸入増による外貨減少 など思いのほか大きな問題をはらんでいるので注意したい。

●3.台湾の総統選挙で独立派が勝利
 1)昨年6月までは親中国の国民党が勝利するとみられていたが、7月以降の香港のデモの影響を受け、米国が支援した独立派の民進党が息を吹き返し選挙で圧勝した。

 2)この結果、中国は、

  (1)台湾統一が遠のき、一帯一路戦略にとって不都合が生じた。

  (2)中国海軍の太平洋進出の突破計画が頓挫し、米国による中国包囲網が継続・強化される事態となった。日本にとってもシーレーン確保が続き、中国による影響力強化の先延ばしができた。

  (3)台湾が保有する最先端ナノ半導体生産設備を中国が手に入れられなくなり、中国にとって独自開発を目指すしかなくなり中国製造の高度化計画にとって大打撃。

  (4)米国による親中・従北の韓国の経済基盤である半導体分野での焦土化作戦が進む。韓国は記憶系半導体DRAMとNAND型半導体分野で世界シェア1位であるが、この分野ですでに競合する米クアルコムの台湾への1兆円を超える大型投資と日本・広島工場の追加投資等で、韓国の記憶系半導体の優位性が揺らぎ始めている。

 最近の記憶系半導体需要が回復してきているが、サムスン等の韓国企業にはその恩恵がないという。

  (5)台湾現政府が推し進めている中国本土進出企業の台湾への生産移転が加速される。結果として、中国本土の生産減につながるので中国にとっては経済減速の1要因となる。

  (6)香港の1国2制度を破棄しようとした中国は、世界に中国警戒意識を高め、最初の反応が台湾選挙結果となった。中国本土への跳ね返りの影響が心配。

●4.まもなく大型連休の春節、中国では延べ30億人が大移動(中国政府の会見)
 1)中国の大手旅行会社によると、海外旅行の行き先は日本が一番人気(昨年はタイ)。

続いて、「日本市場」の分析と「注目銘柄」へ)■III.日本株式市場
●1.海外投資家の短期筋による「イランの地政学問題をイベント化」した日経平均の乱高下
 1)日経平均は1月6〜10日で乱高下したものの10日終値は昨年末比では+194円高となった。

 2)外国人の先物買い残と日経平均の動向
   日経平均  外国人の先物動向  事象

   01月06日 ▲451円安  ▲7,880枚売り  米によるイラン司令官爆殺による地政学問題発生。

   01月07日 +370円高  +9,342枚買い  米イラン対立ながら「攻撃」が限定的とみられる。

   01月08日 ▲370円安  ▲3,072枚売り  イランによる米イラク駐留基地への弾道ミサイル反撃。

   01月09日 +535円高  +2,170枚買い  トランプ声明「反撃の明言はなく、軍事行動は望まない」

   01月10日 +110円高  +1,320枚買い(日中のみ)前日の米ダウ+211ドル高の地合いの影響。

 3)1月第1週は、内外短期筋の日替わりドタバタ売買でボラティリティの高い展開が続いた。

  ・1月6日は、CTA系(投資顧問系)のポジション調整の売で冴えない日経平均▲451円安となったが

  ・1月9日はトランプ声明「反撃の明言は無く軍事行動は望まない」を受け大幅高+535円高。海外ヘッジファンドなどの短期筋が株価先物指数の買い戻しを断続的に進めたため、上げ幅は一時+560円を超えた。

  ・今後は外資系のポジション調整売りが出る可能性が高く、上値の重い展開が予想される。

 4)先物残高の推移は、昨年12月19日の買いポジ残337,886枚と、1月9日は同水準の330,696枚買い残。

 その理由は、(1)米国株高期待と(2)米景気回復期待が外資系の高水準の買いポジションをキープしたとみる。よって、1月6〜10日間の日経平均株価の乱高下の原因は、イランの地政学問題をイベント化した外人の短期筋の動きとみた。したがって、イベントが陳腐化したら、外国人の先物買い残が元の水準に戻っているという訳だ。

 5)ただ、警戒が必要なのは、相場を先行するといわれるCスイスの買い残が減少基調にあるという点です。

   09月26日  30,420枚買い残
   11月01日  22,632枚
   12月30日  15,164枚
   01月09日  12,950枚

 上記の買い残減少からみると、Cスイスは近い将来の日経平均株価の下落をみているといえる。

●2.米イラン対立の勃発による日経平均の下落背景
 1)2019年後半に日経平均は大きく上昇した。EPS(1株当たり利益)が切り下がる中での株価上昇により、PER(株価収益率)は切り上がったという不安定な状況にあった。

 2)したがって、ひとたびリスクオフのムードが高まれば、売られやすい状況にあったといえよう。

 3)米株式に比べ、日本株の下落率が高いのは、「米イラン対立」というイベントを利用した外国人投資家の短期筋ヘッドファンドによる、(1)アルゴリズム発動 (2)先物の大量の仕掛け的な売り浴びせ が原因と思われる。つまり、今回のイラン騒動は米国株ではなく、日本株が海外短期筋に振り回されて過剰反応したとみる。

 4)ということは、外国短期筋のファンドによる買い戻しによる急伸があるということで、9〜10日に起きた。

●3.米イラン緊迫化にも拘わらず、安全資産としての (1)円高 (2)日本国債高 とならなかった
 1)理由として、

(i)中東情勢はリスク要因ではあるが、現時点では、
(1)世界景気の底入れ期待の方が強い 
(2)米欧日の中央銀行の現状維持見通しに大きな影響を与えるものではない。
 との見通しがあること。

(ii)投資家にとって、マイナス金利の日本国債を買い進むこともない。
 との見通しがあるためと考えられる。

 2)つまり、投資家にとって米イラン対立は限定的なのもと、受け止めていると思われる。
 
 (i)現に、イランがイラク駐留の米軍基地に弾道ミサイルを8日に16発発射し12発を基地周辺に撃ち込んだが、基地の中核施設を外した倉庫や格納庫などに着弾し実質的な軍事損害を与えていない。

 (ii)イラクの報復(弾道ミサイル発射)は、むしろ「イランのリスク回避策」とみることができる。

●4.最近の日本株式
 1)海外短期筋による、(1)ドル円 (2)米中株 に連動した仕手相場化によって、株価はファンダメンタルズを無視した乱高下となっている。

 2)一般投資家は蚊帳の外にいる状況が続いている。

●5.決算発表始まる
 1)安川電機(6506)は9日、2019年3〜11月の営業利益は中国減速が圧迫し▲6割減で、春節後に期待感。

 2)ファーストリテイリング(9983)は9日、2020年8月期通期営業利益を前年比▲4.9%減の2,450億円と最高益から一転して4期ぶりの営業減益。関係悪化の韓国とデモ続く香港の下振れが影響。

■IV.注目銘柄(株式投資に際しては自己責任でお願いします)
  4442 バルテス      業績好調だが株価上昇は出遅れ。
  4187 大阪有機化学    最先端半導体製造の材料供給。
  3479 ティーケーピー   貸し会議室事業で好調だが株価回復期待。
  6182 ロゼッタ      業績好調だが株価出遅れ。
  2326 デジタルアーツ   業績好調だが株価下落から反転の兆し。

財経新聞

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