能作社長が 人生で一番 背筋が凍りついたシーン

1月15日(水)6時0分 ダイヤモンドオンライン

9月12日の『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)で一躍話題となった、富山県高岡市にある「能作」は、北陸新幹線・新高岡駅からタクシーで15分前後、日中でも3000円以上かかる。失礼ながら、あたりは何もない「片田舎」だ。だが、今、ここに年間「12万人」が殺到している!

能作克治社長(61)は大手新聞社のカメラマンから一転、能作家の一人娘と結婚し、婿(むこ)入り。長い間、「マスオさん生活」を送ってきた。カメラマン時代は入社2、3年目で年収500万円超。それが鋳物職人となったとたん、年収は150万円と「3分の1以下」に急落したという。

そんなある日、「工場見学をしたい」という電話があった。小学生高学年の息子とその母親だった。工場を案内すると、その母親は、信じられないひと言を放った。

「よく見なさい。ちゃんと勉強しないと、あのおじさんみたいになるわよ」

その瞬間、能作は凍りついた。全身から悔しさがこみ上げてきた。同時に、「鋳物職人の地位を絶対に取り戻す」と誓った。

閉鎖的な高岡の地で「旅の人(よそ者)」といわれながら、1200度以上の熱風と対峙し鋳物現場で18年、4リットルの下血も経験しながら必死に働いた。

そして2017年、13億円の売上のときに16億円をかけ新社屋を建てた。すると、社員15倍、見学者300倍、さらに売上も10倍になったのだ。

しかも、「営業なし」「社員教育なし」で!

このたび、能作克治社長の初の著書『社員15倍!見学者300倍! 踊る町工場——伝統産業とひとをつなぐ「能作」の秘密』が、話題となっている。

そんな中、第7刷突破のロングセラー『ディズニー、NASAが認めた 遊ぶ鉄工所』の著者・HILLTOP山本昌作副社長がついに能作を訪れた。

そこで交わした時間は4時間!日本中探してもこれだけ「ものづくり」が好きな経営者同士は存在しないだろう。両書を担当した編集者も興奮の連続だったという。今回から「修羅場経営者in富山」の初対談を紹介しよう。(構成・寺田庸二)


背筋が凍りついた

あの母親のひと言


能作 僕も、ものづくり専門ですが、どの会社もうまくいっている理由は簡単ですよね。

 地域のためになることをやる

 それだけです。



『踊る町工場』にも書きましたが、僕が新聞社のカメラマンを辞めて高岡に来て2年目ぐらいのときに、高岡に住んでいるお母さんと小学5年ぐらいの息子さんに、

「よく見なさい。

 ちゃんと勉強しないと、

 あのおじさんみたいになるわよ」


 といわれたのがすごいショックだった。

 伝統産業は地域の産業だから、地域のみんなに自慢してもらいたい産業。なのに足蹴にされたわけですから。


山本 僕も似たようなこといわれましたよ。鉄工所は油だらけで汚かったですから。雨の日は、僕らが歩くところに全部油が浮くのです。

 僕は家に帰っても、入口で女房に、「上に上がらずに玄関で服を脱いで」といわれました。僕らの服は全部家族とは別に洗いましたね。


能作 「ただいま」と帰ると、毎日そんな感じですか。


山本 そうです。


能作 「ただいま」の語源は「たらいま」から来ているようですね。


山本 「たらいま」?


能作 要するに、昔は地面が汚くて足が汚れるから、玄関の外にたらいを置いて、そこで足を洗いなさいと。足を洗う間に、今日あったいろいろな話をすることから「ただいま」というようになったとか。だから「たらいま」。たらいの間。


山本 毎日油まみれで帰っても、すぐに家に入れてもらえない(笑)。

 そんなことをしながら、本当に俺はこんなことをしていていいのか、と自問自答しました。


能作 山本さんも職人の技術はすごいわけですよね。



山本 ええ、自分でいうのもなんですが、僕は結構うまいと思いますよ。

 先ほど工場見学で、ろくろを研磨している若い職人さんと話しましたが、つい専門的なことをたくさん聞いてしまいました。


 僕は立命館大学経営学部卒ですが、その前は工業高校の機械工学科出身です。

 旋盤、フライス、溶接、鋳物製作など一通りの作業はすべてやってきました。

 だから、ものすごく能作さんの工場には親近感があります。

 ものづくりは大好きな僕ですが、親の鉄工所に入ったときは、大手自動車メーカーの部品だけをつくっていた。同じものを繰り返しつくる悲惨な環境から早く抜け出したかった。

 今日、能作さんの工場を見ても、目新しいものを次々に生産している。それがすごく素敵ですよね。


能作 楽しいですよね。続きは次回教えてください。






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