オートサロン盛況でも自動車業界の未来が暗いワケ

1月16日(木)6時0分 JBpress

大盛況の東京オートサロン2020。会場の様子(筆者撮影、以下同)

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(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 2020年1月10〜12日、毎年恒例となった自動車関連イベント「東京オートサロン2020」が千葉県・幕張メッセで開催され、盛況のうちに幕を閉じた。

 主催者発表では、開催3日間の総入場者数は前回比101.6%の33万6060人と、過去最高を記録した。3日とも晴天に恵まれたことが客足を増やしたとみられる。


シャコタン暴走族ショーからの進化

 時計の針を戻すと、東京オートサロンの前身である「東京エキサイティングカーショー」が開催されたのが1983年。場所は東京・晴海展示場だった。

 筆者は当時、主催者の自動車関連出版社「三栄書房」と自動車レース関連の記事を通じて付き合いがあり、東京エキサイティングカーショーが立ち上がる経緯を目の前で見ていた。

 初期の東京エキサイティングカーショーは、全国の走り屋や暴走族が東京に集結するといったキワモノ系イベントであり、警視庁は毎年、会場周辺で厳重警備体制を敷いていた。

 その後、1987年に東京オートサロンに改称してからも、2000年代初頭までは改造車の祭典だった。最大のウリは、三栄書房などが発行する改造車専門雑誌や、ビデオマガジンなどで“有名ショップ”と紹介された全国の自動車修理工場の出展だった。来場者はそれらの工場から、改造系パーツメーカーの新作パーツを使った改造車を購入したり、改造契約を交わすことができた。超有名ショップになると、開催期間中の売り上げが数千万円に達することもあった。


自動車メーカーも東京オートサロンに出展

 ところが、2000年代初頭以降、改造車ブームは一気に冷え込む。1990年代後半に芽生えたアメリカでの日本車改造ブームも消滅。筆者は改造車ブームの現場の一員となり、ときには当事者となっていたが、まさかここまで急速にトレンドが変わるとは予想していなかった。

 改造車ブーム消滅と並行するかのように、東京オートサロンには自動車メーカー各社の出展が増え始めた。国内の自動車販売台数に頭打ち感が出始める中、メーカーが車内やボディの装飾品やサスペンションの交換部品などを、カーティーラーを通じて正規オプション部品として流通させる戦略に打って出たのだ。

 また、自動車メーカーが行うモータースポーツ関連の販売促進の場としても、東京オートサロンを活用するようになった。

 こうした動きは2010年代に入っても続き、東京オートサロンには、改造車目当てではない一般的なクルマ好き層が集まるようになった。


クルマ好きの高齢化が止まらない

 一方、自動車ショーの“本家”である「東京モーターショー」(隔年開催)は2010年代に入り、入場者数が減少し続けた。輸入車の出展も徐々に減り、2019年にはメルセデス、ルノー、BMWアルピナの3社を除いて撤退した。

 今やクルマ好きからは「モーターショーよりオートサロンの方が面白い」という声も聞こえてくるが、2019年は、会場がお台場地域に分散したことに伴い、家族連れが楽しめる入場無料エリアなどを設けたことで、入場者数(主催者発表)は急回復した。

 入場者数だけを見ると、東京モーターショーと東京オートサロンという日本の2大自動車ショーは今のところ盛況に見える。

 ところが、自動車業界の実態は真逆に近い状況にある。

 まず、高度経済成長期から日本の自動車ブームを支えてきた自動車雑誌の経営が苦しい。ある自動車雑誌大手の編集長は、「毎号が赤字です。どんな企画を打っても回復できません。なにせ中心読者層か50代後半から60代で、20代の読者はほぼいないんです。この先、ウチはそう長くないでしょう」と肩を落とす。2019年は、老舗雑誌のひとつ「ホリデーオート」(モーターマガジン社)が事実上の廃刊である「休刊」となった。

 自動車雑誌の収益が悪化する一方、ネット上では自動車関連の記事が目立つ。さまざまなネットメディアが、経済ニュースとしてページビューを稼げるため自動車関連の記事を積極的に掲載するようになったからだ。

 とはいえ、ネット上での自動車ニュースが増えても、クルマ好きはますます高齢化している。クルマを「コモディティ」として見る人も増えている印象を受ける。もはやけっして多数派とはいえない一部のクルマ好きが、ふらりと寄るイベントとして、東京オートサロンや東京モーターショーを訪れているだけ。自動車ショーが盛況でも、日本人のクルマ離れは止まらない。そんな図式が見えてくる。

筆者:桃田 健史

JBpress

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