貧困地域ほど「酒とタバコ」のゴミが多い

1月16日(火)9時15分 プレジデント社

「その地域のゴミをみれば、住民の質がわかる」。ゴミ収集会社で働くお笑い芸人の滝沢秀一さんは、そう力説する。たとえば貧困地域に多いのは、酒とタバコのゴミ。一方、金持ち地域に多いゴミは健康器具。また、ゴミ出しのマナーなどにも、その傾向はあらわれているという——。

■世田谷区では直接ゴミを渡される


引っ越し先を探す時、その地域の「住みやすさ」をどう判断するだろうか。ひとつのおすすめは、その地域の「ゴミ捨て場」に目を向けてみることだ。



お笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一さんは、ツイッターにこうした『ゴミ清掃員の日常』と題した投稿を繰り返している。マシンガンズは2000年代後半頃、高速のしゃべりで世への不満をぶちまけるスタイルの漫才で、ネタ番組に出演するようになった。だが家庭を持ちながらお笑い一本で食べていくのは難しいそうで、ツッコミ担当の滝沢さんは現在、都内のゴミ収集会社で正社員として働いている。




ゴミ収集会社で働くマシンガンズ・滝沢さん

今回はそんな滝沢さんに、ゴミ清掃員の目から見た“住みやすい地域/住みにくい地域”について聞いた。滝沢さんは、ゴミ捨て場の様子を幾度となく見ることによって、以前はわからなかった各地域の特徴がわかるようになったと語る。


「世田谷区には『住みやすい』というイメージがありますが、ゴミ収集の仕事をしていても、それは確かです。世田谷区に行くと、そのタイミングで主婦とおぼしき女性の方々が家からわらわらと出てきて、ゴミを直接渡してくるんですよ。おそらく収集車の音を聞いて出てくるんだと思います。全般的に専業主婦が多いんでしょうね」


■ゴミ収集所から住民が見える


「ゴミ収集車の音を気にして生活できるというのは、余裕がある証拠だと思います。ほかにも、災害時に使えるように土嚢が置いてある集積所なんかは自治体がちゃんとしているイメージです。主婦の方が集まっていて、ゴミ集積所もキレイなことが多いですね」


ゴミ集積所を見れば、自治体の姿勢や地元住人たちの結びつき、自治意識も透けて見えるというわけだ。では逆に、住みにくそうな場所もわかるのだろうか?


「住みにくそうな地域名を具体的に挙げるのは、さすがに勘弁してください。ただ、治安が悪そうな場所としてよく取り上げられるような地域は、やっぱりゴミ集積所が汚かったり、なんでもないところにゴミがいっぱい捨てられていたりすることは多いです」


特に顕著なのが、ゴミの出し方といったルールが守られているかどうか。ゴミの出し方ひとつをとっても、その地域の傾向があらわれるのだという。



「自治体や周りの主婦がちゃんとしている地域では、ペットボトルゴミのラベルをはがしてくれていることが多いです。主婦同士で情報交換しているからか、分別の知識や時間の余裕があることがわかります。ネコの餌の缶詰は夏場にはとても臭くなるんですが、それもしっかり洗ってくれています」




「土は何ゴミだと思います?」と分別クイズを出す滝沢さん

「若者が集まる街では、分別のルールがなっていないことが多いです。ペットボトルとビン、缶が、しっかり洗ってあるのに1つの袋に入って出されていたこともありました。悪気はなくて、ルール自体を知らないのかもしれません。だから、“学生に人気の街”というのもゴミ清掃員にとっては不人気だったりします。ほかにも、外国人が多い地域では回収日でもないのに不燃ゴミがよく出されています。これもルールが周知されていないんだろうな、と」


そういった地域はゴミ収集員からの評判も決して良くはないという。一見、細かいことでも実際にゴミを収集する身には負担になることも少なくない。


「容量の小さなレジ袋を使ったゴミ袋が大量に出されるんですよ。ゴミ袋の数が多いと、何回もかがんで収集しないといけないから、しんどい。そんな時に、ゴミ袋同士を結び合わせて1つにまとめてくれている人がいると、救われますね」


■「分別しないでゴミを出すと渋滞が起きる」


「ルールが守れていない地域では、燃えるゴミの中に乾電池が入れられていることも。バレないと思っているかもしれませんが、持った時の音や揺れ具合でわかるんですよ。そういうゴミの分別に手間取ると、収集車が道路をふさいで渋滞が起こることもあります」


「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないが、ゴミ出しのルールが守られないことが大きな事態につながることもあり得るというわけだ。ゴミの出し方について、滝沢さんはこんな警鐘も鳴らす。


「ゴミひとつから、その人が見えてきます。ゴミの中にヘアピンや女性誌が入っていたら、女性のゴミだってわかるし、野菜の生ゴミが入ってなければ、料理をしない人だな、とわかる。中には、携帯電話の番号がしっかり載っている請求書が外から見えるように入っている人もいます。本当に気をつけたほうが良いと思います。警察は容疑者の行動パターンをゴミで調べるらしいんですが、その有効性を実感しました。僕はこの仕事を始めてすぐ、シュレッダーを買いました。ちなみに、捨てられているゴミを勝手に持っていくのは犯罪なので、やっちゃダメですからね!」



また、最近の集合住宅ではダストボックスが採用されていることも多いが、その内側も場所によって千差万別だ。


「不燃ごみの日に、やたらとゴキブリの殺虫剤が捨てられているゴミ集積所があるんです。その地域は古い民家が多くて川沿いなので、ゴキブリが住み着いているんでしょうね。マンションなどのダストボックスでもゴキブリがたくさんいるものがあって、清掃員の間では“ゴキブリボックス”なんて呼んでいます」


確かに害虫や害獣の多寡は、その地域に住む者にとっても気になるところ。ゴキブリ以外にも、ネズミやカラスの存在を思い浮かぶ。


「カラスの場合、ゴミ集積所の汚さよりは近くに大きな公園があるかどうかで多さが変わってきます。公園に住み着いて食料をあさっているので、住みやすそうな地域でも近くに公園があればカラスは結構見ます。ネズミは圧倒的に繁華街が多くて、ふてぶてしい。俺がゴミ収集に行ったら、逃げずに飛びかかられたこともあります」


「結局、ゴキブリが住み着いているダストボックスがある場所は、ちゃんと管理していないんだと思います。だから、ダストボックスがきれいかどうかで、その集合住宅の内実がある程度わかってくるんですよ。汚かったら、管理人がろくすっぽ来てなくて、住民のやりたい放題になっている。そういう集合住宅に住むのはやめたほうが良いかもしれないですね」


■健康グッズの粗大ゴミが出る“金持ち”地域


滝沢さんはさらに「お金持ちの多く住む地域と貧乏な人が多い地域では、出されるゴミの内容がまったく違う」と指摘する。


「お金持ちの住む地域で出るゴミは、普段見ないようなものが多いんですよね。例えば、高級なミネラルウォーターだったり、あからさまに高そうなワインのビンだったり、コンビニに売ってないものが多かったりします。ほかにも、ロデオマシンや腹筋を鍛えるマシンだとか、いわゆる健康グッズの粗大ごみもよく見られます。多分、お金持ちは健康志向になっているんだろうな、と。お金を持っている分、自分に対して目を向ける余裕があるんでしょうね」



金持ち地域のゴミから住人の健康志向が透けて見える一方、「お金持ちの住む地域ではタバコの吸い殻はあまり見ないんですけど、貧乏な地域ではタバコのゴミはよく見るんですよ!」と滝沢さんは熱弁する。ほかにも貧乏な地域で出てくるゴミを見ていると、ひとつの“ある傾向”が見えてくるという。



「アイドルの握手券付きのCDや発泡酒、日本酒の一升瓶や栄養ドリンクが多いですね。ほかにも、資源ゴミじゃなく、燃えるゴミの日に少年マンガ誌が大量に出てくることもよくあります。タバコもそうですけど、どれも小さく依存するものなんです。貧乏な人っていうのは、小さな依存が大きな消費になってしまっているんだろうなって。ほかにも、有名なサブカルの施設が近くにある地域では、アダルトゲームのパッケージが捨てられているのもよく見ますね(笑)」


ゴミ清掃員として働くことで、さまざまな発見があったという滝沢さん。よくわからないゴミと遭遇して困惑した経験もあるのだとか。


「ある時、高級住宅街で30リットルのゴミ袋いっぱいに“えのきバター”の食べ残しが捨てられていたんです。周りには飲食店もなくて、『こいつら、こんな大量のえのきバターで何してんだ!?』ってなりました。ゴミの出し方はきちんとしているけど、果たして一体何をやっているんだって。イガグリが捨てられていたこともあった。イガグリのイガをむいて食べようとはなかなか思わないですよ。土地や畑を持っているんでしょうね」


■ゴミが映し出す地域と世相


ここまで滝沢さんにゴミと地域の関連性を聞いてきたが、ゴミから世相もうかがえるようだ。


「缶コーヒーのゴミが5年前より明らかに減りました。コンビニコーヒーが充実し始めた影響なのかな、と勝手に分析しています」


ゴミはその時代と地域を映し出す鏡なのかもしれない。冒頭に紹介したツイートシリーズでも「次、引っ越しする時、きっと僕は集積所を見る」と記していた滝沢さん。最後に、こんなことも言っていた。


「捨てられたゴミに無頓着な地域に住む人たちは自分のことで精いっぱいで、誰かが捨てたゴミがあったら自分もそこに捨てていいかもって、流れに身を任せてしまうんでしょうね。だから逆に、ゴミ集積所をきれいにすれば、その地域自体がよくなるのかもしれませんね」


引っ越しのときだけでなく、自分が今住んでいる地域について知りたい人は、一度、近くのゴミ集積所を回ってみてほしい。きっと新たな発見があるはずだ。


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滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)

お笑い芸人

1976年、東京都生まれ。1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。「THE MANZAI」2012,14年認定漫才師。14年、『かごめかごめ』(双葉社)で小説家デビューを果たしている。〈https://twitter.com/takizawa0914

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(お笑い芸人 滝沢 秀一 構成=須賀原みち 撮影=市村 岬)

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