「ポーターの競争戦略」を理解すればフェイスブックの強さがわかる

1月17日(金)6時0分 ダイヤモンドオンライン

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発売1カ月で5万部を突破した入山章栄氏の最新刊『世界標準の経営理論』。800ページを超える本書の読み方は読者に委ねられる。もちろん初めから読み進めても良いが、著者が推奨するのは、読者自信が興味のある箇所から読み進めていくスタイルである。約30の経営理論を網羅する本書は、どこから読んでも良いように作られている。いわば辞書のような利用こそが、本書を最大活用する方法のひとつだ。


経営戦略を理解する上で欠かせない、SCP(structure-conduct-performance)理論。その骨子は「独占に近い業界ほど、安定して収益性が高い」というものだった。この理論をベースに、今回はマイケル・ポーターの戦略フレームワークを解説する。


寡占はなぜ儲かるのか



 SCP理論の前提を踏まえて、さらなる解説に入ろう。ここで覚えていただきたい名前が、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)教授のジョー・ベイン、ハーバード大学教授のリチャード・ケイブス、そしてマイケル・ポーターである。


 余談だが、この3人は言わば師弟のような関係にある。ケイブスはハーバード大学でPh.D.(博士)を取得した後、学者としてのキャリアをUCバークレーでスタートさせ、そこで当時「経済学のSCP」を発展させていたベインと共同研究を行っている。その後ハーバードに戻ったケイブスの薫陶を受けたのが、ポーターだった。


 まず、ベインによる「経済学のSCP」から始めよう。これまで述べたように、「ある産業が完全競争から離れるほど(=独占に近づくほど)企業の収益率は高まる」というのがSCPの根本だ。「独占に近い」とは、少数の企業に売上げが集中しているということである。これは「寡占」と呼ばれる状況だ。


「寡占は独占と違い、少数でもライバル企業が同じ産業にいるのだから、複数社で競争すれば各企業の収益性は低下するのではないか」と考える方もいるだろう。たしかにその可能性はあるのだが、それに対してベインは、「寡占産業では企業数が少ないので、1社の行動が他社の行動に影響を及ぼしやすい」という点に注目する。


「暗黙の共謀」は実際に多くある


 例えば、A、B、Cの3社だけが市場を占有している産業で、A社が製品価格を大幅に引き下げたら、B社とC社も対抗するために価格を引き下げるのが一つの「合理的な判断」になる。するとA社はB社・C社に対抗するため追加で価格を下げるだろう。そして、それはB社・C社のさらなる値下げにつながる。この状況が進みすぎると、業界は「極度の価格競争」に陥ってしまう。


 しかし逆に言えば、この状況を見通したA社が十分に合理的なら、「価格を引き下げない方が賢明」と判断するはずだ。B社とC社も同様だ。結果として、合理的なA社、B社、C社とも価格を引き下げないので、業界は価格競争に陥らず安定した収益を保つことができる(小さい企業が無数に存在する完全競争では、1社の行動が他社に影響を及ぼさないので、この状況は実現しない)(※1)。


 もちろんこの行動は、競争法の範囲内で行われなければならない。しかし、この「暗黙の共謀」(tacit collusion)で特徴づけられる業界は現実に多くある。食品関係業界はその特徴が顕著かもしれない。例えば大手4社の寡占状況にある日本のビール業界では長年大幅な値下げ競争が起きず、結果的に各社の収益性は比較的安定していた。米国のシリアル業界も同様だ。コーラ業界はペプシとコカ・コーラの2強が、互いに価格競争を仕掛けないことで高い収益性を保っている。


 この仮説を実証して「経済学のSCP」を切り開いたのが、ベインが51年に経済学の学術誌『クォータリー・ジャーナル・オブ・エコノミクス』(QJE)に発表した論文だ(※2)。この研究では36年から40年の米国42産業のデータを使い、寡占度が高い市場ほど、企業の平均利益率が高くなる傾向が示されている。





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