企業はデータの可能性をどう捉えアプローチすべきか

1月17日(金)6時0分 JBpress

本コンテンツは、2019年12月3日に開催されたCDO Club Japan主催「CDO Summit Tokyo 2019 Winter」での講演内容を採録したものです。

<パネリスト>
株式会社セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 デジタル戦略部シニアオフィサー
清水 健 氏

パーソルホールディングス株式会社 CDO(Chief Digital Officer)兼 グループデジタル変革推進本部 本部長
友澤 大輔 氏

横河電機株式会社 執行役員 デジタル戦略本部長
船生 幸宏 氏

Wovn Technologies株式会社 取締役副社長
上森 久之 氏

<モデレータ>
一般社団法人CDO Club Japan 理事・事務総長
水上 晃 氏


データの可能性をどう捉え、どうアプローチするか

 CDO Club Japan主催のCDOサミットで注目を集めた3つのパネルディスカッション。2つ目のセッションでも取り上げた「データ活用」について、3つ目のセッションではさらに深掘り。そこにある可能性と課題について、4人のパネラーたちが意見を交換した。

水上晃氏(以下、水上):本日最後のパネルディスカッションには、まったく異なる業種や立場の4社からご登壇いただきました。一口にデータ活用と言っても、期待している可能性も各社それぞれに違うかもしれませんね。

清水健氏(以下、清水):小売業にとっては「お客さまにいかに商品を買っていただくか」が生命線ですが、少子高齢化の国内市場で新規顧客を増やしていくことには限界があります。ですから「一人ひとりのお客さまにいかに使ってもらい続けるか」が経営上の重大テーマになっていますし、データ活用の可能性の面でも、今までとは異なる視点で取り組んでいます。

 これまでの小売業では過去の履歴データが主役として扱われてきたのですが、これをどんなに解析しても「このお客さまにどんな潜在ニーズがあるのか」をつかみ取ることは困難です。ですから、潜在ニーズを先回りしてお客さまを感動させるようなエクスペリエンスを用意していく取り組みに注力しながら、従来とは異なるデータ収集と分析につなげていこうとしているところです。

友澤大輔氏(以下、友澤):人材関連ビジネスの領域ではすでに職務経歴書などの電子化が進み、構造化データとなっていますので、プライバシーの保護などに細心の注意と問題意識を持ちつつも、採用企業・求職者の双方にとってバリューにつながるデータ活用の方策を模索しているところです。

 また、今後数カ月から1年の間に、それなりの規模で不況が訪れる可能性も予測されていますので、少なからず人材採用の局面にも影響が出るはず。他方で、最新のデジタル技術も用いたHRテックを導入する企業が増えており、今後も進化を遂げるはずです。こうしたさまざまな環境変化にもデータの活用機会があると考え、何ができるのかを探ってもいます。

船生幸宏氏(以下、船生):当社ではデジタル変革の取り組みをインターナルDXとエクスターナルDXの2つに大別し、それぞれで可能性を探究しています。インターナル、つまり社内におけるデータ活用については部門横断で有効なデータを共有していく仕組みや、横串で分析結果を活用していけるような体制作りに力を注いでいるところです。

 エクスターナル、つまり社外での取り組みはまだ動き出して間もないのですが、お客さま企業に価値あるデータを提供しビジネスに役立ててもらうための可能性について検討を重ねています。

上森久之氏(以下、上森):Wovnは、世界中の人がインターネットを介し、全てのデータに母国語でアクセスできるようにする多言語化ソリューションを提供しています。そしてこの事業を展開する中で、日本がとてもユニークな国なのだということがデータを通じて明らかになってもいます。

 インバウンドマーケットの大きさについては皆さんもご存知だと思うのですが、実は在留外国人のマーケットも急速に拡大しています。インバウンドと合わせれば、その年間消費額は実に10兆円にも及びますし、在留外国人の人数だけを見ても、世界有数の規模になっているんです。パーソルの友澤さんはよく知っていらっしゃるはずですが、多くの企業が人財としても注目し始めています。当社としては、ソリューションを通じて得られるこうしたさまざまな独自データに大きな可能性があると自負しています。

清水:当社で得ているクレジットカードデータとPOSデータを見ても、近年は非常に多くの外国人が日常的に買物をしてくださっています。個人を特定することはできませんが、例えば「中国の方々は日本人よりも牛乳をたくさん購入する」などという結果も出ているんです。


データ活用を阻む要因とどう向き合えば良いのか

水上:DXを成功させるため、データ活用の面でも戦略的な議論や、具体的な技術基盤の構築、さらには組織改編や人材採用と育成などに取り組んでいることと思いますが、やはりデータ活用促進の障壁材料となっている具体的課題も現れているのではないでしょうか? 皆さんは、その課題とどう向き合っているのでしょう。

清水:技術面と事業面での大きな課題は、当社が2015年から会員登録を進めている「7iD(セブンアイディ)」と、お客さまが利用されている他の外部IDとをどう統合連携させていくか、というものでしたが、これについてはかなり研究も進み、期待できる進捗も見えてきています。

 船生さんは先ほど、横河電機の取り組みについてインターナルDXとエクスターナルDXに分けているというお話をされていましたが、私がCDOとして一番苦労しているのはインターナルの方です。特に大きな課題は2つ。1つは、今日のサミットで他社さんからも同様のお話が何度か登場していましたけれども、「社内での意識や理解の統一」という部分です。

 どうしてもデジタルについてはさまざまな情報が溢れていますので、DXとデジタイゼーションをまぜこぜに捉えている社員も多く、定義が人によって違っていたりしました。

 現状は一定レベルまで統一することはできたと思っていますが、やはりDXについてもデータ活用についても、社内で定義付けや認識や理解を共有していくことは不可欠ですから、CDOとしては継続的に取り組む必要を感じています。

 もう1つの課題は「日々データを多面的かつ客観的に見ることができ、その中身をロジカルに理解し、伝達できる人材」を増やしていくこと。そしてそういう人材が自由に議論できる場や仕組みを用意することも、避けては通れない取り組みだと実感しています。

友澤:人材ビジネスの世界では2019年に物議を醸す事件もありましたし、やはり「個人情報をいかに公正に守り抜くか」というテーマを見つめ続けなければいけません。ただし、単に守るだけで攻めのデータ活用をしない、という姿勢でもいけない。

 企業にとっても個人にとっても有効なデータ活用の道を探るという意味での「攻め」と、個人の情報や権利をしっかり保護するという意味での「守り」とのバランスを見極めながらチャレンジしていくことがわれわれにとっての課題です。

船生:今後、当社もエクスターナルな局面で攻めのデータ活用を加速していきますので、やはり基礎となるデータドリブンのカルチャーというものを正しくみんなで理解し、定着させていく努力をしていかなければいけないと考えています。インターナルな局面については、先ほどもお話したように、部門を超えたデータの統合・共有という取り組みを続けていますが、現場社員のみんなに向けても「データは極力、加工せずに生の状態で使っていこう」と呼び掛けています。

 具体的に言えば、議論の席などにはSAPに収められているデータをそのまま出してきて使うということ。従来の働き方だと、会議に出席する社員は社内にあるさまざまなデータベースやインターネットなどからデータを持ち寄って、それをExcelやPowerPointといったツールに乗せ、加工して資料にするのがどこの企業でも当たり前だったと思います。

 一見その方が分かりやすくて効率的だと思いがちですが、結局、議論が進む途上で「このデータはどこから持ってきたもの? 信用できるの?」というような話になり、時間を浪費していたんです。データドリブンのカルチャーを定着させるための手だてとしても、「社内にあるデータはそのまま使う」という姿勢を社員の間に根付かせたいと考えています。

上森:私たちはデータ活用によってソリューションを提供している立場。友澤さんもおっしゃっていたように多くの企業が「守り」と「攻め」の双方を同時に確立しようとしているわけですから、きちんと期待に応え、両方をカバーできる技術と意識とを確保したいと思っています。

清水:前のパネルディスカッションでも話が出ましたが、やはりDXは1社だけで頑張っていても理想の環境はなかなか生み出せません。上森さんのWovnのように突き抜けた技術力を持つベンチャーであったり、異分野の大企業の皆さんであったり、多様な組織とパートナーシップを築いていく動きも私たちCDO共通の大きな課題だと思います。

水上:会場の皆さんもパネラーからのお話に大いに共感していたようですし、ぜひこのCDOサミットが「つながる」機会として機能してくれれば、とわれわれCDO Clubも考えていますし、今後さまざまな工夫をしていきたいと思います。

筆者:JBpress

JBpress

「株式会社」をもっと詳しく

「株式会社」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ