顧客づくりのヒントは、子どもたちにあり

1月20日(日)6時0分 ダイヤモンドオンライン

非常に高額なのに、最高競争率316倍!

いま、この日本で、宝くじのように当選するのが難しいサービスが存在することを、あなたはご存じだろうか?

JR九州。正式名「九州旅客鉄道株式会社」。名前だけ聞くと、旧態依然の鉄道会社のイメージを持つかもしれない。

だが、この会社の「あるサービス」がひそかに感動の輪を呼んでいる。

東京だけで暮らしているとわからない。でも、九州に行くと景色は一変する。

その名は、クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」(以下、ななつ星)。いまや「世界一の豪華列車」と称され、高額にもかかわらず、2013年の運行開始以来、予約数が定員をはるかに上回る状態が続いている。なんと、DX(デラックス)スイート(7号車の最高客室)の過去最高競争率が316倍というから驚きだ。昨年11月の『日経MJ』には、「ブランド作りとは世界の王でも断る覚悟」と題して、そのフェアな抽選システムが新聞一面に紹介された。

だが、驚くべきは、「ななつ星」だけではない。

この会社、バリバリの鉄道会社なのに、売上の6割は鉄道以外の収入で、8年連続増収なのだ。

かつてこんな会社があっただろうか?

JR九州を率いるのは唐池恒二氏。8月27日、韓国と九州を結ぶ真っ赤な新型高速船「クイーンビートル」を2020年8月に就航すると発表。子どもから大人まで博多と釜山の優雅な旅を満喫できるという。さらに、7月には、中国・アリババグループとの戦略的資本提携を発表。2020年の東京オリンピックを控え、ますます九州が熱くなりそうだ。

記者は、この20年、数々の経営者を見てきたが、これほどスケールの大きい経営者はほとんど見たことがない。

1987年の国鉄分割民営化の会社スタート時は、JR北海道、JR四国とともに「三島(さんとう)JR」と称され、300億円の赤字。中央から完全に見放されていた。

それが今はどうだろう。高速船、外食、不動産、建設、農業、ホテル、流通、ドラッグストアなど売上の6割を鉄道以外の収入にして8年連続増収。37のグループ会社を率い、2016年に東証一部上場、2017年に黒字500億円を達成。今年3月1日の『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)でも、逆境と屈辱から這い上がってきた姿が紹介された。

今回、再現性のあるノウハウ、熱きマインド、破天荒なエピソードを一冊に凝縮した、唐池恒二氏の著書『感動経営』が、発売たちまち4刷。唐池氏に『感動経営——世界一の豪華列車「ななつ星」トップが明かす49の心得』にこめた思いを語っていただこう。(構成:寺田庸二)



鉄道ファンでなく、

子どもたちのほうを向いた


 私はおそらく、鉄道ファンと呼ばれるひとたちにとても嫌われている。

 理由は単純。彼らの意向をまったく汲まない列車づくりを進めてきたからである。

 

 ほんとうにつかむべき顧客とは、どういうひとたちだろう。

 私どもの会社では、多くの場合、ターゲットは子どもたちと設定している。


 1988年、現在の「あそぼーい!」の前身である「あそBOY」は阿蘇地方の風景を西部劇のシーンととらえ、SL機関車をそのモチーフとして採用したものだった。


 こんなとき、鉄道ファンの皆さんは、国鉄時代のSLを忠実に再現してほしいと考える。


 ところが私はまったく違う。


 SLはあくまで西部劇のイメージのためなのであって、あの劣悪なサービスの国鉄時代の象徴をもう一度、などという気持ちは毛頭ない。


「あそBOY」で設定した顧客は子どもたちであり、子どもを中心としたファミリーである。


 JR九州のD&S(デザイン&ストーリー)列車は、いずれも子どもや女性のお客さまを顧客層としてとらえたものばかりだ。


 かつては私も、各種記念きっぷなどの企画を鉄道ファンのためにつくったこともあった。

 時には有田焼の名工にお願いして、非常に高価な特別きっぷをつくり、これは絶対にヒットするはずと思いながら、大きく失敗したりしたものだ。


 数々の失敗の経験から、ひとつはっきりしたことがあった。

 九州管内のコアな鉄道ファンは、1000人程度しかいなかったのだ。

 何をやっても、その程度の売上しかない。ほとんどの企画の収支は赤字である。


 ここで私は改めて決断した。


 設定すべき顧客は鉄道ファンの皆さんではない。

 九州各地のまちにくらすファミリーそのものだと。


 そして、未来を向くならば、将来の主要なお客さまとなる子どもたちに喜ばれるものをつくるべきだと。


 世代は次々と移りゆくが、いつの時代も子どもはいて、その子どもを中心としたファミリーがある。

 一方、旧国鉄をしのぶ鉄道ファンの皆さんは減ってゆく一方であろう。

(失礼)


 発足当時のJR九州も私も、こんな当たり前のことに気づいていなかったのだ。





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