将来「冷蔵庫は無料配布になる」と予想する根拠

1月21日(火)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

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期間に応じて料金を支払う「サブスクリプション」のサービスが広がっている。調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏は「サブスクリプションは消費者の『迷いたくない』という悩みを解決したが、世の中はコスト意識のない買い物を提供する方向に進んでいる。そのうち『無料配布の冷蔵庫』も登場するはずだ」という——。

※本稿は、坂口孝則『日本人の給料はなぜこんなに安いのか 生活の中にある「コスト」と「リターン」の経済学』(SB新書)の一部を再編集したものです。



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■加入した時点で思考停止に陥ってしまう


定額制で映画やテレビ番組を見られる動画配信サービスに加入している人は多いと思います。好きなときに好きなだけ映画を見られる便利さを享受してしまったら、なかなか離れることができませんよね。


中でも二強と言えるのが「Amazonプライム」と「Netflix」です。この2社は競合他社との競争に勝ち、圧倒的な立場に立ったあと月会費を値上げしました(「Amazonプライム」は2019年より月会費400円から500円(税込)に。「Netflix」は2018年より月会費650円から800円(税別・スタンダードコース)に)。それでも、それほどやめる人はいませんでした。


「hulu」「U‐NEXT」など、他の配信サービスも素晴らしいのですが、人間は一度どこかに加入したら、他に乗り換える人はなかなかいません。加入した時点で思考停止してしまうからです。



■世の中は「勝手に注文する冷蔵庫」の実現に向かっている


映画などの動画サービスのみならず、買い物についても特定のサービスに登録している人は多いでしょう。たとえばAmazonは「アマゾンダッシュボタン」機能を発表しました。これは洗剤などの消耗品が切れたら、ダッシュボタンを押すだけで補充できるしくみです。スマートスピーカーに声をかけるだけで、補充発注をしてくれますので非常に便利。いろいろ考えたくない消費者にはぴったりのシステムです。


私はそのうち冷蔵庫がタダで配られる時代になると予想しています。無料冷蔵庫は無数のセンサーとともにネットにつながれ、家族の誰がなにをどの程度消費したかを把握します。このデータがネット配送の業者に共有されると、冷蔵庫のユーザーのもとには、消費したぶんの食品や飲料が補充され、自動的にネット決済が完了するしくみです。


これらは一見、ラクでムダのない買い物のように思えます。しかしコスト意識のまったくない買い方です。気づいたらとても高い値段で買い物を続けていたり、必要なくなったものまで惰性で買い続けていたりするかもしれません。冷蔵庫はあくまでも私の予想ですが、世の中はこんな冷蔵庫を実現するために動いているように私には思えます。


■サブスクリプションには3つのモデルがある


「迷いたくない」「考えたくない」「選択に時間をかけたくない」という消費者が増えると同時に、こうしたサブスクリプションサービス(毎月一定額を支払うことでサービスを受けられるシステム。「Amazonプライム」「Netflix」もこれにあたる)はますます増えると思います。


もちろん以前から定額制サービスはありました。牛乳配達もそうですし、新聞、雑誌の定期購読、DVDの借り放題サービスなどもそうでした。


こうしたサブスクリプションのモデルには3つあります。


①サブスクリプション低……毎月規定回数以上サービスを受ける場合、月額固定で払ったほうが割安になるサービス。たとえば喫茶店で月額3000円を支払うと、一食500円のモーニングが1カ月間、毎朝利用できるなど。


②サブスクリプション中……音楽配信、動画配信サービスなど、使用回数は無制限、商品自体はどんどん新しくなりどんどん増える。常に進化するサービス。


③サブスクリプション高……使用者の好みを分析し、オススメを提案する(貸し出す)サービス。ユーザー個々の嗜好や特性を把握することで、たとえばその人に合った衣類を毎月借り放題で貸し出すサービスなど。



■「迷いたくない」気持ちに刺さったビジネス


サブスクリプションサービスは、当初、①のようなサービスからはじまりました。しかしいまや動画、音楽配信、高級ブランドバッグから衣類、おもちゃ、おむつ、家具、家電、飲食店、食材、コンタクトレンズ、クルマ、バイクなどなど、ありとあらゆるものを扱うサービスが存在します。


そこにはモノは所有するのではなく一時利用をしたり、他人と共有したりするようになったという背景があるように思います。むかしは多くのモノをもつ人が金持ちの象徴でした。でもいまは収納する場所もないし、使いたいときだけあればいいというながれに変わり、多くの人がモノを買わなくなったのです。


サブスクリプションサービスの流行は、私なりに言うと、消費者の「迷いたくない」「決められない」という悩みの解決をはかった点にその勝因があったように思います。「迷うのはやめて、ぜんぶ選択してみたら?(でも毎月定額のお金はちょうだいね)」というビジネスです。


このサブスクリプションサービスの支払いはクレジットカードなどで定額自動課金されるのが一般的です。毎月のようにクレジットカード番号を訊いていたのでは、なかなか継続してもらえませんからね。


そして一度登録すると、退会するまで毎月、利用料金が自動的に引き落とされます。そのため、使わなくなったサービスに対しても、ずるずると払い続ける人が少なくありません。


サブスクリプションサービスの必要性は、加入前はもちろん、加入後も「実は損をしていないか」を常にチェックすることが重要です。方法は簡単、「1回ごとにお金を払う場合」と「月額固定で払った場合」と、どちらがコストが安いかを比較するだけです。


■音楽配信サービスでCD代が激減した


私は音楽が趣味で、音楽評なども書いています。ですので、1カ月に相当数の音源を買っていました。それが月に約1000円で聴き放題の「AppleMusic」や「Spotify」などの無制限音楽配信サービスに加入した途端、私の音楽支出費用は激減しました。


ただそこにはデメリットもあります。それはサービスをやめるとこれまで聴いていた楽曲が聴けなくなることです。でも半永久的に聴けるCDを購入したとしても、私は10年も前に買った音源を聴きません。ですから途中でサービスを退会して音源が消えても、それほど不都合はありません。そこで「コスト」と「リターン」を考えた結果、このまま継続するべきだと判断しました。


また、私は仕事柄、定期的にビジネス系のドキュメンタリー作品も、レンタル(購入)、あるいは映画館で観覧したりしてきました。これも「Netflix」に加入することで費用が激減しました。


現時点では存在しませんが、もしも月額10万円で書店の本を無制限で買えるサービスがあれば絶対に加入します。現在、仕事の専門書などで月20万円くらいは書籍を買っているためです。



■「面白い」けれど、活用しなかったサービス


一方、損をしてすぐに退会したサブスクリプションサービスもあります。ブランド品を定期貸し出ししてくれるサービスです。これはほとんど活用しないままやめました。ある方に勧められて加入したのですが、私はそのような高級なファッションに興味がなかったためです。ここではかなりのお金をムダにしました。


知人に頼まれてサブスクリプションの調査サービスに加入したこともあります。月額5万円を支払えば、ビジネスにまつわるさまざまな市場調査をしてくれるというサービスです。たとえば「日本でアダルトショップは何店あるか」「タイの靴下市場は何億バーツ規模か」などです。最初は面白がって依頼しましたが、そのうちお金を払うだけになって、結局はやめました。その他「面白い」とは思ったものの、結局、活用しなかったサブスクリプションサービスには、以下のようなものがありました。


・特定の飲食店でランチが食べられるもの

・特定のカフェでコーヒーをもち帰れるもの

・居住地を定期的に変更できるもの

・医師に健康問題を相談できるもの

・観光地に何度も入場できるもの

■加入前に「使用頻度」を確かめる


トクだったものと、払い損になったものの違いは使用回数です。サブスクリプションサービスは、使用するほどもとが取れます。またサービスによっては利用頻度が高いほど、提供側がこちらを理解し、深いサービスを提供してくれるようになりました。




坂口孝則『日本人の給料はなぜこんなに安いのか 生活の中にある「コスト」と「リターン」の経済学』(SB新書)

ですのでサブスクリプションサービスをコストパフォーマンスよく使いたいなら、加入前に使用頻度を確認しましょう。使いはじめてから使用頻度が低いとわかったらただちに停止することです。「そのうち使うようになる」ことはまずありません。再び必要になったら、改めて加入すればいいのです。特定の期間継続しないと違約金を払わなければならない場合もありますが、それを払ってでも即時停止したほうが安上がりになることは多いものです。


「迷いたくない、を解消するためにお金を使わせる」という観点からしても、その他の面からしても、サブスクリプションサービスは私たちの思考停止を招きやすいサービスです。効率のよい「コスト」と「リターン」を考えるなら、クレジットカードの明細を定期的に見直す時間をとり、「不要だと思ったらすぐやめる」。これがサブスクリプションを使いこなすコツだと思います。



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坂口 孝則(さかぐち・たかのり)

調達・購買コンサルタント

未来調達研究所株式会社取締役。講演家。2001年、大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。2012年、未来調達研究所株式会社取締役就任。製造業を中心としたコンサルティングを行う。『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『1円家電のカラクリ0円iPhoneの正体』(すべて幻冬舎新書)、『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。』(幻冬舎)など著書多数。

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(調達・購買コンサルタント 坂口 孝則)

プレジデント社

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