三菱ふそうスーパーグレートにレベル2搭載。ニッポンの物流に大革命を起こす「自動運転」大型トラック最前線

1月21日(火)11時50分 週プレNEWS

(右から)三菱ふそうトラック・バス、恩田実氏(トラック・バス開発本部エンタイヤビークル開発統括部長)と小沢コージ
(右から)三菱ふそうトラック・バス、恩田実氏(トラック・バス開発本部エンタイヤビークル開発統括部長)と小沢コージ

ニッポンで初めて高速道路で自動運転ができる大型トラックが昨年10月に登場し、トラックドライバーの負担軽減につながると注目を集めている。

そこで、自動車ジャーナリストの小沢コージが、開発トップである三菱ふそうトラック・バス、恩田実氏(トラック・バス開発本部エンタイヤビークル開発統括部長)を直撃。大型トラックにおける自動運転の現在地、そして未来を聞いた。

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──昨年10月にニッポンの大型トラックとして初めて、三菱ふそうのスーパーグレートにレベル2の運転支援技術が搭載されました! でも、正直遅くないですか。というのも日本はすでに16年11月以降に生産される大型トラックの新型車に、被害軽減ブレーキ装着が義務化されています。この法制化は乗用車よりも早かったじゃないですか。

恩田 確かに、単純にレベル2搭載の早さだと、一昨年発売されたダイムラーの大型トラック「アクトロス」が世界で一番早いのですが、それでもメルセデスやテスラなどの乗用車よりは遅いです。

──トラックは一台当たりの単価は高いでしょうし、仕事で使うから値段の張るハイテクを入れやすいはず。私はてっきり自動運転の技術は商用トラックから入るものだと勝手に思っていました。

恩田 実はトラックには特有の問題があるんです。

──大きくて重いからとか?

恩田 まさにそのとおりで、車線からハミ出さずに走らせるだけで大変。車線の幅はたいてい3.2mなんですが、乗用車の横幅は大きくても2mぐらい。しかし、大型トラックの場合2.5mもある。つまり左右の余裕が70㎝ぐらいしかないんです。

──車幅ギリ!

恩田 さらに運転してみるとわかりますが、トラックは動きが緩慢。逆に機敏にすると運転していて疲れてしまうんです。

──つまり、おデブちゃんであるトラックは機敏な動きが苦手だと。

恩田 加えて、トラックにはフル積載から空荷の状態まである。特に大型トラックの場合、最大25tから12tまで増減。運動性能がとんでもなく変化する乗り物なのです。ブレーキひとつとっても制動距離が大きく変わるのです。

──当然制御は難しくなる。

恩田 ええ。それから根本的に乗用車のほうが販売台数が圧倒的に多い。例えば人気車種は日本で年間10万台以上売れますが、スーパーグレートはせいぜい1万台です。

──圧倒的にサンプル数が少なく、実証が難しいと。

恩田 はい。何より乗用車の場合、装備の導入をオーナーさんの感情で決められます。高いか安いか以上に「楽しさ」とか「見え」で装着できる。ところが、トラックやバスは基本的に会社などの所有物なので経済合理性に左右される。

──なるほど。ちなみに乗用車界では最低でも単眼カメラひとつとミリ波レーダーひとつの組み合わせでアクセル、ブレーキ、ステアリングのレベル2運転支援ができる時代です。トラックはどうです?

恩田 原則的には同じです。ただ、トラックは基本ステアリングを人の手でしか切れない構造になっているので、それをモーターでアシストしてあげるような機構をつけなければいけません。

──乗用車みたいなパワステとは根本的に違うと。

恩田 大きく違います。大型トラックは前軸だけで10t近くあって重いし、最低10年は稼働できないといけない。一台当たりの平均走行距離は10年100万km以上なんです。

──スゲェー。耐久性のレベルもヒト桁違うんだ! で、結局スーパーグレートはどう問題を解決したんスか。

恩田 やはり走り込みです。世界で500万km、日本で100万kmぐらい走って、レベル2に求められるシナリオ、車線が白線だったり破線だったり、いろんな場合を想定してチューニングしました。

──結局は人手だと。ところで今回レベル2相当の高度運転支援機能「アクティブ・ドライブ・アシスト」は機能単体で約16万円と相当に安い。スーパーグレートは一台2161万6100円ですが、みんな装着する気がします。

恩田 そこが最も難しいんです。ドライバーはもちろん、物流会社ごとに異なる安全思想があり、MT車にこだわりを持つ会社もある。また、オートクルーズ機能ひとつ取ってもアレを負担軽減と考えるところもあれば、「ドライバーが注意散漫になるから使わせない」と考える会社も。

開発を統括した恩田氏は、「今後はレベル4の自動運転技術を目指し開発を続けていきます」ときっぱり
開発を統括した恩田氏は、「今後はレベル4の自動運転技術を目指し開発を続けていきます」ときっぱり

──しかし、物流ってもはや国家的なプロジェクトでは?

恩田 まさにそのとおりです。今後、物流が日本経済のアキレス腱になるともいわれています。コンビニの数は多いですし、生鮮食料品も増えています。Amazonさんや楽天さんは売り場やスマホアプリをネットワーク化していて決済がどんどん速くなっている。その一方で物流がアナログのままでは構造的に追いつけるはずがない。

──プロドライバー不足も聞きますし、ドライバーの高齢化はどこも深刻。都内のタクシーなんて65歳以上が多いんですよね。

恩田 ドライバー不足と高齢化は深刻で、私の見た資料では今の求人倍率は2.8倍とほぼ3倍です。

──もはや「待ったなし!」の状況です。国が思い切った手を打つって話はない?

恩田 現在はご存じレベル2であり、高度運転支援の段階。この後はトラック特有の巻き込み防止センシングなどを充実させていきます。結局、自動運転で重要なのは行き先をどうやってガイドしていくかと、どこにもぶつからない自律走行ですよ。

特に周囲をきちんとセンシングし、安全を確保する技術が確立できないとダメ。ですから、私どもはこれからレベル2を進化させ、レベル3をスキップし、完全にクルマ側が責任を負うレベル4を目指して開発を進めたい。

大型トラックで国内初の運転自動化レベル2を実現。東京モーターショーに出展された
大型トラックで国内初の運転自動化レベル2を実現。東京モーターショーに出展された

──レベル3をスキップ?

恩田 レベル3はドライバーが常に運転責任を機械側から受け渡されていることを前提にしており、結局はドライバーがずっと必要なわけで、経済合理性がありません。というのも、トラック一台の運用にかかるコストのうち、全体の約40%がドライバー代です。

ドライバー代のコストがまったく下がらないクルマに対し、お客さまが予算を割くかと考えると疑問です。もちろん最初の導入は乗用車からだとは思いますが、技術的になんらかのレベルに達したとき、一気に自動化が進むのは商用車だと思っています。

──将来トラックやバスが自動化される時代は必ず来るということ?

恩田 そのとおりです。

取材・文/小沢コージ 撮影/本田雄士

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