自分の当たり前を疑う。人口減少の「成熟社会」で求められる思考法

1月23日(木)6時30分 lifehacker

“成熟社会”ということばには、あまり聞き馴染みがないかもしれません。

しかし、あと数年もすれば当たり前のように使われるようになるだろうと、『成熟社会のビジネスシフト 10年後も会社が続くために』(並木将央 著、総合法令出版)の著者は言います。

コンサルタントや大学講師として、人口が減少していく成熟社会で会社経営になにが起きているのかを伝えているという人物。

半導体会社の研究員だったころ、「このまま技術が向上して画質や音声がより高品質になったとき、人はそれを知覚できるだろうか。知覚できたとして、それに高いお金を払うだろうか」と感じたことが、成熟社会を考えるきっかけになったのだそうです。

この本では、戦後からバブルを経て人口増加が止まる2008年くらいまでを成長社会、以降を成熟社会と定義しています。

成熟社会では技術発達がさらに進み、情報も氾濫し、人口減少が進みます。それによって変わるビジネス環境と経営の対処法をまとめました。(「まえがき」より)

きょうは第8章「すべての歯車をかみ合わせるために」内の「ものの見方を変える」に焦点を当ててみることにしましょう。

それは、これからの時代を生き抜くために重要なポイントだというのです。


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ものの見方を変える著者は成熟社会に必要なものの見方を“相反する思考法”と呼んでいるそうです。それは、“二律背反”“万物流転”“矛盾統合”の3つを統合したもの。

ひとつ目の二律背反には、「すべてのものは2つに分かれる」という意味があります。

つまり、ある物事を一方向からしか見ていない人に対し、「もうひとつの見方があるよ」と融くことができるかどうか。

コップに半分入った水を見て、半分も「ある」と見る人がいれば、半分しか「ない」と見る人もいます。物事を片方の側面でしか見ることができなければ、成熟社会では立ち行かなくなります。

物事には必ず良い面と悪い面の両方があり、その二つの見方が同時にできることが重要なのです。(226〜227ページより)

二つ目の万物流転は、「物事はひとつの状態には定まらない。常に変化し、循環している」と意識すること。

よい面も悪い面もある、中庸もあるし、真ん中もある。そうした考え方をし、思考を偏らせず、流れていくように両曲面へと変化できることだというわけです。

自然界にあるものは水の流れも、太陽の動きも、すべて循環しています。読者のみなさんは「夜明けは明るいのか暗いのか」と聞かれたら何と答えるでしょうか。

夜中と比べたら明るいけれど、昼間と比べたら暗い。夜明け自体は明るくもあり暗くもある。そもそもいつが夜明けだという明確な定義すらないのです。

人の意見も同じで、完全に正しい意見はありません。あくまでその時点でジャッジをしているだけなのです。(227ページより)

三つ目の矛盾統合は、「一見対立しているかのような物事を統合すること」。

たとえば少年犯罪の問題を考えたとき、二律背反で考えれば「少年犯罪には厳罰を」と「少年犯罪には更生を」という対立意見があることがわかるでしょう。

万物流転の考え方をすれば、どちらが正しいとも言えないことがわかります。さらにそこからもう一歩進むと、この矛盾を統合することが可能になります。

少年犯罪の話でいえば、どちらの考え方も、目標は「少年犯罪をなくしたい、または少年犯罪をつくらない」ということ。

つまり、お互いに反しているものであっても、矛盾は統合されていくわけです。

表裏がつなぎ目なくつながる、メビウスの輪というものがあります。そこでは、表側、裏側をそれぞれ反対方向に歩いていけば、必ず相手にぶつかることになります。

そのとき、「自分は面を歩いていた」「裏を歩いていた」と主張しても、そもそも表と裏の区別がないのだから意味がないわけです。

つまり重要なのは、矛盾を受け入れ、「矛盾が生じているということは、区別のないものである」ということを認識すること。

そうすれば、お互いの主張は意味をなさないものだということがわかるのです。

「よい」「悪い」だけでは判断できない最近、事業承継についてのご相談を受けることが多く、そこでもこの相反する思考法を使います。先代と次代で互いに片方しか見えていないか、対立をしていることが多い。

そこで、それぞれに二律背反をつくり、気づきを与えながら、万物流転の一部分でしかないことを図示化していきます。

そして最後は「どちらも会社を良くしたいのですよね」という形で矛盾統合をしていきます。(228ページより)

さらに言えば、相反する思考法によって矛盾統合すると、その結果に対してまた二律背反が適用され、もう片方が生まれることに。

つまり、思考の次元が以前よりも上がるということです。

「よい」「悪い」だけで判断し、そこにとらわれてしまうと、ビジネスを昇華させることは不可能。

相反する思考法は、成熟社会を生き抜く経営者には必ず身につけてほしい考え方だといいます。

日本はもともと、無情を統合しているような国だと著者は指摘しています。古来、800万の神が崇められてきたことからもわかるように、日本人はそもそも多様性を認めており、小さなコロニーをつくることが得意な民族だというのです。

たしかに、異国からラーメンが入ってくれば、さまざまな味のラーメンをつくってきました。またカレーが入れば、スパイスの魅力を生かしつつ、自分たちに合う味につくり変えてきました。

そうした風潮のなかで、西洋の考え方である善悪二元論が馴染まないのは必然だということ。

それは、ビジネスに当てはめてみるとよくわかることでもあります。

決断を先延ばしにし、微妙なすり合わせを得意とする日本人には、相反する考え方を包んでしまうような矛盾統合が適しているということ。

つまり、そこからイノベーションが起こると考えていいと著者は言うのです。

自分にとっての「当たり前」を疑う相反する思考法のベースにあるのは、自分にとっての「当たり前」を疑う意識。

商品開発やビジネスメイキングをしようとするときだけに限らず、普段の生活から常に、「いま自分の目の前に見えているもの」に対して疑問を持つことが大切だということです。

もちろん大変はことではありますが、それを繰り返していけば、自分にとっての当たり前が変わる瞬間が訪れるのだといいます。

人が当たり前と思っていることに対し、自分だけが当たり前じゃないと思い、気づく。それがイノベーションの種になります。

常に自分の主観を疑い、正しいものは世の中にないと考えていれば、別の見方ができます。(231ページより)

もちろんビジネスにおいても、人がやっていないことをやるのがポイント。そのために、当たり前からの脱却が必要だということです。

相反する思考法を適用し、自分の考え方を再度見なおしてみる。それが、成熟社会で求められるスキルだというのです。(226ページより)


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成長社会では、ジグソーパズルのように足りないピースを埋めるだけで問題は解決したもの。パズルは平面で、問題の所在も明らかだったわけです。

一方、ルービックキューブのように次元が上がり、ひとつの面だけ考えていても問題を解くことができないのが成熟社会。

したがって、すべての面を同時に意識しながら手を打っていく必要があるということ。

そう訴える本書は、これからのビジネスのあり方を明確に映し出しているといえます。

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Photo: 印南敦史

Source: 総合法令出版

lifehacker

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