一体何をやった? 今さら聞けないカルロス・ゴーン事件の真相

1月24日(木)7時0分 NEWSポストセブン

ゴーン被告は現在も容疑を否認(時事通信社)

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 熱が出た、雑誌を読んだ、寒いと言った、やせて頬がこけた…今、日本一注目されている“塀の中の男”カルロス・ゴーン被告。どうやら“何かのズル“をしたようなのだが、それがなぜ一国を揺るがすような大事件になったのか。あなたの「今さら聞けない」に答えます。


 この1月18日で、カルロス・ゴーン被告(64才)の逮捕から2か月が経った。連日、新聞やテレビでも飽きるほどに報じられてもいる。それなのに、いまだに「なぜゴーンさんが捕まっているのか、さっぱりわからない」(40代主婦)という人も多いはずだ。


 事件の核心がなぜわかりにくいのか。それには、ちゃんとした理由がある。1つは、ゴーン被告の不正の疑惑が全世界にまたがっていること。


「ゴーン氏はブラジル生まれ、レバノン育ちなので『二重国籍』でした。さらに、当時はフランス国営だった自動車会社『ルノー』の重役に就任するために、フランス国籍も取得。その上、税金の安いオランダに住所を置いているとも報じられました。もちろん日本にも自宅がある。サウジアラビア人の知人の会社に不正にお金を渡した疑惑もあります。


 それらの場所をグルグルと回るお金の流れを完全に把握することは、日本の国家権力である検察でも、至難の業なのです」(全国紙社会部記者)


 もう1つは、報道の問題もある。経済事件に詳しいジャーナリストの伊藤博敏さんが解説する。


「ゴーン氏を逮捕した検察が、日本の新聞やテレビなどのメディアに“こんな不正がある”と都合のいい情報を小出しにしているからわかりにくくなる。さらに言えば、メディアは検察から情報が欲しいので、検察に不利になるような情報は取材で掴んだとしても報じません。そんな断片的で、偏ったニュースばかりなので、事件がよくわからないのも、無理はありません」


◆38度の熱で取り調べが中止に


 ゴーン被告と日産の関係は1999年にさかのぼる。当時の日産は赤字が膨らみ、ほぼ潰れかかっている状態。そんな窮地の日産を救ったのが、当時はルノー副社長で、日産COOも兼任したゴーン被告だった。


「ゴーン氏は今、約3畳の東京拘置所の独房にいます。ベッドのある部屋に移してもらうなど、“特別待遇”されてはいるものの、毎日取り調べが続いています。日中は暖房が切られるため、冬の拘置所はとにかく寒い。9日夜には38度の熱を出したそうです」(前出・記者)


 保釈を申請するも裁判所に却下され、年末年始も拘置所で過ごした。大みそかには、カップ麺タイプのそばが出され、正月にはおせちが配られたという。


「食事や取り調べの時間以外はフランス大使館員や弁護士と面会をしつつ、『ジャパンタイムズ』など英語の本や雑誌を読みながら過ごしているそうです。家族との面会は、まだ果たせていないと聞きます」(前出・記者)


 それでは、ゴーン被告がやった「悪いこと」とは何だったのか。前出の伊藤さんが解説する。


「ゴーン氏の罪は大きく分けて2つあります。1つは、金融商品取引法違反。役員報酬を実際にもらった額よりも少なく日産の株主に報告したことが、『有価証券報告書の虚偽記載』に当たります。


 もう1つは、特別背任罪。私的な投資で生じた損失を、日産のお金から補填するなどして会社に損害を与えた、いわゆる“会社の私物化”です」



 1つ目は、2010年からの5年間に100億円弱の報酬を日産から受け取っていたにもかかわらず、日産の「有価証券報告書」に50億円弱と虚偽の記載をし、提出したことが問題となっている。


 2つ目の“会社の私物化”とは、2008年にゴーン被告の私的な投資で生じた約18億5000万円の損失を、日産に付け替えたというものだ。さらに、この取引に協力したサウジアラビア人の会社に、日産の子会社から約16億円を振り込ませたという疑いがかけられている。


 ゴーン被告は、2017年まで日産の社長を務め、以降も会長の座に君臨してきた。でも、中小企業の社長が役員報酬が少なく見えるように細工したり、会社のお金で高級車を買ったり…というのはよく聞く話。なぜ大事件に発展してしまったのか。伊藤さんが解説する。


「日産は東証一部に上場する大企業です。株式会社であるため、何万人もの株主たちの投資によって成り立っています。彼らが投資をするときに参考にするのが『有価証券報告書』。そのため、報告書はすべてオープンに、偽りなく記載して提出しなければならないと法律で義務付けられていて、虚偽記載は刑事罰の対象になるのです」


 また、伊藤さんは「逮捕の背景には、日本とフランスの自動車産業をめぐる国家レベルの“綱引き”がある」と指摘する。


「ビジネス上、ルノーと日産は対等関係にありますが、フランスのマクロン大統領は、日産をルノーの完全な子会社にすることを目論見ました。ルノーの筆頭株主はフランス政府であるため、絶大な影響力があるのです。マクロン氏は日産の自動車工場をフランスに造ることで雇用を生み出し、下落した支持率を回復させたかったんでしょう」


 わが社がフランスに乗っ取られてしまう──危機的状況を察知し、動いたのが日産幹部だった。


「西川廣人社長以下、日産のプロパー社員たちが反抗。ゴーン氏の不正を告発し、東京地検特捜部に訴えました。地検は『司法取引制度』を適用。本来ならゴーン氏の不正に気づけず協力した日産幹部の責任も問われるはずですが、日産の刑事処分を軽くしてもらう代わりに、幹部が捜査に協力するという約束が交わされた。日本の大企業である日産が、フランスの企業になることを避ける政治的な目的で行われた “国策捜査”とも考えられます」(伊藤さん)


 ゴーン被告の経営手腕は誰もが認めるところだ。今後、日産はどうなるのか。


「経営がクリーンになることは間違いない。ただ、大規模な工場の閉鎖やブランドイメージの一新などさまざまな方法で経営を回復したゴーン氏がいなくなったことで、収益を上げられなくなる可能性も示唆されています」(前出・記者)


 それどころか、日産はゴーン被告から損害賠償請求される可能性すらあるという。


「裁判所から保釈請求が却下された上、ゴーン氏は容疑を否認しているため、あと数か月はこのまま拘留される見込みです。ですが、自己主張の強い人であるため、保釈されたら記者会見を開いて、法的な反撃に出ると見込まれています」(前出・記者)


※女性セブン2019年2月7日号

NEWSポストセブン

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