超強気!? なぜワークマンは楽天から撤退するのか——「店舗受取」の勝算とは

1月28日(火)17時0分 文春オンライン

 ワークマンが2月末日で楽天から撤退する。


 楽天が出店者に事実上の送料負担を強いる問題と時期が重なったこともあり、今後、楽天から続々と退店する店舗が増えていくのではないかという憶測が出店者の間でも飛び交っている。


 しかし、同時に楽天から飛び出すワークマンが、自社でネット通販を運営できるのか疑問視する声も上がっている。手数料や広告費が発生するとはいえ、楽天ほど集客力のあるショッピングモールは他にない。


 果たして楽天から撤退したワークマンに勝ち目はあるのか——。楽天の送料無料問題も含めて、ワークマンの“今後”を検証してみたい。



ワークマン楽天市場店に掲載された閉店のお知らせ


売上が45%増、営業利益も55%増——絶好調の理由は?


 ワークマンが楽天の撤退を決めた理由は、業績が絶好調だという点が大きい。作業着の製造と販売を手掛けるワークマンは、5年ほど前からアウトドアウエアやスポーツウエアの業界に進出。海外の協力工場で高品質で低価格の商品を作る技術を生かして、女性客や若者をターゲットにしたコスパの高い商品を次々に発売していった。


 路面店を中心に展開していたワークマンは、2018年に一般向けの商品をラインナップした「ワークマンプラス」をららぽーと立川立飛にオープン。アウトドアウエア3900円、スポーツウエア1900円、軽量シューズ980円など、衝撃的な低価格を打ち出して、一気に消費者の心を鷲掴みにしていった。作業着メーカーが作った商品だけあって丈夫さと機能性は折り紙付き。そこにスタイリッシュなデザインを取り入れたことで、ワークマンの利用客は老若男女問わず爆発的に増えていった。



 ワークマンが2019年11月に発表した2020年3月期第二四半期の決算説明会によると、売上高は418億8600万円で前年同月比45.2%増。営業利益も55.1%増と、業績不振にあえぐアパレル業界において、桁違いの伸び率を見せている。増税直後の2019年10月の売上も、前年比30.1%増と、買い控えとは無縁の業績を叩き出している。


 店舗数も854店舗(2019年10月末現在)から2025年までには1000店舗にまで増やすという。2019年8月現在の国内のユニクロの店舗数が817店舗という状況を考えれば、いかにワークマンの業績が好調であるかが理解できるだろう。



楽天市場が「送料無料」を押し付けたから?


 この“超”がつくほど業績が絶好調だという事情もあって、ワークマンは楽天からの撤退を決めたと思われる。ワークマンのプレスリリースによると、ネット通販における楽天の売上の比率は2割程度。作業服だけの品揃えであれば、ワークマン以外のメーカーの選択肢も出てくるが、一般顧客向けの品揃えが充実し「ワークマンの商品が欲しい」という指名買いが増えているので、この2割の売上は自社サイトで取り返せるという読みがあったに違いない。


 一方、一部のメディア等では「ワークマンが撤退したのは楽天市場が送料無料を押し付けたからだ」という論調が出ている。個人的には、これが「きっかけ」にはなったと思うが、大きな理由ではないように思われる。


 楽天は3月18日より3980円以上を購入した場合(沖縄や離島などを除く)、サイトの表示を一律で「送料無料」に変更する方針を打ち出し、送料を出店者負担とする。これに対し、一部の出店者からは「一方的な負担の押しつけ」だと反発も起きている。



勝算は「ネット通販の67%を占める“店舗受取”」


 しかし、ワークマンのプレスリリースによると、現在、ネット通販の67%は店舗受取となっており、実のところ送料負担の影響を大きく受けるわけではない。先述したようにワークマンのネット通販において、楽天の売上は2割しか占めていない。楽天が3980円以上を送料無料にしたところで、現状自社ECサイトでは1万円以上を送料無料として打ち出しているワークマンにとって、そこまで大きく利益を削ることにはならないはずである。


 また、楽天も楽天物流を展開して、送料を抑える施策を打ち出している。発送業務をアウトソーシングすれば、送料が安い軽量なアパレル用品を取り扱うワークマンは、楽天を撤退しなくても十分利益を確保できるはずだ。


 そのような事情を考えると、ワークマンには楽天を撤退して送料無料化を回避することよりも、もっと大きな“勝算”があるのではないかと思われる。それが先述したワークマンのネット通販の67%を占める「店舗受取」である。


ユニクロでも「店舗受取」が44%


 実は、ネットで注文をして、実店舗で受け取るC&C(クリック・アンド・コレクト)という消費の動きは、ネット通販業界において大きなトレンドになっている。アメリカの大手小売業のウォルマートはこの戦略で、年率40%でネット通販事業の売上を伸ばしており、株価では2019年前半の6ヶ月でAmazonが約6%の上昇にとどまったのに対して、ウォルマートは約15%上昇という好調ぶりを見せているのである。



 ZARAを展開するインディテックスも2018年にC&Cにシフト。EC専用倉庫の拡張をやめて店舗在庫を充実させ、ネット通販の注文者に対して商品を店舗で渡したり、店舗から顧客に直接出荷したりする体制に切り替えた。その結果、ECだけで購入していた顧客が来店を契機に店でも購入してくれるようになり、店舗売上も上向いている。


 ユニクロもネット通販の売上の44%が店舗受取となっており、送料が高騰する日本では、今後、C&Cの比率が高まっていく可能性は高いといえる。特に、店舗数を拡大していくワークマンにとって、高い送料を払って低価格の商品を購入してもらうよりも、店舗にお客様に足を運んでもらって、ついで買いをしてもらったほうが、さらなる売上増に繋がるといえる。フランチャイズの比率が9割を超えるワークマンにとって、C&Cは実店舗への誘導にもなるので、加盟店舗への集客手段として、ネット通販を利用したいという狙いもあるのかもしれない。



楽天からネットショップの撤退は続くのか?


 好調な業績とC&Cの強化によって、ワークマンは楽天を飛び出しても十分にやっていけると思われる。しかし、だからといって、楽天から次々とネットショップが撤退していくという流れになるとは思えない。


 現在、ネット業界は人手不足が深刻な問題となっており、人件費がここ数年で急激に高騰している。その影響でネット系のサービス料金が値上げの一途を辿っており、仮に自社サイトで楽天と同じように検索エンジン対策とネット広告を展開するのであれば、取り扱う商材によって差はあるものの、人件費と広告費の諸費用で最低でも月に200万〜300万円の費用が発生してしまう。中小零細規模のネットショップが、楽天から飛び出してネット通販を続けることは、現実的ではないといえる。


 売上の20%ぐらいの手数料と広告費を支払ってさえいれば、そこそこの収益をあげることができるのが楽天の魅力でもある。送料を一部負担したとしても、小さなネットショップは楽天にとどまっていたほうが、確実に売上を作ることができるだろう。


 楽天から飛び出すワークマンに勝ち目はあるが、他のネットショップが楽天から飛び出してうまくいくかといえば、そんな生やさしい話ではないということは、理解しておいたほうがいいだろう。



(竹内 謙礼)

文春オンライン

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