朝鮮動乱で日本でも民間機撃墜の危険性大

1月28日(火)6時0分 JBpress

イランから弾道ミサイル攻撃を受けたイラクにある米軍の駐留施設(写真:ロイター/アフロ)

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 米軍が、イラン革命防衛隊司令官を殺害し、その5日後にはイランが、在イラク米軍基地に弾道ミサイル攻撃でやり返した。

 その混乱の直後、ウクライナの航空機が地対空ミサイルで撃墜された。

 この時、メディアの関心事項は、「イランが、ミサイルでウクライナ機を撃墜したのかどうか、そしてこれを認めるかどうか」がだった。

 だが、この事態で最も注目すべきことは、ミサイルを撃ち合えば、たったの5日間という短い期間で、戦争へと拡大するという危機が発生したことだ。

 本格的な戦争に突入するのであれば、その準備に半年〜数年はかかる。

 今回、イラン軍は、米軍基地に弾道ミサイルを撃ち込んだために、イラン国内に向けられる米軍の更なる反撃、早ければその日の内に実施されることを予想して、慌てて本格的な戦争準備を行わなければならなかった。

 米軍の早い反撃を考えると、その準備期間は、5日しかなかったのだ。

 イラン軍が民間機を撃墜してしまったのは、イランが慌てて米軍の反撃の備えなければならない、戦争に発展するかもしれないための準備が不十分であったことなどの原因が重なったからであろう。

 では、短期間で全面戦争に発展しそうな事態が、日本周辺で発生する可能性はあるのだろうか。

 現実として「朝鮮半島問題で生起する」可能性は十分ある。

 米国とイランの間でたったの5日で戦争に拡大しそうになったことを、朝鮮半島問題にそっくりそのまま移し替えてみてよい。

 もしも、日本の周辺で軍事的な一触即発不測事態が発生してから、短時間のうちに、日本は外交交渉を行いつつも、侵攻に対応できる準備を済々と実施できるのだろうか。

 私は、ほとんどの日本国民が、突然戦争状態になる場合があることを考えてはいないこと、日本国内に多くの制約があることから、かなりの混乱状態に陥るのではないかと心配している。

 イランの防空部隊の混乱どころではないだろう。


極度の緊張状態が錯誤招く

 イランでは、現場の地対空ミサイル部隊の指揮官や操作員が、自国から飛び立つ航空機をレーダースコープに映る目標を米軍戦闘機と見誤って、ミサイルを発射した可能性がある。

 民間航空機と米軍戦闘機の飛行との違いが分からなかったこともある。

 イラン兵は、近代兵器を使いこなすための教育訓練が不足していたようだ。

 近代兵器を使いこなすには、教育機関を整えて、優秀な人材を集め、彼らに少なくとも半年から1年以上の教育を行うことが必要だ。

 戦争に突入してしまう可能性がある場合には、錯誤が生じやすい。

 攻撃を受けるかもしれない恐怖、攻撃を受ける前に撃墜しなければならない使命感、そのうえに兵器の操作の未熟、睡眠不足などが重なって誤ったのかもしれない。

 命の危険に晒されると、とんでもない過ちを犯す場合がある。普段であれば、冷静に判断できるのだが、考えられない錯誤が起って発射ボタンを押した可能性がある。


総合作戦規定が必要な近代戦

 地対空ミサイル部隊は、「ミサイルを発射するかどうか」を数秒内に判断しなければならない。

 なぜなら、敵戦闘機の速度は速く、さらに、100キロ以上も離れたところから対地ミサイルを発射するので、地対空ミサイルの発射が遅れれば、友軍に大きな被害が出るためだ。

 戦争がすでに開始されていれば、ミサイル発射の決断は難しいことではないが、このミサイルの発射が、戦争に発展するかもしれないという1発目の発射の決断は、極めて難しい。

 現場の指揮官には、恐ろしいほどの恐怖感がある。

 戦争に発展する可能性があるこの1発の発射を命じるのは、あらゆる情報が入ってくる司令部の司令官でなければならない。

 しかし、イラン防空部隊によるミサイル発射はそうではなく、現場の防空隊長の決心に委ねられていて、その決心が誤ったものと考えられる。

 米国軍とイラン軍の間で、米軍による巡航ミサイル発射や戦闘機による対地攻撃が差し迫っている時に、民間機の飛行を許可するか、禁止するか、あるいは、飛行禁止空域を設定するかしなければならない。

 イラン政府は決定を有事の法制などで定めていたのだろうか。

 イランは、緊張状態の時に、イランとイラクの国境付近を飛行する可能性がある航空機の飛行を許可していた。

 イランは、米軍による突然の司令官殺害に対するやり返しの弾道ミサイル攻撃を行った時には、まだ国家内のあらゆる戦争準備ができていなかった。

 航空機の残骸と一緒に映っていたとされるミサイルの弾頭部分の写真は、明らかにロシア製の「SA-15ガントレット」短距離地対空ミサイルだ。

 ロシアは、イランに敵戦闘機を撃墜するためだけに輸出供与したものであろう。

 敵味方識別など、イラン国内で使用できる仕様にはなっていなかった。そのために、民間機や戦闘機も撃ち落す、また、友軍相撃の可能性もあった。

 撃墜されたウクライナ機は、陸海空での近代戦の戦争を周到に検討し、準備していない国家の犠牲でもある。


日本にも戦争の危機が迫る

 日本の周辺国を見ると、日本と北朝鮮(以後、北)の間で、不測事態が発生して、短期間のうちに戦争が生起する事態になりかねないことも予想される。

 現実的に予想される事態とは

①米軍が無人機で北の要人をロケット攻撃(斬首作戦など)し、その後、北が在日米軍基地にミサイルを発射する。米軍による航空攻撃と北による弾道ミサイル発射の連鎖反応が起こる。

 この場合、北が韓国ソウルへの砲撃あるいは奇襲的南侵もありうる。

②北の弾道ミサイルが日本列島を越えて、日本の領海付近に落下することが予想された場合には、航空自衛隊の防空の任務を有する司令官は、権限を委任されていて、自ら撃墜を命ずることがある。

 もしも、ミサイルが撃墜されたならば、北は、日本本土へミサイルを撃ち込むと威嚇する。あるいは、威嚇を越えて、通常弾頭のミサイルを日本の首都圏に撃ち込む可能性もある。

 2国間の軍事的緊張は、全面戦争に拡大する恐れが出てくる。

③国籍不明潜水艦が、日本の領海に潜水したまま侵入した場合、自衛隊は攻撃態勢をとり、追跡する。

 不明潜水艦が故障して沈没する、あるいは座礁することもある。この場合、仕返しとして、日本の船舶に魚雷攻撃行うこともある。

④朝鮮半島において、北が突然に奇襲侵攻を開始する可能性がある。これと同時に、日本の本土や日本の民間の船舶、航空機にミサイルが撃ち込まれる可能性がある。

 また、特殊部隊兵が小型潜水艦、半潜水艇、不審船に乗船して、日本海側の海岸に上陸し、関東山地を越え、首都圏に潜入、重要な政治施設・交通インフラなどを攻撃することもある。

 上記の事態は、時間をかけて、徐々に発生することもあるが、実際、今回の事案のように、突発的に発生する場合がある。


小規模な危機でもパニックの危険性

 このような事態が、日本を巻き込んで発生したならば、日本の政府、自衛隊、国民は、戦争の危機意識が欠如していることと、戦争準備ができていないために、大混乱になるであろう。

 日本から飛び立つ航空機を考えただけでも、ウクライナ機のように飛んで行くか、飛行停止になるか、飛行経路を変更するか、決められないで大騒ぎになるのは、目に見えている。

 自衛隊は、実際に戦うための配備に移る。

 敵のミサイル攻撃や特殊部隊の侵攻を予測して、具体的に兵器を配置することになるが、山間部や海岸付近などの私有地に設置するためには、一つひとつ許可が必要になる。

 自衛隊は憲法違反だから、自治体や個人の土地を自衛隊には使わせないという状況も発生する。

 特に、北海道や沖縄では、中国人が、対馬では韓国人が所有する土地がかなりあるが、立ち入りさえも許可しないことが起こり得る。

 イージスアショア配置のことでさえも、地元の理解を得られず、決定していない。

 一部の市民は、ミサイル防衛用のミサイルを配備すると、かえって北から狙われるから反対だと言う。

 突発的な事態が、近い将来に発生する可能性がある。自衛隊は、実際に戦える態勢にはなっていない。兵器を購入し、基地に配備しておけば、日本を防衛できるというものではない。

 国民には、日本の国土で戦いになったことを真剣に考えてほしいと思う。

 国民も、東京を狙って弾道ミサイルが落とされると分かったならば、例えば霞が関や永田町が狙われると分かったならば、国会議員や国の行政機関は、現在の建物に残って仕事はできない。

 国民もどこかに避難しようとするかもしれないが、太平洋戦争当時のように疎開することは不可能だ。

 日本は、このような事態に対応できるための防衛の準備ができているとは思えない。

 現在、最も大きな問題は、多くの憲法学者が自衛隊は憲法違反だと言っていることだ。

 憲法に、国家防衛のための必要最小限の軍事力を保有することを入れ込み、自衛隊の存在を疑義無く認めなければ、自衛隊が日本国内で防衛のために戦おうとしても、多くの制約を受けて行動できない。

 危機事態が突然生起してから、憲法を書き替えようとしても間に合わないのだ。

筆者:西村 金一

JBpress

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