恋愛とセックス抜きの「結婚」で幸せになれたワケ

1月30日(木)6時15分 プレジデント社

エッセイスト 能町みね子さん

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仕事も経済力もあるし、一人暮らしは気楽で快適。でも、死ぬまで独りで生活するのは何だか不安。そんな働く女性も多いはず。「結婚」の二文字が頭をよぎらなくもないが、これからフィーリングの合うパートナーを探し、関係を育み、家族になるプロセスを考えるとハードルが高い。もともと結婚願望が強ければ熱意で挑んでいけるだろうが、そうでもない場合はなおさらである。エッセイストやイラストレーターとして幅広く活躍している能町みね子さんの新刊『結婚の奴』(平凡社)が話題だ。「性的関係と恋愛感情が一切ないゲイの夫(仮)」と同居するに至るまでを綴ったもので、凝り固まった「結婚」のイメージを突き崩してくれる。

■仕事と生活を立て直すために「結婚」を目指した


——結婚の奴』には、ゲイライター、サムソン高橋さん(本書では「夫(仮)」と表記)と、「結婚」と称して同居を始めるまでの過程がその時々の能町さんの心境と共に克明に記されていますね。友人未満の段階から「結婚」を視野に入れてアプローチされています。なかなかできない力技だと思うのですが、どんな想いが能町さんの背中を押したのですか?


深夜3時くらいに仕事がはかどらなかった時に「結婚したい」と思ったことですね。毎日、起きてからお昼くらいまで何もしなくて、午後1時、2時くらいになってから空腹で家を出ていたんです。それからランチを食べて、夕方くらいに少しずつ仕事を始めて。のってくるのが深夜12時くらい。そこから謎の時間帯に突入するんですよね。




エッセイスト 能町みね子さん

私は基本的に喫茶店で仕事をしているので、昼は雑音の中にいるんです。そのほうが集中できるタイプなので、深夜、静かな部屋で1人パソコンに向かっていると、「なんでこんな仕事してるんだろう」ってだんだん内省的になってきちゃって。仕事もはかどらないし、生活リズムも悪化していく。決定的なきっかけというわけではないのですが、そういう日が続いたことが理由です。



■毎月、夫にお給料をお支払い


——ひとり暮らしでメリハリなく仕事をしてしまうというのは、耳が痛いです。そんな生活が続くと健康面も心配ですし、誰かと暮らすことで生活に規律を生むというのはいい考え。でも、いざ変化を起こすとなると、なかなか勇気が要ります。


そこの一歩を踏み出せるかどうかが難しいんでしょうね。私は好奇心もありますし、テンションが上がった時に警戒心のほうを抑えられるというか、勢いで動けるタイプかもしれない。といっても、今の人(サムソンさん)なら「いけるんじゃないか」と思ったからですけどね。サムソンさんが相手でなければ難しかったかもしれない。


——入籍はされていないのですよね?


していません。私は別に籍を入れてもよかったんですけど、向こうが「介護させることになったら申し訳ない」と言ってきたし、私もそれほど入籍へのこだわりはなかったので。


——お二人のお財布は、別々なのですか?


おカネに関しては基本ばらばらなんですけど、月額で生活費を渡しています。向こうも自分の生活費は稼いでいるので、それにプラスして私がある程度渡して、料理などをやってもらっている感じです。どうやり繰りしているのかは全く知りませんが、それが家事のお給料みたいな感じになっていますね。


■結婚願望ゼロの女性も羨む生活


——1人では購入をためらうようなちょっといい食材を買ったり、1人では作らない料理を作ってみたり……それを「効率」と表現されていますが、同居後の能町さんの暮らしの変化が羨(うらや)ましい。私は未婚で、これまで一度も感じたことがないのですが、初めて「結婚もいいな」と思いました。


それはよかったです(笑)。「みんなも結婚したらいいのに」と思いながら書いたわけではないのですが、「結婚したくなった」という感想をいただくことが多くて、「意外とそういう本になったんだな」って、ちょっとビックリ(笑)。2人のほうが都合がいいことって、たくさんあるんですよね。



■「好きではない男の人」が一番気を使わない


——たとえ愛があっても他人と暮らすのは容易ではないと思うのですが、同居人の条件として、ここは譲れないと考えていたポイントはありますか?




能町みね子『結婚の奴』(平凡社)

平凡な言い方になってしまうんですけど、「素が出せること」でした。本にも書いたのですが、これまで恋愛にも挑戦はしてみたんです。でも、私はそういう関係になると全く素が出せなくなってしまう。いろいろな先入観に縛られて、「こうしたほうが彼女らしい」みたいなことばっかり考えてしまう。「嫌われるかもしれない」という思いが先に立つからだと思うんですけど、今回は「嫌われるかもしれない」がないんです。むしろ「別に嫌われてもいいし」くらいの感じなので、取り繕ったり格好つけたりする必要が一切ない。


——「女友達と暮らす」という選択肢はなかったのですか?


それも考えてみたんですけど、女友達だと過剰に遠慮しあってしまう気がしました。恋愛に比べればだいぶ楽なんですけど、それでもちょっと気遣いをして疲れてしまう。「好きではない男の人」というのが、一番気を使わないんですよ。


■羨望の感情も湧かない


——言われてみれば、確かにそうですね。


もちろん女友達でもいろんなパターンがありますけど、お互いにデリカシーを持ってしまうので、だんだん窮屈になってしまいそうな気がする。あと、もし向こうに彼氏や特別な関係性の人ができたときに、心が穏やかというわけにはいかない気がするんですよね。ちょっと羨ましくなっちゃうのは避けられない気がして……。


——本にも書いてらっしゃる「平凡な恋愛・結婚に対するルサンチマン」というやつですね。


そうですね。それが私の中ではきっと消えることがない。でも、ゲイの友達なら、「彼氏ができた」と言われても100%普通に「あ、よかったね」と思えるんですよ。たぶん、嫉妬や羨望の感情がほとんど生まれない。それで「同居を解消しよう」と言われちゃったら、話は変わってくるんですけど。



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能町 みね子(のうまち・みねこ)

エッセイスト

1979年生まれ。北海道生まれ、茨城県牛久市育ち。2006年、イラストエッセイ『オカマだけどOLやってます。』(竹書房)でデビュー。著書に『お家賃ですけど』(文春文庫)、『ときめかない日記』(幻冬舎文庫)、『私以外みんな不潔』(幻冬舎)などがある。活字媒体のみならず、テレビ・ラジオと幅広く活躍中。現在、ゲイライター・サムソン高橋さんと同居している。

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(エッセイスト 能町 みね子 構成=新田 理恵)

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