色気溢れる新マツダ・アクセラを僕がベタ褒めしてしまう理由

2月3日(日)11時41分 Forbes JAPAN

マツダという自動車メーカーは、ブランドを再構築するのが好きらしい。

他のカーメーカーと違って、広島に拠点を置くというアイデンティティーを強く打ち出すマツダは、2002年から2015年の間に2回以上、そのブランドを再構築してきた。

2002年、マツダ・ブランドの再活性という大志を実現するためにマーケティングを方向転換。ラディカルな外観のデザイン戦略を打ち出し、日本以外、つまり海外市場での車のネーミングも「626」のような3桁の数字から、「Mazda6」のような1桁に変わった。

それから10年後の2012年、同社の代名詞となるスカイアクティブ技術を打ち出し、それまでとまったく違う「魂動デザイン・ランゲージ」というコンセプトを具現するCX-5を誕生させた。

そして、今年2019年、マツダはMazda3 (これまでは「アクセラ」)を導入することによって、わずか17年で3度目の正直、ではなく、3度目の革命を起こしていると言える。

カギは「骨盤」にあった

登場したこのマツダ3は、何から何までまったく新しい。セダンとハッチバックとのコンビネーションは、色気たっぷりのデザインの新方向を宣言している。この外観の新鮮な美しさを、これから発表される同社のモデルに一貫して採用することになる。

マツダ3の新しいデザインは、骨盤への着目からスタートした。そう、人間の骨盤だ。マツダは、 快適性、走り、乗り心地を向上させるために、人間の骨盤と、股関節などのその周辺の機能に目をつけたのだ。

それは、元サッカー選手で同社の操安性能開発部 上席エンジニアを務める、「人馬一体」の巨匠と呼ばれる虫谷泰典氏が膝の手術で入院し、快復を待っていた時にピカッと来た閃きこそが発端だった。

虫谷は、マツダの全車種のサスペンションを最終的にセッティングする立場にあった。しかし、サッカーの試合中に捻った膝を手術してから2カ月も病院のベッドに臥せることに。その間、彼には脚についての解剖学的な知識や、歩くという動作のメカニズムを医師たちから学ぶ時間がたっぷりとあった。

「それで、理解したんです。医師たちは、私の膝や脚について説明してくれてたのですが、膝の構造や歩行のメカニズムは、クルマのシャシーの微妙なチューニングやサスペンションのセッティングとまるで同じだということを。すべてはバランスなんです。そして、そのバランスはどこで取るのかというと……」

そう、もうお分かりだろう。バランスは骨盤が司っている。



「病院で学んだのは、クルマの乗り心地、ハンドリングとバランスを向上させる極意は、人の歩行技術を学ぶことで得られるということ。そして、骨盤を垂直に保つことは、良い姿勢だけでなく、理想的なシートのデザインにも重要だということでした」と、彼は熱弁した。

「例えば、S字カーブを走行するときに、上体と頭は違う方向に動く。それは、最小限にとどめたい。そこで当社の新しく進化させたシートと、さらにサポート力の増したクッション、それに特に重要なシートの座面と腿のサポートが、骨盤の位置を垂直に保ちます。私たちが作ったのは、頭の動きを抑制して、通常の運転をしている時の全身を安定させることができるシートです」

確かに、ライバルであるVWゴルフやスバル・インプレッサと比較しても、マツダ3のシートは安定性が高く、乗り心地が良く、頭の動きが少ない。

より良いハンドリングとさらに快適なマツダ車を生み出すもう一つの要素は、シャシーのデザインだ。新しいシャシーは、以前より堅固で軽量。そして、これまでより乗り心地とハンドリングを向上させるために新旧のテクノロジーを採用した。

新登場のマツダ3は、デザインでは群を抜いている。新デザイン言語を採用し、それを完全に再定義している。同社のデザイン・チーフで常務の前田育男が、去年こんな話をしてくれた。

「今、どこもEVと自動運転の船に乗っていますが、ウチは乗らないことにしたんです。その代り、マツダのユニークなブランド・アイデンティティーとスタイリングを極めることで強化します」

エッジの効いたデザインを離れ、前田と彼のチームは、マツダ3のスタイリングをダブル・モーションからシングル・モーションへと切り替えた。それがヴィジョン・コンセプトで、2018年に栄誉あるパリ国際オートモービル・フェスティバルの「最も美しいコンセプト」賞を受賞した。



そのシングル・モーションとはなんだ? 「ここでは、光と影をどう扱うか、 つまり車体の表面の反射が常に変化していくプロセスに焦点を当てたんです」と前田は言う。

確かに、魔術師マツダが導き出したデザインは、圧倒的だ。代表的なマツダの顔となるグリルから、流れるようなプロフィールと引き締まったテールまで、新マツダ3は、完璧にデザインされている。

セダンのプロポーションは、昨年11月のロサンゼルス・モーターショーでの発表時に世界のメディアから高い評価を受けているが、ハッチバックの広めのCピラーは意見が分かれたのは事実だ。でも、僕はハッチバックのデザインが好きだし、セダンと引き立てあっていると思う。

新しい4駆システムもすごい

新型車でのビッグニュースは、i-アクティブ4輪駆動システムだ。1月のロサンゼルスでの国際試乗会では、準備が間に合わないということで、4輪駆動仕様車は用意されていなかった。でも、僕から見ると、こんな重要な技術は無視できない。本当は乗ってから自分で評価したいけど、少しでも解明したくて、この新i-アクティブ4輪駆動の性能はどうなのかと、一人の技術者に聞いてみた。

マツダの話によると、通常のドライビングでは前輪が駆動するが、50%のパワーを後輪に伝えることもできる。「とてもよくできたシステムであり、グリップも優れていて、同社のGヴェクタリング・コントロール・プラスとの組み合わせによりターンインもクイックです」という。

読者が絶対にこの4駆をもっと詳しく知りたがるだろうから、もう少し教えて欲しいとせがんだら、「この新しい4駆システムは、コーナーに入る時のトルクを軽減し、前輪によりグリップをかけることによって、素早く切れのいいターンインを可能にする。コーナーを出るときは、状況により、フロント外側のブレーキが適度にかかると同時に、後輪にはトルクを伝達する。それで姿勢が安定し、狙ったラインを走ることができる」と語ってくれた。

これはすごい。それがそうなら、スバルとアウディと良い勝負ができるだろう。

さて、室内はといえば、デザインが一新されてよりシンプルになり、さりげないラインが施され、エレガントで贅沢な雰囲気にハイテクなガジェットが上手に組み合わされている。



そして、ついにマツダもインフォテイメントの世界標準に追いついたと言えるだろう。やっと登場した8.8インチのディスプレイがアップル・CarPlayとアンドロイド・オートをサポートし、オプションのボーズ音響システムはフロント・ドアのサイドパネルのちょうど足上にサブ・ウーファーを搭載。よりまろやかで質の高いサウンドを楽しむことができる。

僕たちは午後の試乗中、ずっと「ボヘミアン・ラプソディー」を聴いて満喫した。素晴らしいサウンドだった。

パワートレインのラインナップはとても豊富だ。ガソリンは1.5/2.0/2.5Lと2.0L+ベルト駆動のISG(モーター機能付発電機)付のマイルドハイブリッド「M Hybrid」、1.8Lディーゼルターボ、そして遅れて登場する新型の本命である圧縮着火エンジンのスカイアクティブXの3本立て。トランスミッションはほとんどのグレードに6速MT/6速ATを用意する。

今回乗れたのは、2.0Lと2.5L。2.0Lは122ps/213Nmとパワーは控えめだが、ハイブリッドにモーターアシストで加速はそこそこ。シフトが確実でストロークが短めの6速MTは6500rpmのリミットまで引っ張ればそれなりに速い。 

欧州仕様はBSチュランザのタイヤと引き締まったサスのチューニングで、ステア操作に対する動きが明確だ。ロールやピッチングも少なく、コーナーでのターンインは無駄なくクイックで気持ちがいい。ブレーキも欧州仕様はペダル踏力と踏み込み量に忠実に減速Gが立ち上がり、制動力は十分だ。

フリーウェイへの合流時、アクセルひと踏みで十分に加速する。2.5L直列4気筒自然吸気エンジンは187ps/252Nmのスペックを誇る。組み合わせるトランスミッションは6速ATである。エンジンはややおとなしい印象だ。ファイナルのギア比を高めて回転を落とし、高速巡航の燃費を高めるためかもしれない。

2015年に登場した先代から、マツダ3はVWゴルフなどのライバルと張り合ってきた。でも、骨盤にフォーカスするという同社の先見性によって開発される次世代モデルが実現する全体的な優位性は、ライバルを凌駕することに間違いない。

敢えて言えば、マツダのエントリー・レベルの持つ品質、デザイン、ハンドリングの贅沢さを体験すれば、メルセデスCLAやアウディA3を買おうとしている人さえも振り向かせるだろう。そう、コンパクト・セグメントの新しいベンチマークが生まれたのだ。

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