銀行が預金を「拒否」する時代が来る 「マイナス金利」が招く異常事態

2月3日(水)20時21分 J-CASTニュース

銀行はマイナス金利で生じる負担増を、預金者に転嫁するのか!

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日本銀行がマイナス金利政策を発表したことで、銀行の預金口座にかかる「口座維持手数料」の導入に注目が集まっている。


日銀が2016年1月29日に決定したマイナス金利政策は、2月16日以降、銀行が日銀にお金を預けた場合、年0.1%の金利を支払わなければならない仕組み。銀行の収益力の低下につながるため、預金者にも応分の負担を転嫁しようということのようだ。



日経「三菱UFJ、口座維持手数料検討」報道の衝撃



口座維持手数料は、米銀などで導入されているクレジットカードの決済などに使う預金口座に対する管理手数料で、預金残高に応じて手数料水準を決めたり、免除したりする。シティバンクなどでは手数料を徴収する代わりに、ATMの利用手数料などが無料になっている。


そんな口座維持手数料を、三菱東京UFJ銀行が大企業などの普通預金に導入することを検討すると、日本経済新聞(2016年2月3日付)が報じた。個人や中小企業の預金は対象外だが、預金での利息収入よりも手数料が高くなれば事実上のマイナス金利、つまり預金をして銀行に金を払うことになる。銀行にとっては、預金の受け入れを抑える狙いがあり、他のメガバンクも追随する可能性も指摘している。


この報道に、三菱東京UFJ銀行は「当行から公表したものではありません。また、(口座維持手数料の導入について)検討もしていません」と、否定する。


同行の預金残高は約156兆円(連結ベース、2015年12月末)。このうち、法人等預金は約46兆円で、15年9月末と比べて約1兆円減らした。ただ、預金全体では1.6兆円増えており、日銀の当座預金への預け入れを増やせば、収益力は低下する。預金の受け入れを抑えたいと判断してもおかしくない状況になってきた。



とはいえ、その現実味はあるのだろうか——。銀行にとって、預金口座は相手先企業と関係を維持する有力なツール。まして普通預金は、普通であれば、誰でも簡単に口座がつくれて、低いながらも金利が付くので、企業側にも負担はない、両者にとって「便利」な口座だ。



収益低下で銀行同士のにらみあいが続く



しかし、口座維持手数料を取られるとなると、企業側は安易に口座を開設しないし、メインバンク以外に保有している預金口座は解約するかもしれない。企業側が銀行との取引をしぼる可能性が高まることになる。


外資系金融機関での勤務経験がある、金融アナリストの小田切尚登氏は「法人取引には決済性預金を扱う当座預金もありますが、それだと与信枠が必要になるのでどんな企業でもつくれるというわけではありません。中小企業や個人とのあいだでは取引できないので、結局、普通預金口座を残さなければならない場合が出てくると思います。大企業取引でも(導入は)なかなか難しいと思いますよ」と話す。


さらに、「日本では、銀行は電気や水道と同じように社会インフラとみなされていますから、必要以上に高い手数料を徴収しようとなると、間違いなく批判にさらされます。市場原理からいえば、正しいのですが...」という。


そうなると、口座維持手数料を導入した銀行から、導入していない銀行への預金シフトが生じる懸念もある。銀行同士がにらみ合い、預金者への負担転嫁は難しいかもしれない。


ちなみに、すでにマイナス金利を導入している欧州連合(EU)域内の銀行でも、預金金利へのマイナス金利の適用や口座維持手数料の導入はあまり例がないという。



深刻な地方銀行から預金を減らし始める?



じつは、国内でも口座維持手数料を取っていた銀行はある。インターネット専業のジャパンネット銀行は2012年7月まで、月額180円(税別)を徴収していたが、現在は無料。三菱東京UFJ銀行も、インターネットバンキングの利用者向けの「スーパー普通口座」で徴収していたことがある。「総合的な判断」から現在は廃止したが、2009年6月までは残高10万円以下の預金者に月額300円(税別)の手数料がかかっていた。


また、2015年11月1日にシティバンク銀行のリテール事業を統合して発足したSMBC信託銀行プレスティアは、現在も、取引残高など一定の条件を満していないと、月額2000円(税別)を口座維持手数料として徴収している。



一方、経済学者で慶応大教授の池尾和人氏は、2016年1月29日付の言論プラットフォーム「アゴラ」で、「マイナス金利政策により予想されること」と題して、「銀行が預金者に負担を転嫁。これまで徴収していなかった口座維持手数料をとるようにするなどのかたちで、預金金利をマイナスにする」と、言及している。


メガバンクに目が向くなか、むしろマイナス金利の影響が深刻なのは、預金が過剰に集まっている地方銀行や信用金庫。池尾氏もツイッター(2011年2月19日付)で、「私も最近、日本の(とくに地方)銀行は(例えば、口座維持手数料の導入などで)預金を減らす勇気をもつべきではないかと考えるようになりました。『希望を捨てる勇気』ならぬ、『預金を捨てる勇気』。」と語り、銀行が預金を受け入れすぎているとみているようだ。


預金は運用しなければ銀行はコスト倒れになってしまう。前出の小田切氏も「導入するのであれば、地方銀行からの可能性が高い」とみている。


銀行の規模縮小は免れないが、預金を減らしてでも運用リスクを下げることが必要になってきたというわけだ。


そうした中で、日銀の黒田東彦総裁は2016年2月3日、東京都内で開かれた講演会で、導入を決めたマイナス金利について、「必要な場合、さらに金利の引き下げを行う」と述べ、マイナス幅の拡大による追加金融緩和を辞さない考えを示した。


実行されれば、銀行の収益力はますます低下する。

J-CASTニュース

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