企業が「副業」に後ろ向きな理由と「組織運営」の課題が似ていると思ったこと

2月4日(月)21時40分 財経新聞

 働き方改革の一環で、副業解禁に向けた指針が提示され、取り入れる企業がある一方、踏み出せない企業も多いという新聞記事がありました。

 労働者の関心は高く、ある調査では、副業に「興味がある」との回答が88%に上ったそうですが、企業側におこなった調査では、「取り組む予定はない」との回答が、企業規模にかかわらず、全体の約8割ということでした。
 その理由は、「業務に専念してほしい」「疲労による業務効率低下の懸念」という回答が多く、労働者側の意識とは大きく異なっています。
 2つの会社で雇用契約を結んだ場合の対応など、制度として定まらない部分があるため、様子見をしている企業が多いと指摘がされていました。

 私が実際に企業で話を聞くと、やはり同じく「自社業務に専念できない」「長時間労働の懸念」が多くいわれ、さらに一般的に言われる「業務上の機密」「競業避止」の話が出ます。元社員の転職先に顧客を奪われたという話を聞くことはありますから、まったく心配ないとは言えません。
 ただ、人に仕事がついていくことは決して珍しくないですし、逆に転職者を受け入れる立場になれば、仕事や顧客を持ち込んでくれることを期待もするので、結構矛盾したところがあります。

 矛盾といえば、副業を拒む理由も、私から見ればそれぞれ矛盾していて、「長時間労働の懸念」を言いながら、「自社専業」の方がよほど長時間労働の問題が大きかったり、専業を求めて社員の選択肢をなくしているのに、平然と社員の肩たたきをしていたりします。
 副業に後ろ向きな理由は、結局あまり合理的なものでなく、自社以外に目を向けていることへの嫉妬の感情を、もっともらしく説明しているだけにしか見えません。

 そうやって突っ込んでいくと、最後に残る理由は「業務上の機密」となるのですが、では実際に社外に持ち出されて困る情報がどれほどあるのかというと、こちらも何とも言えません。
 特殊な技術情報などは、特許その他様々な形で守られているので、うかつに持ち出して使えるものではないですし、営業情報のたぐいは、顧客との関係もあって、関係者は無用なトラブルを避けたいと考えますから、自分たちだけに都合よく使うことは難しいです。

 副業に対する「業務上の機密」の話で思うのは、「情報格差で支配する組織」の問題です。発想の根本が似ていると感じたのです。
 組織内の上下関係が厳しい古いタイプの組織では、必ず上司と部下の間に情報格差があります。立場によって情報を限定すると、情報を多く持つ上司が情報弱者となる部下を支配するようになり、その上下関係は強まって、情報格差は広がる傾向があります。
 情報格差が広がった結果、「業務効率が下がる」「顧客サービスが低下する」「クレームが増える」「トラブル対応が遅れる」といった問題が起こりますが、それは上司が部下を支配するために、必要以上に情報を制限したことが原因です。
 先日も、社員個人の給与情報は、給与計算の担当者にも教えないという会社がありましたが、情報格差が組織の問題を大きくするという点から見ると、考え直さなければならないところでしょう。

 これは副業の話でも同じで、「業務上の機密」「競業避止」は、相当意図的に悪意を持ってやる以外、社員が個人的な副業を考えるレベルでは、トラブルにはほとんどならないでしょうし、何かあったとしても、それほど大きな問題ではないでしょう。
 今でも転職を裏切りと捉えたり、自社以外の世界に目を向けることを、愛社精神の欠如などと捉えたりする会社や経営者がいますが、これは合理性がない感情的な嫉妬でしかありません。

 私は独立事業者なので、当然複数の会社と仕事をしますが、相当な機密情報にも触れることがあるので、契約に基づいて厳重な注意のもとで対応します。もちろん契約が満了しても同じです。これは社員の副業でも、同じように対応できるはずです。

 新たな取り組みには懸念がつきものですが、何事もやって見なければ先には進みません。
 会社として、十分な報酬と雇用を最後まで保証できないのであれば、副業に後ろ向きなままではいられないと、私は思います。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

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