10年間で販売個数が約6倍、「ウタマロ石けん」の独自のマーケテイング戦略

2024年1月31日(水)4時0分 JBpress

 圧倒的な成果を上げるために、本当に注力すべき重要指標(KPI)とは何か?本連載は、ロングセラーのマーケティング入門書『ドリルを売るには穴を売れ』の著者が、“顧客に刺さる”マーケティング戦略のつくり方と追うべきKPIについて徹底的に掘り下げた『顧客の「買いたい」をつくる KPIマーケティング』(佐藤義典著/朝日新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。
 第3回は、10年間で販売個数を約6倍に増やした「ウタマロ石けん」の大躍進の秘密に迫る。

<連載ラインアップ>
■第1回 「ドリルを売るには穴を売れ」マーケティングの大家・レビットの真意とは?
■第2回 ハーゲンダッツを売るには、何を「強み」として、どう伝えればよいか?

■第3回 10年間で販売個数が約6倍、「ウタマロ石けん」の独自のマーケテイング戦略(本稿)
■第4回 製品の「強み」を顧客に伝え切る、ウタマロ石けんの戦略の「急所」とは?
■第5回 「売上を増やせ!」と叫ばなくても、必然的に売上がアップする方法とは?(2月14日公開)

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2「あなたから買いたい」を作って売上を6倍にしたウタマロ石けん

■「子どもの靴下の泥汚れ」を落とすウタマロ石けん

 ここで、「あなたから買いたい」を作って実際に売上を上げている事例を紹介します。株式会社東邦が販売する「ウタマロ石けん」です。

 子どもの靴下の泥汚れがよく落ちる石けんとして知られ、お子さんがいらっしゃる家庭の必需品です。

 私にも娘がいますが、娘が幼稚園児だったときに欠かせない石けんでした。娘が小学生になった今でも使っています。

『ウタマロ石けんは2017年に16年比8%増の1271万個を販売。10年前から販売個数は約6倍に拡大』(2018/11/23、日経MJ、1ページ)

 10年間で6倍、とはすごい成長ですね。

 ウタマロ石けんが家庭用「石けん」という衰退市場にいるにもかかわらず成長できている理由は、その洗浄力の高さです。

 具体的には「子どもの靴下の泥汚れ」を落とせるのです。小さな子どもは、靴下を汚して帰ってきます。私の娘も幼稚園時代、帰宅すると靴下の裏が真っ黒になっていました。

 この「子どもの靴下の泥汚れ」は、洗濯機ではよく落ちません。汚れ落ちをアピールしている洗剤でも、です。ですから「子どもの靴下の泥汚れ」は親の悩みの種です。

 しかし!ウタマロ石けんで靴下の汚れているところを部分洗いしてから洗濯機で洗うと、落ちなかった泥汚れが魔法のように落ちるんです!

 このような理由で、小さな子どもを持つ親の必需品として広がっている、というのが売上6倍の秘密だと思います。

「他の洗剤では落とせない、子どもの靴下の泥汚れを落とせる」というのがウタマロ石けんの「強み」=「あなたから買いたい」理由になっています。

 実際、ウタマロ石けんもそれを訴求しています。ホームページから一部を抜粋してみます。
*https://www.e-utamaro.com/products/sekken

………………………………………………………………
ユニフォームの泥汚れ
あきらめていた泥汚れもしっかり落として白く!

くつ下の汚れも
皮脂汚れや泥・土などのガンコなくつ下汚れもキレイに落ちる!

………………………………………………………………

 この「強み」が刺さる顧客はもちろん、「子どもの靴下の泥汚れに悩む親」ですね。強力な「強み」はありそうです。

 ここで「あなたから買いたい」を作る方法が2つあったことを思い出してください。

  • 買いたいを作る方法1:商品・サービスの「強み」を作る・強化する
  • 買いたいを作る方法2:「強み」をお客様に伝え切る

 ウタマロ石けんには既に強力な「強み」がありますので、新たに強みを作る必要はありません。しかし、大きな課題があります。「子どもの靴下の泥汚れが落ちる」という「強み」をお客様に伝え切るのが難しいのです。

 TVCM で、「子どもの靴下の泥汚れが、ものすごく、大変、素晴らしく、超超超超落ちるんです!」と「強み」を連呼しても、その汚れ落ちの良さは伝わりません。洗剤のCM はどれもみな「汚れ落ち」を訴求しますから、TV などの広告媒体だけでは「強み」を「伝え切る」ことが難しいのです。

 つまり、ウタマロ石けんは、強みを「伝え切る」方に大きな課題があったのです。

■試せばわかる:「試す」ことで「買いたい」が生まれる

 そこで、ウタマロ石けんは強みをお客様に「伝え切る」ために素晴らしい工夫をしました。

『毎週末、3人の社員が店頭やイベント会場で部分洗いを実演しながらサンプル品を配布。サンプル品の数は年間50万個に上る。東邦の売り上げ規模は約20億円、従業員数45人だが、大手日用品メーカーの液体洗剤で一般的なサンプル配布数と肩を並べる。「実際に使ってもらい、部分洗いを実感する体験を通じて魅力をアピールする」(西本社長)』(2018/11/23、日経MJ、1ページ)

 汚れが落ちる実演をし、サンプルを配布して売上を伸ばしているんです。年間50万個のサンプル配布というのは顧客ターゲット(小さな子を持つ親)の数を考えれば、すさまじい数です。

 ウタマロ石けんの「強み」を伝え切るためには、実際に使ってもらうことが極めて有効です。

「子どもの靴下の泥汚れがよく落ちる」という「強み」は、実際に使ってみればわかるのです。使ってみるとその汚れ落ちの良さに驚いて、買いに行くわけです。

 ウタマロ石けんはもともと持っていた強みを、お客様に「伝え切る」ことで「あなたから買いたい」を作り、10年で販売個数を6倍まで伸ばしてきたのです。

<連載ラインアップ>
■第1回 「ドリルを売るには穴を売れ」マーケティングの大家・レビットの真意とは?
■第2回 ハーゲンダッツを売るには、何を「強み」として、どう伝えればよいか?

■第3回 10年間で販売個数が約6倍、「ウタマロ石けん」の独自のマーケテイング戦略(本稿)
■第4回 製品の「強み」を顧客に伝え切る、ウタマロ石けんの戦略の「急所」とは?
■第5回 「売上を増やせ!」と叫ばなくても、必然的に売上がアップする方法とは?(2月14日公開)

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筆者:佐藤 義典

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