慶應、聖路加より"近所の病院"がいい理由

2月10日(日)11時15分 プレジデント社

写真=iStock.com/Nikada

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年齢を重ねると増えてくる体の変調。突然のそのとき、どこの病院に行き、どんな医師を訪ねるべきなのか。9つのポイントで検証した。第2回は「専門病院vs総合病院」——。

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月31日号)の掲載記事を再編集したものです


■“総合病院”は法律上実は存在しない


「大病院は紹介状がいるから簡単には行けない」「小さい病院だと正しい診察をしてもらえないかもしれない」など知識が曖昧で、病院選びに漠然とした不安を持っている人は多いだろう。




写真=iStock.com/Nikada

ただでさえ難しい病院選びをさらに難解にしている一因に、制度変更が繰り返されていることもある。


たとえば、いまでもよく耳にする「総合病院」という区分、実は法律上は存在しない。1997年の医療法改正に伴って廃止されたのだ。


もともと、総合病院は病床数が100床以上あり、内科・外科・産婦人科・眼科・耳鼻科がある病院のことを指していたが、現在では多数の診療科があり、病床数の多い病院を指す“通称”でしかない。


医療法では、病床数(入院ベッド数)が19床以下を「診療所」、20床以上が「病院」となっており、200床以上が「大病院」となっている。


2018年4月の診療報酬制度の改定で、大病院もさらに大学病院や国立がん研究センターなどの「特定機能病院」と、400床以上を有する「地域医療支援病院」が定義された。そして、それらの大病院の診療報酬も改定され、救急の場合を除き紹介状なしで大病院を受診した場合、選定療養費として5000〜1万円の追加負担が必要になることとなった。


初診で大病院に行くことのハードルを上げる制度がつくられた理由は、国や日本医師会が推奨する「かかりつけ医」制度の強化が挙げられる。一次診療は中小の病院や診療所に任せ、専門的な診断・治療が必要になった場合には大病院に紹介する仕組みだ。こうすることで、大病院は専門的な医療や高度な医療に集中するべきだと考えているからだ。


こうした状況を踏まえたうえで、われわれは大病院(いわゆる総合病院)と町の開業医のどちらを選べばいいのだろうか。石川県七尾市の恵寿総合病院理事長で外科医の神野正博氏は「まだ病気の原因が特定できていない状況であれば、最初に大学病院やがんセンターなどの大きな病院に行くのは避けたほうがいいでしょう」と語る。紹介状なしでは受診料が高くなるだけでなく、混雑しているため専門医の診察までに数時間、場合によっては数日かかる可能性があるためだ。さらに「大病院では医師の専門化が進み、専門分野には詳しいが、専門外のことには知識が乏しいという医師が多いのが現状です。たとえば肺がんでも、抗がん剤、手術、緩和と状態によって専門の医師が違ったりする。また大病院の場合、たいてい病名が確定した方の対応で精いっぱいで、ゼロから診察してどの分野の病気か特定するのに長けているとは言い切れない」(神野氏)。



先ほどの病院の区分の話とも繋がるが、仮に“総合病院”をうたっている大病院であっても、実は“総合的”な診療はできない病院が多くあるのだ。有名病院だから安心だと、慶應義塾大学病院や聖路加国際病院といった大病院に行けば安心とインターネットで検索をはじめるのは必ずしも賢明とはいえないのだ。


医師たちがつくるオンライン医療事典「MEDLEY(メドレー)」の監修を行う内科医の園田唯氏も国や医師会が推奨する通り、まずかかりつけ医に見てもらうことを勧めるという。「家の近くの病院や診療所の医師と良好な関係を築けているようであれば、そこで診察してもらうのが一番いいと思います。小さな変化にも気づきやすいですし、その病院では治療ができないと判断したら紹介状を書いてくれるはずです」(園田氏)。


園田氏が近所の病院での受診を勧めるのにはもう1つ理由がある。「例えばガンの場合、近所の病院で受診し、大病院を紹介してもらって手術を受けることが多いです。手術が成功しても、実はそれで終わりではない。その後しばらく病院に通い続けなくてはなりません。その際には、近所の病院に通って薬を受け取り、何かあった場合は大病院に行くというのは理にかなっています。最初の段階から遠い病院を選択してしまうと、術後の病院通いの負担がとても大きくなってしまいますから」(園田氏)。


それまで病院に掛かっておらず、かかりつけ医と呼べる医師がいない場合はどうしたらいいのだろうか。神野氏は「近隣で、総合診療科もしくは家庭医療科がある病院を探して受診することをお勧めします。これらの科に所属する医師は幅広い知識があり、病気の特定が得意」と語る。この総合診療医、テレビなどでドクターGとも呼ばれる。幅広い医療知識を有し、日本では69年に佐賀大学医学部に設立されたのを皮切りに、全国に拡大。18年度からは内科や外科と並ぶ基本領域の専門医として認定されることになった。ただし、「総合診療医、家庭医療医は全国的に数が少なく、見つけるのがなかなか難しい」(神野氏)という現実もある。


かかりつけ医がおらず、近隣に総合診療医、家庭医療医も見つけられない場合はどうすればいいのだろうか。園田氏は「新しい知識を取り入れることに熱心な医師を探すのが一手だと思います。例えばインターネットを使えば、その地域で勉強会を主宰している医師を見つけられるかもしれません」と話す。


さらにこう話してくれた。「患者さんやご家族の方に病気の説明をしていると、病気から目を背けてしまう方も少なくありません。少しずつでよいので、情報収集を病気に向き合う一歩としてほしい。実は医療の世界では昨日の正解が今日にはひっくり返るということもよくあることです。客観的な情報を自ら集める姿勢が、結果的に医師との良好なコミュケーションや満足いく治療を受けられることに繋がると思います」。ておきたい。



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園田 唯

日本内科学会認定内科医

オンライン医療事典「MEDLEY」医療監修。日本呼吸器学界専門医。日本赤十字社医療センターなどを経て現職。




神野正博

恵寿総合病院理事長

日本医科大学卒業。専門は消化器外科。金沢大学附属病院などに勤務した後、1995年より現職。全日本病院協会副会長。

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(吉田 洋平 撮影=岡田晃奈、研壁秀俊 写真=iStock.com)

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