平成に若者の生活全てを飲み込んだスマホ 機能集約の盲点も

2月12日(火)7時0分 NEWSポストセブン

スマホの普及であらゆる生活が便利になったが…

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 平成の時代が間もなく終わりを告げようとしているが、平成30年間で日本人のライフスタイルをもっとも激変させたのが、携帯電話(スマートフォン)の普及だろう。神戸国際大学経済学部教授の中村智彦氏が、スマホ進化によって次々と飲み込まれたモノやビジネスを振り返る。


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 昨年末に放送され人気の高かったテレビドラマ「スーツ」。主演が織田裕二鈴木保奈美ということで前評判も上々でした。2人が共演したのは、1991年(平成3年)の「東京ラブストーリー」以来のこととあって、「スーツ」放送前には、再放送もされました。


 さて、多くの人が驚いたのは、「東京ラブストーリー」のオープニングの場面。公衆電話がずらりと並んでいて、そこから出てくるテレホンカードが映っています。


 まだ、携帯電話は普及しておらず、自宅電話と公衆電話が主流の時代、なかなか連絡がつきにくく、すれ違いばかりの恋人たちの物語がテレビドラマでも人気を呼んだものでした。実際、40歳代以上の方の中には、暑い中、寒い中、公衆電話のボックスから恋人の家に電話をしたなどという思い出を持っている方も多いでしょう。


 NTT東日本や西日本が設置している公衆電話の数は、もっとも多かった1984年度には93万4903台もありました。「東京ラブストーリー」が放送された1991年には少し減って約83万台がありました。


 さらに、平成時代に入り、通信事業の民営化によって、第二電電と呼ばれる電話事業を行う新規参入企業がサービスを開始。1990年には、NTTの公衆電話より割安なことを売りにして、日本テレコム(現ソフトバンク)が東海道新幹線のホームなどに、日本高速通信(現KDDI)が高速道路のサービスエリアなどにそれぞれの公衆電話を設置しました。平成の初めは、電話というと固定電話と公衆電話だったのです。


 しかし、公衆電話その後、急速に姿を消していきます。第二電電系の公衆電話は、1999年(平成11年)に採算悪化を理由に十年間持たずに姿を消します。NTTの公衆電話も2009年には、約30万台と急減します。その後も減少傾向は止まらず、現在(2018年3月末時点)では15万7875台。平成初期の約6分の1にまで減少しています。街角から公衆電話の姿が消えてしまったという感覚も間違っていないと言えます。



 公衆電話を飲み込んでいったのは、当然ながら携帯電話です。このように携帯電話は普及率の上昇とともに様々なものを飲み込み続けていきます。


 もう一つ、携帯電話が飲み込んだのがカメラです。携帯電話にカメラが内蔵されたのは、1999年の京セラが世界で初めて携帯電話にカメラを内蔵させ、発売したのが最初です。


 最初はおもちゃのカメラのような解像度しかなかった携帯電話のカメラは、どんどんと解像度を上げていきます。2005年には300万画素だったものが、2007年には500万画素、2009年には1200万画素を超します。携帯電話で美しい写真が撮れるようになり、多くの人がカメラの必要性を感じなくなります。


 デジタルカメラは、1999年当時、約500万台でした。その後、急増し、2010年に1億2000万台を超え、ピークを迎えます。ところが2011年から急激に減少し、わずか3年後の2013年には約6300万台と半減します。そして、2016年には2500万台まで落ち込みます。


 特にコンパクト型のデジタルカメラについては、国内メーカーは次々と国内生産を休止し、海外に移転した生産拠点でも生産そのものが休止されました。その後は、ほぼ横ばいで推移していますが、それは一眼レフなど高級機だけになっているのです。大型家電量販店に出かけると、少し前までずらりと並んでいたコンパクトデジタルカメラがすっかり無くなっていることに驚くでしょう。


 携帯電話がスマートフォンとして大きく変化するのは、2007年にアメリカで登場したiPhoneからです。日本でも2009年にはスマートフォンの普及率が10%程度だったものが、2013年には約63%となり、いわゆるガラケー(ガラパゴス携帯電話)を超す普及率になりました。そして、2015年には70%を超しました。


 携帯電話とスマートフォンの違いは、インターネットの利用ができることです。スマートフォンになることで、インターネット利用の際のパソコンも飲み込んでいきます。


「最近は、学生がパソコンを使えない」と嘆く大学教員や会社経営者に会うことが多くなりました。正確には「パソコンが使えない」のではなく、「キーボードが使えない」です。筆者が担当する大学生の中にも、文章などの入力をする際に「キーボードからだと遅いので、スマホから入力しても良いですか」と聞いてくる人がいます。若い世代にとってスマホはパソコンの代替ではなく、スマホこそが生活に必要不可欠な道具そのものになっているのです。


 こうした傾向は日本だけのことではなく、「若者は携帯でゲームばかりしている」というイメージも大きく変わりつつあります。



 アメリカに本社を置くモバイルデータ分析を行うApp Annie社の調査『モバイル市場年鑑 2019』によると、16〜24歳のジェネレーションZの特徴として、「非ゲーム系アプリの利用時間やエンゲージ面が他世代より高く、生活のほぼ全ての側面でモバイルを利用」していると指摘しています。


 スマホを使ったショッピングアプリのセッション数(来店客数に相当)は、世界全体でこの2年間に65%増加し、日本でも2016年から2018年の2年間で95%増とほぼ2倍になっています。さらに、飲食物の出前を依頼するフードデリバリーアプリも、この2年間で45%増と伸びています。このように商店や飲食店もスマホに飲み込まれ、ネット通販の急伸は、百貨店や大手量販店などの経営を追い詰めつつあります。


 2018年に話題になったのは、「PayPay祭り」に代表される本格的なキャッシュレスの始まりでした。このキャッシュレスの動きは、スマホが金融をも飲み込み始めていることの表れになっています。


 2018年12月6日に長時間発生したソフトバンク系の通信障害は、多くの人を混乱に陥れました。昭和時代には、様々な機能が独立して存在していたものが、スマホに飲み込まれ、すべてが一か所に集約されている結果、「何もできない」という状況に陥ってしまったのです。


 電話やメールができないだけではなく、地図も、スケジュールも見ることができない。「ヤバい! 今夜飲み会なんだけど、どこに行ったらいいかわからん」「幹事に聞けばいいじゃん」「電話もかからんし…」という会話を、その日、電車の中で筆者も耳にしましたが、同じような状況になった人も多いでしょう。


 平成元年の携帯電話数は、わずか3万6000台。普及率は、わずか0.3%でした。平成3年でも1.1%。「東京ラブストーリー」に登場する若いリカとカンチが携帯電話を持っていないのは、当たり前だったのです。携帯電話が急速に普及するのは平成9年で約20%となります。平成8年以降、年率で10%ずつの急増を見せ、平成20年には50%を超します。そして、平成24年度末には100%を超しました。1人1台の時代になったのです。


 そして、今年はキャッシュレス時代が本格化する年とされています。キャッシュレスの進展によって、財布やキャッシュカードやクレジットカード、さらには身分証明書もが、より一層スマホに飲み込まれていくことになるでしょう。


 しかし、便利になる反面、プライバシー流出の懸念やソフトバンク系の通信障害事件に象徴されるような機能麻痺派生への懸念など、様々な問題が明らかになってくるでしょう。次にスマホに何が飲み込まれるのかを考えると、問題点も多く気づきますが、一方で新しいビジネスチャンスの到来ともいえます。

NEWSポストセブン

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