九州地方だけでなく広島・愛媛・沖縄からも熱視線…西日本で「一極集中」が起きている政令市の名前

2025年2月13日(木)8時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

西日本で「一極集中」が起きている政令市がある。大東建託賃貸未来研究所「街の住みここちランキング特別集計 街の魅力度ランキング」の企画・設計・分析を行っている麗澤大学教授の宗健さんは「『街の魅力度ランキング2024〈都道府県版〉』の1位は福岡県だ。福岡市の人口増加が著しく、西日本では福岡市一極集中が起きている」という——。
写真=iStock.com/taka4332
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

■都道府県ランキングの根強い人気


毎年秋になると、ブランド総合研究所が発表する都道府県魅力度ランキングの最下位争いが話題になる。今年の結果を見ると、1位が北海道、2位が京都府、3位が沖縄県、47位が佐賀県となっていた。


しかし、都道府県魅力度ランキングはブランド総合研究所からだけではなく、複数の会社から発表されている。


リクルートのじゃらんリサーチセンターも、じゃらん観光国内宿泊旅行調査【都道府県魅力度ランキング編】を発表しており、総合満足度1位は鹿児島県、2位は愛媛県、3位は石川県となっている(総合順位は10位まで発表)。


大東建託賃貸未来研究所から発表されている、筆者が企画・設計・分析を行っている「街の住みここちランキング特別集計 街の魅力度ランキング2024〈都道府県版〉」では、1位が福岡県、2位が神奈川県、3位が東京都だ。40位まで発表されているが最下位は発表しておらず、いつも話題になる茨城県は37位、佐賀県は38位であり、最下位争いをしているわけではない。


■ランキングごとに作成方法が異なる


これらのランキングは、それぞれランキングの作成方法が違う。ブランド総合研究所のランキングは、それぞれの都道府県について「どの程度魅力的に思うか」について「とても魅力的」から「まったく魅力的でない」の5段階評価のうち、「とても魅力的」を100点、「やや魅力的」を50点、そのほかの回答を0点とする、少し変わった評価方法になっていて、回答者数は約3万人(47都道府県で割ると約638人)である。


じゃらんは、有効回答数が1万5520件(47都道府県で割ると約330件)と記載されており、複数の設問の回答から総合順位を出しているが、参考として掲載されている「今後行きたい旅行先ランキング」では、1位が北海道、2位が沖縄県、3位が京都府となっており、ブランド総合研究所のランキングと顔ぶれが一致している。


一方、「街の住みここちランキング特別集計 街の魅力度ランキング2024〈都道府県版〉」は回答者数が18万3727人(47都道府県で割ると約3900人)と非常に多く、ランキング自体も居住者評価の12項目、非居住者評価の18項目の合計30項目を組み合わせてランキングを作成している。


今回は、このランキングで1位となった福岡県について、その理由と背景を考えてみたい。


■項目別に見ると「1位」が多いのは東京都


「街の住みここちランキング特別集計 街の魅力度ランキング2024〈都道府県版〉」は居住者評価の12項目、非居住者評価の18項目の合計30項目の順位の平均でランキングを作成しているが、1〜3位の項目別順位は以下のようになっている(図表1)。


図表=筆者作成

一見してわかるのは、居住者評価、非居住者評価ともに東京都が1位である項目が多いことだ。


居住者評価では12項目中7項目、非居住者評価では18項目中8項目で1位となっている。その一方で、居住者評価では、静かさ治安が36位、物価家賃が26位、非居住者評価では住んでみたいと思う25位、観光に訪れたいと思う25位、気候が良い36位といった評価の低い項目もあり、41以下の項目も3項目ある。


■バランスがいいのが福岡県


東京はこうした両極端の評価があるため3位となっているが、福岡県を見ると各項目で極端に評価の低い項目があまりないことが分かる。


居住者評価の静かさ治安が37位、非居住者評価の景勝地や温泉が多い、の28位以外は比較的評価が高く、居住者評価では行政サービス2位、物価家賃2位、非居住者評価では住んでみたいと思う2位、仕事で行ってみたいと思う1位、住みやすそう2位、食べ物がおいしい2位といった評価の高い項目もある。


昔から、首都圏からの単身赴任先では札幌と福岡が人気だと言われていたが、項目ごとの評価を見ると納得できる。ちなみに、北海道は、非居住者評価の観光に訪れたいと思う、自然が豊か、食べ物がおいしい、景勝地や温泉が多い、の4項目で1位となっており、単純に魅力度という意味でランキングを作れば、それは観光地ランキングになることを強く示唆している。


■九州と山口県、広島県、愛媛県、沖縄県で高い評価


魅力度ランキングという意味では、福岡県は全国から高い評価を受けているが、福岡県のなかでも福岡市は、九州・山口地方で圧倒的な人気があり、沖縄県、広島県、愛媛県からの人気もある。


図表=筆者作成

図表2は、「いい部屋ネット 街の住みここち&住みたい街ランキング2024」から、各県の住みたい街ランキングの1〜3位をまとめたもので、九州7県と山口県では、住みたい街1位は福岡市であり、沖縄県、広島県、愛媛県では3位となっている。


こうした人気を考えると、福岡県の評価の高さは、福岡市の人気と評価の高さが大きな要因だということが分かる。


ちなみに、この住みたい街ランキングを見ると、東京23区も強い人気がある。大分県と沖縄県でも表には記載していないが、東京23区は4位となっており、広島県以西では、福岡市が圧倒的な人気があり、次が各県の県庁所在地など、その次が東京23区という傾向になっている。


■西日本で起きている「福岡市」一極集中


東京一極集中については、コロナ禍で一時、首都圏への人口流入が止まったが、既に再び首都圏への人口流入が復活しており、批判も強い。


しかし、東名阪以外の政令市の2020年から2024年の4年間の人口増減を調べてみると、福岡市が圧倒していることが分かる。


図表=筆者作成

人口増減率では、仙台市が+0.22%の増加、札幌市が−0.12%、熊本市も−0.27%とほぼ人口が維持できているが、新潟市、静岡市、浜松市、岡山市、広島市、北九州市は大きく人口を減らしている。その一方で、福岡市は4年間で+2.55%という非常に高い人口増加率になっている。


同じ2020年から2024年の人口増加率では、さいたま市が+2.35%と福岡市に近い増加率を見せている以外は、東京都ですら+0.56%の増加率でしかなく、福岡市の強さが際立つ。


首都圏一極集中の陰に隠れてあまり注目されていないが、実は西日本では福岡市一極集中が起きているのだ。


それだけ福岡市には魅力があるということであり、福岡市の魅力が福岡県の魅力に繋がっていると言えるだろう。


----------
宗 健(そう・たけし)
麗澤大学工学部教授
博士(社会工学・筑波大学)・ITストラテジスト。1965年北九州市生まれ。九州工業大学機械工学科卒業後、リクルート入社。通信事業のエンジニア・マネジャ、ISIZE住宅情報・FoRent.jp編集長等を経て、リクルートフォレントインシュアを設立し代表取締役社長に就任。リクルート住まい研究所長、大東建託賃貸未来研究所長・AI-DXラボ所長を経て、23年4月より麗澤大学教授、AI・ビジネス研究センター長。専門分野は都市計画・組織マネジメント・システム開発。
----------


(麗澤大学工学部教授 宗 健)

プレジデント社

「西日本」をもっと詳しく

「西日本」のニュース

「西日本」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ