AIに仕事を任せて人間は「探索」に集中せよ

2月15日(土)6時0分 ダイヤモンドオンライン

Photo:iStock

写真を拡大


発売1カ月で5万部を突破した入山章栄氏の最新刊『世界標準の経営理論』。800ページを超え、約30の経営理論を網羅する大作であるが、章ごとに完結しているため、どこから読んでも良い。いわば辞書のような利用こそが、本書を最大活用する方法の1つだ。


そこで実施しているアンケートを基に、読者の方々にとって最もお気に入りの理論「読者が選ぶベスト理論」をご紹介していく。今回は「知の探索・知の深化の理論」が挙がった。筆者に直に解説してもらおう。(聞き手/DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 小島健志)



日本企業にいま最も足りない視点を投げかけた理論


読者が選ぶベスト理論:第12章、第13章 知の探索・知の深化の理論


理由:イノベーションに必要な要素が知の探索・知の深化の理論によって説明可能です。経営だけでなく、現場の事業を考えるうえでも、さらに人間関係を形成するうえでも、大変重要な教えが凝縮されている理論ではないかと考えます。日常的に意識できる理論である点が、私が気に入っている理由です。


(東京都、渡辺哲也さん)


——「知の探索・知の深化の理論」は、この本の中でも人気のある理論の1つです。入山先生、いかがでしょうか。


入山(以下略):ご感想をお寄せいただきありがとうございます。講演をしていると、圧倒的に「知の探索・知の深化理論」の話と「センスメイキング理論」の話になります。2つの理論とも確実に、日本企業にいま最も不足している視点だと思います。内容はとてもシンプルなのですが、多くの皆さんがうすうす感じていたことを言語化できた点が人気の理由だと思います。


 また、「知の探索・深化」という日本語の名前を付けたことも大きいと思います。もともとは、日本の経営学者たちの間で「探索」(exploration)や「深耕」(exploitation)と呼ばれていました。それを僕が「知の探索・知の深化」と呼び、広めました。


 もう1つ貢献できたとすれば、この図を示せたことです。



 この図は、知の探索と知の深化の関係を2つのベクトルによって示すことができたものです。本書では、知の探索とは「なるべく自身の認知から離れた遠くの知をサーチすること」であり、知の深化とは「すでに得た知を深掘りし、自分のごく目の前だけをサーチすること」と定義しました。


 イノベーションの基本は、「知の深化」を継続する一方で、「知の探索」を怠らない組織であり続けるということです。このことを「両利きの経営」(Ambidexterity)と呼んでいます。


——目の前の深掘りにとらわれず、いかに自分や組織の知らないことを知る機会をつくるかがポイントですね。


 はい。そうはいっても、知の探索にはコストがかかるので、短期的には知の深化を選ぶのが合理的に見えます。ですが、知の深化に傾斜し過ぎると、中長期的なイノベーションが枯渇して、自己破壊を起こす「コンピテンシー・トラップ」に陥ってしまう。それが日本企業の大きな課題であり、この図で表せるのです。


 人間は物事を図で覚えるのが得意です。マイケル・ポーターの何が偉大かと言えば、「ファイブフォース」のフレームワークを思い付いたことよりも、ファイブフォースの図を考えついたところにあると思います。図を見ただけで「ああ、ファイブフォースだ」と皆がわかるようにした。それほど図の印象は大事ですよね。


——知の探索がイノベーションに重要だと理解できても、その活動を日常的に行うのは難しいものです。いかがでしょうか。


 「言うは易し、行うは難し」が知の探索の特徴です。最近、企業の講演で話すのは、まさにここです。知の探索は一見、無駄な投資活動に見えてしまうので、多くの企業が次第にやらなくなります。一方で、知の深化は、これまでの枠組みで決まっていることなので、同じことを繰り返して効率を上げていくことができるので、注力しがちです。


 ですが、知の深化は、人間の手を返さずとも、業務改善や生産性アップができます。同じことを繰り返して効率を上げていくことなので、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などに任せることができる。AIや機械を活用すれば、知の深化に対する負担が減ります。結果的に知の探索ができるようになるのです。


——枠組みが決まっている業務は、プログラムを書くことができるので、AIなり機械なりに任せておけば、効率アップや改善ができる。そして、余ったリソースを知の探索に振り向けられるというわけですね。


 そうです。僕は常に、「知の深化にだけリソースをかけてはダメです」と伝えています。知の探索は人間にしかできないことだと思いますし、その仕事のほうが働いている人にとっても楽しいはずです。

ダイヤモンドオンライン

「経営」をもっと詳しく

「経営」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ