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「悲しみに備える人」が富裕層になれる

プレジデント社2月17日(金)9時15分
画像:「悲しみに備える人」が富裕層になれる
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■お金に無頓着な漁師は、本当に幸福なのか?


幸福になるために、必ずしもたくさんのお金は必要ありません。


前回、僕は、古今東西の人間が人種や性別の差なく「幸せだ」と感じるのは、「セックス」「おしゃべり」「食事」「リラックス」という、ごくありふれた日常生活の行為だ、というお話を大学の研究結果を基にしました(参照:富裕層の哲学「幸福度は、お金ではなく、“昼と夜の営み”で決まる」http://president.jp/articles/-/21191)。


幸せになるのに、お金はそんなにいらない。


この“驚くべき”事実は「メキシコの漁師とMBA旅行者」の話を彷彿させる内容だと僕は思いました。


この話の元となったのはノーベル文学賞を受賞したハインリヒ・ベルの書いた「生産性低下の逸話」で、これが改変されたものがネットに出回っています。以下はその概要です。


▼「生産性低下の逸話」ダイジェスト▼


メキシコのある田舎町。海岸に小さなボートが停泊していた。メキシコ人の漁師が小さな網に魚を獲ってきた。その魚は新鮮でなんともイキがいい。それを見たアメリカ人旅行者は、こう尋ねた。


「すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの?」


すると漁師は「そんなに長い時間じゃないよ」と答えた。旅行者が、


「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。惜しいなぁ」


と言うと、漁師は、自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だと言った。



「それじゃあ、余った時間でいったい何をするの?」


と旅行者が聞くと、漁師は、


「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって……ああ、これでもう一日終わりだね」


すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。


「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、あなたにアドバイスしよう。いいかい、あなたは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。それで余った魚は売る。お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。


その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。やがて大漁船団ができるまでね。そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。


その頃にはあなたはこのちっぽけな村を出てメキシコシティに引っ越し、ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。あなたはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」



■漁師は未来永劫幸福に暮らせるのか?


漁師は尋ねた。


「そうなるまでにどれくらいかかるのかね?」


「20年、いやおそらく25年でそこまでいくね」


「それからどうなるの?」


「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」


と旅行者はにんまりと笑い、


「今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ」


「それで?」


「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。どうだい。すばらしいだろう」


▲以上、「生産性低下の逸話」ダイジェスト▲



前々回の原稿で、僕は、「非地位財」(他人が何を持っているかどうかとは関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの)に対してお金を配分していくことが不毛な競争的消費(浪費)に巻き込まれないことにつながる、と書きました。そして、それは結果的に資産形成への確かなステップともなると(参照:「他人の年収」をスルーできたら富裕層の素質あり http://president.jp/articles/-/20899)。


さらに、この非地位財、例えば「休暇、愛情、健康、自由、自主性、社会への帰属意識、良質な環境」といったものを追求するためには、案外、大きなお金はかからない、ということもお伝えしました(*ちなみに、他人との比較優位によってはじめて価値が生まれる「地位財」とは、所得、社会的地位、車、家などを指し、大きなコストがかかる)。


ならば、「そもそも富裕層になる必要はないのではないか?」と読者のあなたは考えられたかもしれません。


冒頭で述べたように、人間は遠い昔から、セックス、おしゃべり、食事、リラックスという素朴なごく少数の行動があれば、「十分に幸せ」になれます。これも、大してお金はかからないものです。


ならばやはり、そもそも富裕層になる必要などないのではないか?



■幸せな漁師の暮らしは、簡単に崩壊する


先ほど紹介した「メキシコの漁師とMBA旅行者」において、漁師は、MBA取得の旅行者がすすめるようにお金を手段として遣わなくても、すでに自分の幸福に必要なものはすべて手に入れています(妻や子供など愛する人や友人との時間、十分な休暇、あくせくしない日常など)。


なのに、この先20〜25年回り道(旅行者の成功プラン)をしてもう一度同じ場所にたどり着くのに何ほどの意味があるのかということです。


MBA旅行者は、手段としてのお金を稼ぐこと自体が目的となってしまっているということです。であればMBA旅行者は目の前に、すでに目的が実現しているのに気づいていないということでしょうか。


僕は、まるっきり違うと思います。


漁師が今いる状況と、20〜25年の歳月をかけて同じ場所にたどり着く状況の間には表面的には全く違いがないように思えます。


しかし、漁師が漁をしている状況は、未来永劫魚がとれることが前提となっています。自然環境が悪化したり、海水の温暖化によって売れる魚が獲れなくなったりすれば、その生活は終了します。



また、漁師が怪我や病気をしたり、老いて働けなくなったりしたら、やはりそれまでの生活を送ることは困難になるかもしれません。ハリケーンや津波の襲来でその漁村が丸ごと破壊されてしまったらどうでしょう。


3.11の東日本大震災の際、僕はしばらく家族をホテル暮らしさせて準備をしたあとで、都内から岡山に移住させて数年間を岡山で過ごしてもらいました(現在は再び都内在住)。


経済基盤がすべて破壊されるような状況であっても、富裕層には早々にエリアを退避して、別の場所で事業を再開するだけの余力がありました。住宅が津波で流されて二重ローンになったり、借入金のリスケを迫られて資金繰りに窮したり(銀行からの借入金で自前の水産品加工工場を建て、そこに魚を入れる仕事をしていたような人々など)していました。


一方、僕は仙台港近くに所有していたホテルが津波に直撃された状況でも幸い資金が潤沢にあったため、比較的早く、1階部分の修繕やコンピューターシステムの入れ替えなどをすることができました(計5000万円ほどの出費)。さらに、復興関連の工事作業者の人々に宿として貸し出すことができ、その後に転売することにも成功しました。



■富裕層は人生の悲しみを減らすことができる


さて、漁師と旅行者の話に戻りましょう。もし、漁師が「今のままの生活で十分だよ」「生活に満足しているのに、なぜ頑張らないとだめなの?」と感じているとしたら、それは、未来永劫自分に災厄が起こらないと楽観的に考えているからではないでしょうか。


実は、オリジナルストーリーの終わりは、こうなっています。


▼逸話のつづき▼


「でも、僕は、もうそうしているよ(お金を稼がなくても幸福に暮らしている)」


そう漁師に教えられた旅行者は物思いに沈んで、漁師に対する同情(大金を得る好機を逃し、その日暮らししている)など消え去って、逆に、漁師をちょっぴり羨ましく思いながら立ち去ります」


▲以上、逸話つづき▲



漁師の生き方のほうを支持するラストになっています。でも僕なら、こういうふうにラストを締めます。


「僕はもうここにいるよ」


つまり、漁師は実はすでにひと財産作ったあとで、仕事ではなく単なる楽しみで漁師をしていた、という設定。MBA旅行者が20〜25年かけて到達すると語ったステージに到達済みで、自然災害など不測の事態が起こってもその生活を将来続けるだけの資力が十分にあった、と。そんな結末にしたいですね。


ブリティッシュ・コロンビア大学と、ミシガン州立大学の教授らがアメリカ人1万2291人を調査・分析した結果(2015年)、面白いことが分かりました。


収入(の多さ)は日々の幸福感をもたらすのにほとんど影響はないが、悲しみのようなネガティブな感情を減らすのに役立つ、と(参照:https://www.researchgate.net/profile/Kostadin_Kushlev/publication/271732463_Higher_Income_Is_Associated_With_Less_Daily_Sadness_but_not_More_Daily_Happiness/links/54dbc58b0cf28d3de65cc05d.pdf


なぜ、収入(お金)がネガティブな感情を減らすのに役立つのか。それは、ネガティブな感情を引き起こす事柄・事象に対して、お金持ちが(対策として)費やす時間は、お金がない人に比べて少なくできるからなのです。


例えば、雨漏りが発生した場合、お金持ちはすぐに修理することでストレスを解消できますが、修理代を支払う余裕のない人にとってそれは数カ月にも及ぶ苦しみにもなる。


お金持ちは悲しい事態に対しても、それを一定程度コントロールできると感じているため、お金がない人々と比べて悲しみを和らげることができるのです。


お金は幸福を増やすものというよりも、悲しみに対する緩衝材の役割を果たすというのがこの論文の結論です。


漁師に訪れる災厄の緩衝材、それこそが富ではないでしょうか。


*筆者・金森重樹氏にお金に関する悩み相談をしたい方は、下記URLのフォームにご記入ください。
*受け付けた質問の一部に関して、金森氏が記事内で回答する場合があります。なお、金森氏より質問者に連絡することは一切ございませんし、営業目的に利用することもございません(記入フォームにアドレスなど連絡先の書き込み欄はありません)。
https://docs.google.com/forms/d/1QL5Ik3u31anl6QRjpkUdgZw7NqKS4EpmVd3cIUVz82s/viewform


(行政書士・不動産投資顧問 金森重樹=文)

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データ提供元:アニメキャラクター事典「キャラペディア