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高学歴ワーキングプア「ポスドク問題」は解決できたか!?

プレジデント社2月17日(金)9時15分
画像:日本電気で働く海老原章記さん。
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日本電気で働く海老原章記さん。

2016年10月、海老原章記さんは日本電気(NEC)に入社した。東京大学卒業後、米国ロックフェラー大学に学び、2015年には博士号を取得している。現在の所属は、データサイエンス研究所。大学院で研究を続けてきた視覚神経科学の知見を活かして、NECが世界一を誇る顔認証技術での活躍を期待されての配属だった。


海老原さんは将来の進路をアカデミアだけに絞ることはせず、就職先の研究室をアメリカで探す傍ら日本企業にも選択肢を広げていた。そのとき目に留まったのが「PRESIDENT Online」の記事(「高学歴ワーキングプア『ポスドク問題』は本当に解消できるのか!?」http://president.jp/articles/-/16855)である。現在NECで活躍されている海老原さんを取材した。


■10年後の自分がどうなっているかを考えた


——東京大学、そしてアメリカの大学院では何を学んでいたのですか。


日本電気で働く海老原章記さん。

東大時代は、理学部生物化学科におりました。ロックフェラー大学は、もともと医学研究所で、古くは野口英世、最近では昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典教授が在籍した大学。いまは生物系の大学院大学です。学部というものがなく、学生はみんな生命系の研究をしています。私は脳の研究、具体的には霊長類の顔認識。私たちが他人の顔を見たときに、脳がどのように活動して、どんな情報を伝えるかを調べていました。


霊長類の脳には、顔を見たときに活動を高める「顔ニューロン」という神経細胞が側頭葉を中心に局在しています。大学院では、fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)と電気生理学的手法を組み合わせて、顔ニューロンの活動を計測し、統計学と数理モデルを用いた解析によって、顔に関する情報がどのように伝えられるかを日夜探っていたわけです。


——当然、将来はそうした分野で活躍しようと。

進路を検討する際は、10年後の自分がどうなっているかを考えることにしています。学部卒業当時は分子生物学が全盛で、DNAやゲノムという言葉が飛び交っておりました。しかし、私のやりたい神経科学の研究環境はまだ整ってはいなかったので、アメリカ行きを決めました。その際、指導教官に「やはりトップでなければ意味がないだろう」と励まされて、アメリカで世界トップクラスの研究が行われているロックフェラー大学を選んだわけです。


留学している間、いろんなことを経験するはずですし、人間的にも成長していないといけない。進路については、アカデミアとかビジネスにはこだわらず、いろいろな選択肢から探すつもりでした。アメリカに残るにしても、帰国する場合でも、自分の直感に従ったほうがいいと思いました。



■自分の市場価値は問題発見能力と問題解決能力


——その結果、ビジネスの世界を選んだわけですね。


私が大学院に行こうと思っていた頃はまだ、「博士になったら会社に就職できない」とよく言われていました。博士はプライドが高い、研究分野が狭すぎて応用が利かないといった先入観もその風潮を後押ししていたように思います。


けれども、私にしても1つの研究を成功させるために、100のテーマを考え、その9割はうまくいかず、残り1割も早い者勝ちで、先に目を付けた課題で仮説と検証を繰り返してきました。それによって培われるのは、問題発見能力と問題解決能力にほかなりません。こうしたトレーニングを5年、10年と続けてきた結果が博士号取得につながります。しかも、これらは汎用的な能力ですから、ビジネスの場でも間違いなく使えるはずです。そして、それが自分の市場価値です。


NECに魅力を感じたのは、やはり技術力。既存のデータから抽出すべきものが何かを設定して、画像処理・解析の精度を上げることに取り組まれていて。その際、生物の特性を機械的なアプローチに応用することで、意外なブレークスルーが起こることは十分にありえます。そういう新しい風を吹き込みたいと考えました。


——入社後まだ数カ月ですが、この間の手応えは。

アメリカに約9年いて、世界の各国から集まった学生と交流していると、日本人としてのアイデンティティを意識しはじめます。日本が好きになり、日本のために働きたいと気持ちが湧いてきたのです。その意味で、いまの職場には満足しています。周囲の仲間も、ドクターも多くいて、文字どおり切磋琢磨していける環境です。


研究所のヒューマンセンシングというセクションにいますが、センシングというのは計測のこと。顔認証のほかにも音声認識や群衆動態解析にも関わっています。とにかく、直属の上司は私の能力ギリギリのところに仕事をふってくれます。適度に負荷もかかるので学習効率が高くなり、やりがいがあります。


——「ポスドク問題」はアメリカにもありますか。

日本と同じように大きな問題で、アメリカでもポストがありません。ただ、アメリカは多くの大学があるので、たくさん応募すればどこかの大学で職を得られるかもしれません。それで自分が納得できるかどうかが問題です。また 、アメリカのポスドクは私と同じように、アカデミアだけでなく企業にも目を向ける傾向が強いです。その一方で起業する人も少なくないですし、日本の「ポスドク問題」とは少し違うかもしれません。


(ジャーナリスト 岡村繁雄=文)

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データ提供元:アニメキャラクター事典「キャラペディア