体重5キロ減で健康と年100万円の"不労所得"が手に入る…医師の助言で荻原博子さんが真っ先に始めたこと
2025年2月18日(火)10時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/rai
※本稿は、荻原博子、鎌田實『お金の貯まる健康習慣』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/rai
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■「まずは5キロやせましょう。それだけで寿命が1年延びますよ」
【荻原博子(以下、荻原)】私、5年ほど前にひどい腰痛に悩まされた時期があったんです。椅子から立ち上がろうとした瞬間に、腰がハンマーで殴られたみたいに痛くなって悲鳴を上げてしまいました。人生であんなに痛い思いをしたことはないっていうくらいです。
【鎌田實(以下、鎌田)】それは大変だ。原因は?
【荻原】初期の座骨神経痛でした。座り仕事ばかりで、運動不足が原因です。私は1日8時間、忙しいときには12時間以上もパソコンに向かっているんです。仕事でなくてもパソコンで映画を見たり……。運動なんて朝晩の犬の散歩くらいだったんです。
【鎌田】確かに腰に負担がかかりそうな生活ですね。1時間に3分でいいから、体を動かすようにしたほうがいいんだけどね。
【荻原】おっしゃるとおりです。でも原因はもうひとつあって、体重が増えたことで腰に負担をかけているとも言われました。医者が「まずは5キロやせましょう。それだけで寿命が1年延びますよ」って。
【鎌田】正解です。体重が重すぎていいことは何もない。
【荻原】やはりそうなんですね。調べてみると、アメリカでは平均寿命より早く亡くなる人の5人に1人は太りすぎだそうです。それで「やせよう!」って決めたんです。
【鎌田】それは立派ですね。何歳のとき?
【荻原】68歳のときです。実を言えば、50代のときには鍼(はり)と断食で20キロやせた経験があるんです。でも結局、「食べないダイエット」は長続きしないんですよね。それで今回は、「夕食は夜8時までに食べ終えて、翌朝10時までは何も食べない」「食事は野菜中心にして、主食は玄米」「間食はなるべくしない」という3つを実践しました。
【鎌田】いいですね。厳しい食事制限をしちゃうと、ストレスもたまるし、生きる楽しみがなくなっちゃうからね。
【荻原】そうなんですよ。だから今回は少しゆるめにしてみたんです。それでもちゃんとやせたんです。
【鎌田】ぼくも60代後半のときに80キロになって、72キロまで体重を落としたことがあったんです。軽い脊柱管狭窄症があって腰痛にも苦しみました。ぼくの場合、筋肉を鍛えることで改善したし、体重も落ちたんですよ。
【荻原】体調をくずすと、あらためて「健康こそ財産」「健康こそ節約」と思いますね。私はそれで『5キロ痩せたら100万円 「健康」は最高の節約』(PHP新書)という本を書いたくらいです(笑)。
【鎌田】5キロやせたら100万円? それはどういう計算式なの?
■健康なら年100万円の“不労所得”が手に入る
【荻原】国民年金は、もらう時期を1カ月先延ばしするごとに、支給額が0.7%ずつ増額されます。「繰り下げ受給」っていうんですけど、仮に65歳でもらえる年金が月額6万円だった場合、70歳からもらうと8万5200円に増えます。1年間だと約102万円になる。でもこれは死んだらもらえません。繰り下げ受給をする場合、長生きしないと損しちゃうんです。だから、私がもし5キロやせて寿命が1年延びたら、102万円もらえる期間も延びる、ということです。「5キロやせたら100万円!」そう思ったら、ちょっとやる気が出てきました(笑)。
【鎌田】そういうことか! いい考えですね。
【荻原】やせたのは5キロ弱ですが、1年前と比べて健康診断の数値がすごくよくなりました。「危険水域ですよ」と言われていた血圧も、標準値に戻ったんです。
【鎌田】大成功ですね。
■メタボになると月々の医療費負担は3万円アップ
【荻原】太ると腰やひざに負担がかかるというのは実感しましたが、メタボリックシンドロームになる危険性も高まるんですよね。
【鎌田】そうです。メタボリックシンドロームって「内臓脂肪症候群」ともいわれるんですよ。脂肪は脂肪でも、内臓につく内臓脂肪が悪さをするの。
【荻原】指でつまめるのが皮下脂肪、内臓についておなかがパーンと盛り上がるのが内臓脂肪、ですよね。
【鎌田】そのとおり。内臓脂肪は、皮下脂肪よりもはるかにタチが悪いんす。ぼくが80キロにまで体重が増えたときも、内臓脂肪がすごかった。当時の写真を見ると、おなかまわりがはち切れんばかり。あれはかなり危険だったと思います。
【荻原】いわゆる「リンゴ型肥満」ですよね、男性に多い肥満のタイプ。女性の場合は皮下脂肪が多い「洋ナシ型肥満」で、内臓脂肪はつきにくいと聞きますが……。
【鎌田】女性も更年期以降は内臓脂肪がつきやすくなりますから、要注意です。
【荻原】そうですか! やっぱり太ってはいけませんね。
【鎌田】内臓脂肪が増えると、体にいろんな悪さをするんです。血液中のコレステロールや中性脂肪が増えて血液がドロドロになる「脂質異常症」や、糖尿病の原因になる「高血糖」、そして「高血圧」です。そのせいで心筋梗塞や脳梗塞、大動脈瘤りゅう、腎機能の低下などが起こりやすくなります。脂肪肝にもなります。脂肪肝は肝臓がんの原因になるんです。
【荻原】メタボにならないことは、お金の面でもとても重要ですよね。たとえば厚生労働省の調査では、メタボの人はそうでない人に比べて医療費が余計にかかることがわかっています。60代の女性の場合、年間10万円以上の差が出るそうです。
【鎌田】医療費が10万円以上増えるということは、健康保険が3割負担だとして、1人あたり年間3万円以上負担が増える計算になりますね。
■不健康だとお金がどんどん逃げていく
【荻原】年間3万円は大きいですよ。しかも高血糖から糖尿病になってしまうと、さらにお金がかかります。個人的にショックだったのは、体重が増えれば増えるほど糖尿病の合併症を併発しやすくなるということです。失明したり、人工透析になったりすると聞いてゾッとしました。
【鎌田】糖尿病の合併症は怖いですよ。三大合併症っていわれているのが、神経障害、網膜症、腎症。血行障害になると抹消まで血流が行き渡らなくなって、脚が壊疽(えそ)してしまうこともあるんです。
【荻原】ひどい場合には切断することになるんですよね。
荻原博子、鎌田實『お金の貯まる健康習慣』(主婦の友社)
【鎌田】網膜症になると視力低下、白内障などを引き起こします。さらに怖いのは、腎症です。むくみなどがひどくなり、進行すると人工透析や腎移植が必要になる。人工透析になると、週3回、1カ月で約12回透析をすることになります。医療費としては年間480万円もかかる。もちろん医療保険や高額療養費制度がありますから、個人の負担は年間40万円程度になりますが、死ぬまで払い続けなくちゃいけない。特定疾病療養費制度などによる軽減も行われていますが……。
【荻原】しかも週3回は病院に行って、半日くらいかけて透析を受けなくちゃいけないわけですよね。お金だけでなく時間もかかる、やりたいこともできない。「今日も透析に行かなくちゃ」という強迫観念みたいなものもストレスになりそうです。
【鎌田】だからね、やっぱり自分の体重には敏感になったほうがいい。
【荻原】BMIが30以上になると、糖尿病の医療費が標準(BMI23)の人の2.5倍になるそうです。まずは自分の体重をちゃんとコントロールしなくちゃいけませんね。
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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
1954年、長野県生まれ。経済ジャーナリストとして新聞・雑誌などに執筆するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとして幅広く活躍。難しい経済と複雑なお金の仕組みを生活に即した身近な視点からわかりやすく解説することで定評がある。「中流以上でも破綻する危ない家計」に警鐘を鳴らした著書『隠れ貧困』(朝日新書)はベストセラーに。『知らないと一生バカを見る マイナカードの大問題』(宝島社新書)、『5キロ痩せたら100万円』『65歳からはお金の心配をやめなさい』(ともにPHP新書)、『年金だけで十分暮らせます』(PHP文庫)など著書多数。
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鎌田 實(かまた・みのる)
医師・作家
1948年、東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院に赴任。「地域包括ケア」の先駆けをつくり、長野県を長寿で医療費の安い地域へと導く(現在、諏訪中央病院名誉院長)。現在は全国各地から招かれて「健康づくり」を行う。2021年、ニューズウィーク日本版「世界に貢献する日本人30人」に選出。2022年、武見記念賞受賞。ベストセラー『がんばらない』(集英社文庫)ほか書多数。チェルノブイリ、イラク、ウクライナへの国際医療支援、全国被災地支援にも力を注ぐ。現在、日本チェルノブイリ連帯基金顧問、JIM-NET顧問、一般社団法人 地域包括ケア研究所所長、公益財団法人 風に立つライオン基金評議員ほか。
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(経済ジャーナリスト 荻原 博子、医師・作家 鎌田 實)