日本のファーストカーの安全性に改めて迫る。「軽自動車は事故に弱い」はもう古かった!

2月18日(火)11時30分 週プレNEWS

普通車と軽自動車の合算では3年連続、軽自動車のみだと5年連続の新車販売台数首位に輝いたN−BOX。ホンダで過去最高となる年間25万3500台を売った
普通車と軽自動車の合算では3年連続、軽自動車のみだと5年連続の新車販売台数首位に輝いたN−BOX。ホンダで過去最高となる年間25万3500台を売った

昨年の新車販売ランキング上位10車種の半数が軽自動車に! 最近は「ファーストカー」として使われているようだが、本当に安全面に不安はない? 自動車ジャーナリストの小沢コージが迫った。

■ホンダの研究所で軽の衝突実験を取材!

自動運転? EVシフト? ある意味ちゃんちゃらおかしいぜ! 2020年、自動車業界の真のテーマは「今、軽は本当に安全なのか!?」に決まっている。問答無用で軽が売れまくっているからだ。

昨年、ニッポンで最も売れたクルマは25万台を突破したホンダのN−BOXだった。ぶっちぎりの1位で3年連続トップに輝いた。2位も軽のダイハツ・タントが17万台超えと伸ばしていて、実は普通車1位は12万台超のトヨタ・プリウスで全体5位。ベスト10のうち半分は軽自動車で、単純にN−BOXはプリウスの倍以上も売れているのだ。

片やEV日本代表の日産リーフは2万台弱で普通車ランキング38位。オザワに言わせると、「コレのどこがEVシフトなんだ?」って話よ。

とにかく今、軽はニッポンの新車販売の34%強を占めており、なかでも両側スライドドアのハイトワゴンが国民の足となっている。もっと言えば、今のニッポンで軽はファーストカーとして使われ始めている。

高速道路でもよく見るし、実際、オザワも愛車N−BOXで箱根に行くし、先日は家族とスキーにも行った。走行性能的には200km走っても疲れは普通車と遜色なく、それどころか先進安全のホンダ・センシング標準なので高速では追従オートクルーズも使えてステアリングを握っているだけ。すでに軽自動車は、ファーストカーとしての実力を備えているのだ。

しかし軽が本当に安全かって話になるとコイツは難問だ。安全というのは相対的なもので、ぶつかる相手、ぶつかる方向、ぶつかる場所によって大きく異なるからだ。 

事実、衝突安全性の指針としてNASVAこと自動車事故対策機構が、JNCAPという衝突安全性能アセスメントを発表しているが、基本的に同じクラッシュテストをして、軽総合1位は2017年のN−BOXで、JNCAP最高評価の5スターとなる184.1点。

一方で、ミニバン1位はマツダCX−8が同じ5スター&193.9点と上だが、ミニバン2位はトヨタ・ヴェルファイアの4スター&182.9点でN−BOXより低い。デカいヴェルファイアよりN−BOXのほうがマジで安全なのかって話なのだ。

ただし実はこの話には裏があり、単純に「衝突安全性能」といっても、車内の乗員保護性能と、車外でぶつかる歩行者保護性能の合算。そこにシートベルト性能も加わる。そして乗員保護性能では、3つのクラッシュテストがある。

具体的には、フルラップクラッシュ(フロント全面が壁に当たるケース)と、オフセットクラッシュ(フロント半分が壁に当たるケース)と、台車が側面に当たるサイドクラッシュであり、なかでもフルラップクラッシュは鏡みたいなもので、軽なら軽、自分と同じ重量のクルマとぶつかるケースの被害想定だ。つまり、自分より重いクルマとぶつかる事故の衝撃はわからないってわけだ。

しかしさすがは新国民車・N−BOX! 昨年、ホンダは栃木県にある研究所に報道陣を招き、N−BOXと車重比で1.5倍となるインサイトの、オフセットクラッシュを大胆公開している。

ラップ率(ぶつかる面積)は50%で、衝突速度は共に時速50キロだから相対速度は時速100キロ。車重比により、エネルギー的にN−BOXのほうが衝撃が大きく、時速60キロ以上の衝突に匹敵するという。

この実験は昨年、ホンダの研究所内にある屋内型全方位衝突実験施設で行なわれた。N−BOXは半回転して停止した
この実験は昨年、ホンダの研究所内にある屋内型全方位衝突実験施設で行なわれた。N−BOXは半回転して停止した

オザワの目の前で「ガッチャーン!」とかなり心臓に悪い音でぶつかった両車。驚いたのはN−BOXのほうが明らかに遠くまで飛び、スピンしていたこと。やはり軽いほうが被害はデカい。

だが、安心したのはN−BOXの生存空間が確保されていたこと。ドアは普通に手で開けられたし、ダミー人形の足にペダルが食い込んでいたり、内装部品に挟まれていて救助できないということもなかった。

ちなみにホンダ車はコンパティビリティ(共存性)と言って、重いクルマをより柔らかく造って衝撃を多く受け止め、軽いクルマを硬く造ってキャビンを守るという思想がある。要は軽が"おまめ"扱いされているわけだが、それにしてもグチャグチャのN−BOXのドアが普通にパカッと開いたのにはビックリ。確実に今の軽は進化しているのだ!

衝突実験によって運転席側の前が完全につぶれてしまったN−BOXだが、ドアは普通に開閉。ダミー人形も無傷だった
衝突実験によって運転席側の前が完全につぶれてしまったN−BOXだが、ドアは普通に開閉。ダミー人形も無傷だった

■今、軽自動車の安全が超絶進化している理由

軽自動車の進化の背景には1998年の軽規格改定がある。ボディの全長が10cm、幅が8cmも拡大されて、今の全長3.4m×全幅1.48mという規格になった。

もちろん小型車枠の全長4.7m×1.7mの頑丈さにはかなわないが、幅8cmは相当な余裕を生み、この規格改定以降、軽は登録車と同じクラッシュテストを受けるようになり、当時、軽の開発者は口をそろえ、「もはや軽自動車の衝突安全性はコンパクトカーと同等。逆に5年前の普通車よりも安全です」と言い切っていた。

もちろんケースによっては軽が不利な場合もある。例えば現在JNCAPでは、ボディの後ろから突っ込むクラッシュテストはないし、後ろにトランクのあるセダンに比べ、構造物がない軽ワゴンは厳しいに決まっている。

だが、そもそもJNCAPでは、後席にダミーを置いて衝撃を計測するテストはオフセットクラッシュ時しかなく、サイドや後方からぶつかった際の後席の安全性は微妙なのだ。往々にして自動車メーカーは、「社内規定で見ています」と言うが、お値段の張る高級車でもリア席がどの程度安全なのかは公的テストではわからないのが実情だ。

ちなみに今どきの軽の安全性は、衝突安全性能だけでは決して測れない。というのも、オザワがN−BOXを購入した第一の理由は、軽に初めて標準装備されたホンダセンシングにある!

軽は先進安全競争に入っている。先進安全性能とは要するに「ぶつかる前に止まっちゃえ大作戦」のこと。2010年にスバル・レガシィがアイサイトで先鞭(せんべん)をつけた衝突被害軽減ブレーキを、ダイハツが12年のマイチェン時のムーヴにわずか5万円で装着。以来、ダイハツ、スズキ、ホンダの軽の先進安全競争は激化!

17年デビューの2代目N−BOXはいきなり先進10機能をテンコ盛りにしたホンダセンシングを標準装備した。そこには路外逸脱抑制や標識認識など、当時の他車にはない機能もあり、オザワはN−BOX購入を決めたわけだ。

実際、そういう声は多いようで、N−BOXの担当エンジニアは「フルモデルチェンジを前倒しにしても、ホンダセンシングをN−BOXにつけたかった」と語っていた。昔は装備が全然なかった軽だが、今は先進安全イメージがないと逆に売れないのだ。

ニッポン軽自動車安全バトルは過熱しまくっている。昨年、日産と三菱勢はそれまで普通車にしか搭載しなかった自動運転機能「プロパイロット」を日産デイズと三菱eKシリーズに装着。

実質150万円台で発売した。同じく昨年フルモデルチェンジを受けて進化したダイハツ・タントはついに高速で完全停止する追従オートクルーズ付き最新スマートアシストを装備して話題となった。今、軽自動車はヘタな普通車をしのぐ安全装備を満載しているのだ。

ちなみに昨年、オザワはとんでもない衝突実験を実際に受けた。家族が運転するN−BOXの右折時、右後方側面より営業車がヒット。自らクラッシュテストをするハメに! 推定衝突速度は時速40キロ。かなりの衝撃であり、運転席のオザワ兄は「リアが左に10m飛んだ!」と言い、軽いむち打ちになった。

当然、右リアは大きくへこんだが、右スライドドアは普通に開き、何より廉価版N−BOXのGホンダセンシングにオプション装着した、後席サイドカーテンエアバッグが開かなかったのにはビックリ!

オザワの愛車N−BOXの運転席側後部に営業車が衝突。しかし、ボディは大破することもなく、事故後も普通に走ったという
オザワの愛車N−BOXの運転席側後部に営業車が衝突。しかし、ボディは大破することもなく、事故後も普通に走ったという

担当セールスは「それほどの衝撃じゃなかったんでしょう」とあっさり言い、オザワは「ウソだろ!?」と思いつつも、とりあえずN−BOXの頑丈さを実感したし、事故直後に普通にN−BOXが走ったのにも驚いた。

ただ、エアバッグは開かなかったクセしてなぜかSRSユニット交換で5万円は許せん! ディーラーいわく、「ショックは入ったので」と言ってたけどホントかよ? 軽も事故に強くなったけど、その分高くなってるぜ!

取材・文・撮影/小沢コージ 写真協力/本田技研工業

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