新型コロナウイルス対策としての在宅勤務ノウハウ

2月21日(金)6時0分 JBpress

新型コロナウィルスの感染拡大は企業にテレワークの必要性を迫っている

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 新型コロナウイルスの感染者や感染地域が増えるにつれ、最初に「全社員、在宅勤務」宣言をしたGMOインターネットをはじめ、メルカリ、日本たばこ、双日、東京都など、多くの企業や団体において、新型コロナウイルス対策としての「在宅勤務」の実施が報道されている。

 中小企業においても、IT関連企業が続々と在宅勤務のリリースを出している。

 とはいえ「IT企業や大企業は在宅勤務ができるけど、ウチは無理」、あるいは「できるものなら在宅勤務させたいけど、方法が分からない」と、踏み出せない企業も少なくないのではないだろうか。

 しかし、今や「非常事態」である。

「テレワーク導入は、簡単ではない」「慌てて制度を導入しても、効果が出ない」と言い続けてきた筆者ではあるが、こだわりを捨て、新型コロナウイルス対策として、「今、できる在宅勤務」のノウハウをお伝えしたい。


「在宅勤務ができない」理由

 まず、社員の感染リスクを減らすため「在宅勤務」を実施したいと思っても、「ウチはできない」と考える理由を7項目にまとめてみた。

(1)在宅勤務制度がない

 就業規則に記載されていない。また、あるけど、「事情がある社員が週1日」だけ。

(2)絶対に家でできない職種がある

 店頭での接客サービス、工場での物理的作業、機材を使う研究などは無理。

(3)紙での仕事が中心である

 伝票や契約書など、紙での作業が中心で、パソコンで仕事ができない。

(4)ノートパソコンやスマートフォンが全員分ない

 会社のパソコンはデスクトップパソコン。新規購入して配布は現実的でない。

(5)就業中の時間管理ができない

 仕事をさぼったり、ダラダラ仕事をしたり、逆に働きすぎになるのが心配。

(6)コミュニケーションがとれないと仕事にならない

 いわゆる「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」ができない。1人でできる仕事がない。

(7)セキュリティが保てない

 情報が漏洩したら大変。会社のセキュリティポリシーに反することはできない。


「非常時の在宅勤務」のポイント

 繰り返しになるが、ここからは「非常時」という前提のアドバイスである。

 実施すると、「生産性が低下する」「社員が混乱する」「在宅でできる仕事が足りない」などの問題を、引き起こす可能性大である。

 しかし、今回は最大の目的を「社員を出社させない」ことに置きつつ、「事業を止めない」在宅勤務を目指すことにした。

 ただし、適切なICTツールを最大限に活用することで、その「マイナス」を最小限にすることもできる。一つひとつ課題から見ていこう。

(1)在宅勤務制度よりも、環境の整備を

 たとえ在宅勤務制度がなくても、「トライアル(試行)」として実施すればいい。

 最小限の「ルール」を設定する必要はあるが、細かなルールは、これから決めていくというスタンスでも良い。重要なことは、PDCAである。

 また、突然、1人で在宅勤務をすると、社員は孤独を感じ不安になる。今回のような非常時には、詳細な制度よりも、在宅勤務でも、いつもの「コミュニケーション」と「モチベーション」をいかに維持できるか、にこだわるべきだ。

(2)可能な人から在宅勤務、できない場合は時差通勤

 接客や工場勤務など、自宅ではできない業務は必ずある。しかし、だからといって社員全員が危険を冒して会社に行く必要はない。

 非常時であることを前提に、1人でも多くの社員の安全を確保するというスタンスで、「在宅勤務」を会社が指示すべきだ。

 また、会社や店舗、工場に通勤する場合でも、営業時間や稼働時間を調整することで、満員電車を避ける施策は可能なはずだ。

(3)今日からペーパーレスを実施

 過去の情報を含めた社内全体のペーパーレス化は、相当な時間と労力がかかる。

 ここは思い切って過去は捨て、「今日から始める」で取り組んではどうか。「今日から作成する資料は、すべてデジタルファイルが原本」として、クラウドストレージで共有する。

 過去の紙資料は、必要になったときに、出社担当の社員がスキャンして、アップすればいい。

 たとえば、「紙の伝票をエクセルに入力する」という仕事があったとしよう。今日、必要な紙の伝票を、出社担当がまとめて、スキャンや写メを撮り、クラウド上のストレージにおく。

 在宅勤務者は、それを見ながらエクセルに入力して、クラウドに保存する。

(4)機器やネット環境は、社員の協力も必要

 会社のノートパソコンを支給されている人は持ち帰り、デスクトップパソコンのため持ち帰れない人は、宅配便で送ればいい。

 毎日送ることはできないが、今回は、長期戦を想定する必要がある。

 自宅にパソコンがある人は、「リモートデスクトップ」というICTツールを使えば、自宅から会社のパソコンを安全に操作することができる。

 また、自宅でのインターネット環境については、個人で契約している自宅回線を使うか、ワイファイルーターの貸与となる。

 一方で、最近は、個人でスマートフォンを持っている人がほとんどだ。通勤のリスクを考えると、社員に一時的な「BYOD(個人の機器を仕事で利用)」に協力を要請してもいいのではないか。

 自宅回線と個人のスマホ利用が可能であれば、後述の「コミュニケーション」や「時間管理」で活用できる。

(5)ICTツールで「時間管理」と「モチベーション維持」

 メールで上司に「始業・終業」を連絡するというルールの企業も少なくないが、毎日、全員だと上司が大変になり管理も難しい。

 ウエブで打刻ができるタイムカードツールの活用をお勧めする。スマホで打刻できれば、より便利だ。

 また、部下の在宅勤務時は、「仕事が見えない」という管理職の悩みも出てくる。

「業務の見える化」ツールを活用してはどうか。就業時間中の作業画面をランダムに保存して一覧表示したり、利用しているアプリの比率をグラフ化したりできるツールもある。

 部下を監視するのではない。こういったツールを活用することで、在宅勤務でも会社にいるときと同様の「緊張感」を持って仕事をすることが可能になる。

(6)会社で一緒に仕事をしているのと近いコミュニケーションを

 日本企業の仕事は、欧米のように「個人主義」ではなく、「チーム」で進める形が多い。結果、いわゆるチーム内での「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」が重要だ。

 在宅勤務により、メンバーが離れてしまうと、仕事が進まないことが懸念される。

 テレビのニュースなどでも、「テレビ会議を活用」というシーンが出てくる。しかし、これまで使っていない企業にとっては、大変である。

  実際つなげるまでに大騒ぎするというケースは少なくない。

 テレビ会議ツールというと、たいそうな印象があるが、パソコンやスマホでできる「ウエブ会議」だ。

 今回のような非常時に、おすすめの使い方は、始業から終業時間までチームでつなぎっぱなしにすることだ。

 必ずしも顔を映さなくていい。大切なのは、一緒に仕事をしている感覚であり、いつでも気軽に声がけができる、チャットができる、会議ができる環境である。

(7)すべての情報を守る、にこだわらない

 テレワーク(本来の仕事場以外の場所で働く)においては、情報漏洩が心配されがちだ。

 しかし、実際に「テレワーク」ゆえに発生した大きな漏洩事件は、私は聞いたことがない。

 ビジネス的に、セキュリティルールを守ることは重要であるが、それにこだわり、「在宅勤務」ができず、結果として社員の安全を守れないのは本末転倒ではないだろうか。

「自宅に業務情報を一切持ち帰ってはいけない」ではなく、「どの情報なら、万が一のことが発生しても大丈夫か」を考え、非常時のみの対応として「一部の許可」を出してはどうだろうか。

 また、セキュリティをしっかり確保したい業務の担当者に関しては、やはりICTツールの力を借りよう。

(4)でも紹介したリモートデスクトップツールなら、自宅にいながら、安全に会社のパソコンを操作できる。


未来のテレワークにつながる挑戦

 在宅勤務は、国が推進する「テレワーク」という働き方の一つの形態に過ぎない。

 しかし、今回のようなウィルス感染においては、「社員の安全」と「事業の継続」を両立させる、重要な働き方となる。

 新型コロナウイルスの感染回避のためだけに、無理をして「在宅勤務」を実施すると、「生産性低下」を招くかもしれない。

 しかし、自社の課題や対策、メリットを認識することができれば、この挑戦は決して無駄にはならない。

「テレワーク」は、新型コロナウイルスに限らず、日本が直面する様々な課題を解決し、社会のキーワードと関連する働き方である。

 今回の事態は悲しいことではあるが、それを乗り越えて次の一歩を踏み出す機会になることを願っている。

筆者:田澤 由利

JBpress

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