地味な駅だった「田町」周辺に企業が続々と本社移転するワケ

2月21日(水)7時0分 NEWSポストセブン

msb田町ステーションタワーのイメージ(三井不動産HPより)

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 東京五輪を睨んで都心部はいまだ、あちこちで再開発ラッシュが続いているが、五輪後の2020年以降に最も注目を浴びそうなのが、“湾岸ベルトライン”とでも呼べる新橋から品川にかけてのエリアである。


 新橋駅はゆりかもめの起点でもあり、ニュー新橋ビルを含む再開発では野村不動産とNTT都市開発が名乗り上げている。次の浜松町駅も東京モノレールの起点で、羽田空港を結ぶ利便性もあって再開発が活発だ。


 駅を挟んだ西側では世界貿易センタービルの後方ですでに高層ビルが全貌を見せ、貿易センタービル自体も2019年には解体、その後に新たなビル建設が待っている。一方、同駅の東側では東芝本社ビルの再開発が決まっており、野村不動産が高層のツインタワーを手がけることになる。


 さらに隣の田町駅周辺は後述するとして、2003年に東海道新幹線の停車駅となり、2027年開業予定のリニア新幹線では始発駅となる品川駅。同駅は新幹線に加え、前述の浜松町駅よりもさらに羽田空港へのアクセスがいいことから、将来的には一大再開発エリアとなる可能性が高い。


 同駅周辺の主な地権者はJR東日本や京浜急行電鉄、西武ホールディングスの3社で、この3社が再開発では鍵を握っている。そして、品川駅と田町駅の中間点に山手線新駅が新設される予定(2020年に暫定開業、2024年から本格運用)だが、この新駅周辺でもオフィスビルやタワーマンション7棟の建設が決定済みだ。


 また、品川駅周辺はかつて“新三菱村”と称された時期もあった。三菱商事が先行して品川駅隣りの天王洲エリアで再開発を主導したほか、三菱重工業が2003年に品川のビルに本社を移転し、一時期は三菱商事の複数の部門が同ビルに入ったり(その後丸の内に本社ビルが完成して退出)、三菱自動車工業も2003年に田町から品川に本社を移転した時期がある。三菱自動車の場合、わずか4年後の2007年に再び田町のビルに本社を戻しているのだが、当時は同社の主力工場がある京都に本社を移転することも検討されたらしい。


 そこで本題の田町駅である。同駅周辺に本社を置く企業と言えば、真っ先に名前が挙がるのは、ロケットビルという別称もあったNECのビルや森永製菓、それに三菱自動車あたりだったが、前述したように羽田空港との結節点となる隣の浜松町や新幹線も停まる品川駅に比べ、地味な印象だったことは否めない。


 だが、結節点でない分、浜松町駅や品川駅周辺の新しい高層ビルに比べればオフィス賃料はやや低い設定のところが多いはず。それでいて、浜松町駅と品川駅の間に位置するアクセス的な利便性は今後、さらに注目される公算が高い。


 つまり本社を置くロケーションとしては、よりコストパフォーマンスの高さが期待できるといえる。そうした理由も含めて近年、この田町駅周辺に本社移転をする企業がかなり増えてきているのだ。


 まず、TDKが日本橋から2013年4月に移転。これは旧本社があった日鉄日本橋ビルが建て替えとなったことによるもの。さらに2016年春にはバンダイナムコグループが東品川から住友不動産三田ビルに移転。


 そして今年に入ると、ミドリムシを活用した機能性食品などで有名なユーグレナ。同社はもともと芝に本社を置いてはいたが再度、三井不動産と清水建設が手がける田町エリアの新しいビルに2月に移転した。前後して1月末には、「アロハテーブル」などの飲食店を手がけるゼットンが中目黒から引っ越ししている。


 そしてハイライトは、海側の芝浦エリアで開発が進み、三井不動産らが開発主体となっている高層のツインタワー(ビルの名称はmsb 田町ステーションタワーNとS)。このツインタワーのうち、先に竣工予定のSのほうに今年年末、それに来春、それぞれ本社移転するのが三菱自動車とユニー・ファミリーマートホールディングスである。


 三菱自動車はようやくリコール隠しなどの不祥事の傷が癒えてきて業績が上向いてきた。田町駅を挟んで陸側から海側に移るだけとはいえ、年末にピカピカの高層ビルに本社を移転するタイミングを、反転攻勢の象徴にしたいところだろう。横浜駅近くに本社がある日産自動車の傘下に入った三菱自動車だけに、筆頭株主である日産との人材の往来を考えても、同じ田町駅での移転ならスムーズだ。


 また、長らく本社を置いてきた現在の田町の本社ビルは竣工が1966年と、もう50年以上も経過して老朽化しており、前述の相次いだ不祥事も相まって社員から見ればある意味、呪われたような本社ビルといえた。同ビルは家主の三菱重工系のディベロッパーが主導する形で解体され、2023年をメドに新しい高層ビルに生まれ変わる。ちなみに、品川に2003年から本社を置いてきた三菱重工も再度、2018年度中に丸の内に本社を移転する段取りだ。


 そして、三菱自動車に遅れて同じビルに移転してくるのが、ユニー・ファミリーマートHD。ファミリーマートはもともと西友傘下だったが、セゾングループ解体の過程で20年前の1998年に伊藤忠商事に売却。その後もずっと、“セゾン村”ともいえる池袋(=サンシャインシティ)に本社を構えてきたが来春、ついに移転することになった。


 経営統合したユニ—が、現在本社を置く愛知県稲沢市から今年10月、JR名古屋駅から徒歩圏のビルに本社を移転するだけに、やはり名古屋‐東京間の人材の往来を考えれば、田町駅近くに竣工予定の高層ビルに本社移転するのは、合理的な判断で必然だったといえよう。


 前述したように、田町駅と品川駅の中間地点で新駅の建設も進んでいるが、暫定開業が五輪イヤーの2020年といましばらく先になってしまう。加えて、2024年の新駅の本格運用、さらに2027年開業予定のリニア新幹線などを見据えると、品川駅周辺と新駅周辺は、東京五輪後に大不況が到来して地価が暴落でもしない限り、賃料は高止まりで推移するだろう。


 仮にもし地価が暴落すれば、逆にその時が当地に移転のチャンスではあるのだが、そこまでは待てない企業にとっては現状、田町駅周辺のコストパフォーマンスはやはり注目に値し、それが本社移転続々という現象を生んでいる1つの要因になっているのではないか。


●文/河野圭祐(『月刊BOSS』編集委員)

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