何回転職しても「成功する人」はここが違う…仕事ができる人が知っている「ニーズの裏のニーズ」という常識

2024年2月22日(木)14時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/atakan

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仕事ができる人とそうでない人の違いは何か。キーエンス出身のコンサルタントである田尻望さんは「潜在ニーズよりもさらに深い“ニーズの裏のニーズ”を捉えられているかどうかが重要だ。お客様からこれを聞き出すことができれば、継続して商品やサービスを売り続ける仕組みを作ることができる」という——。(第1回/全3回)

※本稿は、田尻望『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(かんき出版)の一部を再編集したものです。


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■ヒアルロン酸を注射したい人の「真のニーズ」とは


すべての仕事は、誰かのニーズを叶えています。


言い換えると、誰かのニーズを叶えることから、悩みを抱えている問題を解決するところから、人の役に立つ商品、サービス、仕事は生まれます。


つまり、「ニーズ」は「仕事の起点」なのです。


ニーズには、「顕在ニーズ」「潜在ニーズ」に加え、もう一つ、種類があります。それは、相手のさらに深い部分に存在するニーズ、つまり、顕在ニーズと潜在ニーズの裏側にある「真のニーズ」です。


潜在ニーズよりも、さらに深い部分にある「真のニーズ」とは、どういうものなのか、具体的な例を挙げて説明しましょう。


あなたが美容皮膚科のカウンセラーだとしましょう。ある女性が「ヒアルロン酸の注射を受けたい」と相談に来た場面を想像してください。


その女性は、「目の下のクマやしわを何とかしたい」と言っています。


ニーズを探るために、あなたはどんな質問をしますか?


■「美人と言われていた頃の自分を取り戻したい」


「これまで何か治療を受けたことはありますか?」というような質問を思いついた方がいるかもしれません。


ただ、それは、顕在ニーズを確認するための質問なのです。


ここで、本当に聞かなければならないのは、「なぜ、目の下のクマやしわが気になるのですか?」「なぜ、それが重要なのですか?」という質問です。


その質問に対して、女性が次のように答えたとします。


「最近、同窓会があって、友人よりも老けて見えた気がするんです」


「目の下のクマやしわを何とかしたい」という顕在ニーズと、この回答との関係性を探るためには、次のような質問が必要です。


「そうなんですね。なぜ、同窓会での自分の見た目が気になるのですか?」(センシティブな話題ですからプロとして寄り添った姿勢でお伺いするべきです)


それに対して女性が次のように答えたとします。


「高校時代、皆から美人と言われていたので、その頃の自分を取り戻したいんです」


これが彼女の本当の「目的」=「真のニーズ」だったのです。


それがわかれば、あなたは「真のニーズ」を叶えるための最適な治療やケアを提案することができます。


■「顕在ニーズ」を叶えるだけでは足りない


こういった状況で、「真のニーズ」の重要性をよく理解していなければ、「目の下のクマやしわをできるだけ目立たなくする」というような、顕在ニーズを叶えるためだけの提案をしてしまいます。


しかし、それはお客様の「真のニーズ」を叶えることにはなりません。


場合によっては、価値を持たないムダな提案になってしまうでしょう。


そうではなく、「目の下のクマやしわが気になる」と思った目的をきちんと理解したうえで、「真のニーズ」を叶えるべきなのです。


他人からすれば、「何であんなサービスが必要なんだろう?」と思うものでも、そのサービスを受けようとする人がいます。


その裏には、そのサービスを受けて達成したい、その人なりの「目的」があります。「目的」を捉えられるようになると、「これが、相手が求める真のニーズだ!」と特定できます。


そのためには、先ほどの会話例のように、相手に「なぜ、それが欲しいのですか?」という問いかけをしなければなりません。


■仕事ができる人は「ニーズの裏のニーズ」がわかる


お客様が、「○○が欲しい」「○○したい」と言っているとき、そこで言語化されているのはあくまでも「顕在ニーズ」です。


大切なのは、その言葉の裏に存在する「ニーズが発生した理由や原因、その背景」を明らかにすることです。


これを聞き出せれば、「真のニーズ」を確定できます。


私は、それを「ニーズの裏のニーズ」と呼んでいます。


「ニーズの裏のニーズ」を捉える力こそが、「仕事の考え方」を支える土台となります。


今回はセールスにおける例でしたが、仕事の中では、お客様のニーズだけでなく、自分の上司からの依頼、同僚からの依頼、他部署からの依頼など、「依頼」という顕在ニーズの裏にも、「ニーズの裏のニーズ」が潜んでおり、その「ニーズの裏のニーズ」を捉えて仕事ができる人が、「あの人は仕事ができる」と言われるようになるのです。


「ニーズの裏のニーズ」を捉えることができていない人は、仕事のやり直しも多くなります。本当の目的をわかっていないため、目的を叶えるための「必須の仕事」ができず、指示された「表面上の仕事」だけを行ってしまうので、追加の指示を繰り返し受けることになってしまうのです。


■どんな仕事に就いても食いっぱぐれることはない


ここまでの説明で、「ニーズの裏のニーズ」の重要性と構造を理解できたと思います。


ここからは、「ニーズの裏のニーズ」を捉える力を持っていることで、具体的に何ができるようになるのか? 実際のビジネスの現場でどのようなことが実現できるのかをお伝えします。


お客様など周囲の人々の「ニーズの裏のニーズ」を理解し、しっかり捉えられるようになると、ムダな仕事が減り、仕事の生産性が高まり、周囲から高い評価と信頼を得られます。


しかし、それだけではないのです。


「ニーズの裏のニーズ」を捉える力を持っていると、この先、どんな仕事に就いても、どんな状況に置かれても、絶対に食いっぱぐれることはなくなります。


「ニーズの裏のニーズ」を叶えるためのお客様の購買行動には終わりがありません。


終わりがない、というのはどういうことを意味するのでしょうか。


あなたがお客様の「ニーズの裏のニーズ」を捉えていれば、


➀その商品を「買い続けてもらう」
➁その商品に加えて「他の商品も買ってもらう」
➂その商品とは異なる「まったく別の商品を買ってもらう」


ことができるのです。


どういうことか、順番に説明していきましょう。


■あるニーズが叶えられると、別のニーズが生まれる


まずは、➀その商品を「買い続けてもらう」についてです。


「コミュニケーションを改善したい」という企業の例で解説しましょう。


そこでは、営業が5人も辞めていて、半年間で2000万円のコスト、3000万円の売上が失われるリスクを抱えている。その問題を解決したいという「ニーズの裏のニーズ」がありました。


これを叶えるソリューションが提供されるのであれば、クライアント企業は「買う」という意思決定をしてくれます。


では、研修を買って社員が受講し、問題が解決したお客様は、それで満足して、それ以上の購買行動をしなくなるのでしょうか?


お客様の「ニーズの裏のニーズ」が叶えられてしまったら、そのお客様に対するあなたのセールス活動は「終了」なのでしょうか?


答えはノーです。


「コミュニケーションが改善された結果、営業が辞めなくなった」としても、次は、「もっとコスト削減をしたい」「もっと営業の生産性を向上させたい」「もっと売上を伸ばしていきたい」というニーズが生まれてきます。


■エンドレスに自社商品・サービスを買ってくれる


これを知っていれば、あなたはクライアントに新しい研修を提案できるでしょう。


あなた「社長、私たちのコミュニケーション研修を受けていただいてありがとうございます」
お客様「あれはよかったですよ。離職がずいぶん減りました」
あなた「ありがとうございます。営業の方々が辞めなくなり、コスト削減をして売上が上がるという目的をある程度達成できましたね。おめでとうございます! 実は新たな研修を開発していて、それを受けていただければ、さらに御社の売上をアップできそうです。一度、詳しくお話しさせていただいてもよろしいでしょうか?」
お客様「ぜひ、聞かせてください!」


こうなれば、あなたはお客様に、「もっとコスト削減ができ、もっと営業の生産性を向上させ、もっと売上を伸ばすためのソリューション(研修)」を販売できます。


その結果、さらなるコスト削減、生産性と売上アップを実現したとします。


すると、お客様は「もっと売上を上げたい」と考えます。もっと売上が上がると、相手は「もっともっと売上を上げたい」と思うでしょう。こうして、お客様はエンドレスにあなたが提案する研修を買ってくれます。


相手の「ニーズの裏のニーズ」がわかっていて、そこに的を絞った提案をすれば、あなたは何度でも自社商品・サービスを販売できるのです。


これは、マーケティング用語で「アップセル」と呼ばれるセールス手法です。


顧客が一度購入した商品と同種で「より上位のもの」を提案して、繰り返し購入してもらうのです。


「ニーズの裏のニーズ」は、お客様の根源的なニーズなので、終わりがないニーズなのです。


終わりのないニーズに対してアプローチすれば、高い再現性をもって、何度でもお客様の購買行動を喚起することが可能になります。


写真=iStock.com/kazuma seki
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■「0から1に」「1から10に」を意識する


ちなみに、「ニーズの裏のニーズ」に的を絞ってアップセルを繰り返す際には、「マイナスから0にする」のではなく、「0から1にする」、さらに「1から10にする」という意識を持つことが大切です。


歯科医院では、虫歯があって痛みがある状態を、保険範囲内の治療によって痛みのない状態にします。これは「マイナスから0にする」という段階です。


そこからさらに、自由診療で「予防が必要ですね」「矯正をしたほうがいいですね」「ホワイトニングもお勧めです」と提案することによって、アップセルを行います。


これが「0から1にする」「1から10にする」ということです。


■儲かっている歯科医院と潰れそうな歯科医院の違い


「0から1にする」「1から10にする」のがうまい歯科医院は経営に成功していますが、「マイナスから0にする」段階にとどまっている歯科医院は、往々にして経営難に陥っています。


「0から1にする」「1から10にする」という段階へとアップセルしていきたいのであれば、歯科医院は「患者さんが何に価値を感じているのか、何に感動するのか」を知らなければなりません。


患者さんにとっての「価値」「感動」は、「予防によって口腔内環境を整え、歯周病菌などによる全身疾患を防いで健康寿命を延ばし、楽しく豊かな人生を送りたい」「ホワイトニングによって印象をよくし、仕事で成功して人生を変えたい」などです。


これが理解できている歯科医院とできていない歯科医院では、雲泥の差が生じます。


日々の仕事でも「ニーズの裏のニーズ」を意識をしてアップセルを行えば、お客様は次々とあなたが提案する商品・サービスを購入してくれるでしょう。


■「アップセル」の次は「クロスセル」


次に、➁その商品に加えて「他の商品も買ってもらう」についてです。


「ニーズの裏のニーズ」を捉えてアップセルが実現できたら、次に行うべきことは「クロスセル」です。


クロスセルとは、ある商品の購入を検討している、または購入してくれた顧客に対し、別の関連商品も一緒に購入してもらうセールス手法です。


例えば、研修によってクライアント企業の営業の生産性がアップしたとします。


そこで、次のように提案するのです。


あなた「社長、営業の生産性がアップしましたね。今度はコスト削減にもっと力を入れたいのではないですか?」
お客様「ぜひそうしたいね」
あなた「我々のパートナーで、大幅なコスト削減にアプローチできるシステムを開発している企業があります。そちらも合わせて導入されると、さらに経営改善につながるのではないかと思います。一度、ご紹介してもよろしいでしょうか?」


こう提案すれば、そのシステムを導入してくれる可能性が高まります。


■感動のための商品・サービスを提案し続ける


BtoCの場合の「ニーズの裏のニーズ」は感動です。


一回感動すれば、それで終わりでしょうか?


そのあとは、感動のない、灰色の人生でよいでしょうか。


そんなことはないですよね。


ずっとバラ色の人生、つまりずっと素晴らしい感動をしていたいのが人間というものです。


例えば、あるカップルが結婚式を挙げたら、式のあとには家を買うかもしれません。さらに、生まれてくる赤ちゃんのために必要なベビー用品を購入したり、育児サービスを利用したりするかもしれません。将来的には、子どもたちを塾に通わせるかもしれませんし、家族旅行に行くかもしれません。


これらすべては、「人生を幸せに生きるため」つまり、感動のために行うものです。


人生を幸せに生きたいという「ニーズの裏のニーズ」を知っていれば、お客様にずっと買い続けてもらう提案ができるのです。


■結婚式場に天窓がほしい理由もやはり「感動」


最後に、③その商品とは異なる「まったく別の商品を買ってもらう」についてです。


これは、いわゆる「代替提案」という営業手法です。


「ニーズの裏のニーズ」がわかっていると、「代替提案」も可能になります。


例えば、あなたがブライダル会社のお客様担当だとして、結婚式の打ち合わせで「どうしても天窓が欲しい」と言うお客様(新婦さん)の「ニーズの裏のニーズ」を探るために、お客様と次のような会話をしたとします。


あなた「どうして天窓が欲しいのですか?」
お客様「この前、友人の結婚式に出席したんですが、そのとき、天窓から射す光で新婦が輝いて、とっても映えていたんです」
あなた「なるほど。失礼ですが、なぜそれが大事なのでしょうか?」
お客様「私が両親や友人の目に素晴らしく映ることが、自分にとっても夫にとっても、本当に感動することだと思うんです」


この新婦さんの「ニーズの裏のニーズ」は、「両親や友人の目に、自分が輝いて素晴らしく映ること」です。


したがって、それさえ叶うのであれば、「天窓」は必須アイテムではなくなります。


そうすると、次のような提案ができるはずです。


写真=iStock.com/LElik83
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■代替商品でも要望を叶えることができる


あなた「私どもの結婚式場にはテラスがあって、海を背景にした写真を撮ることができます。天窓から光が落ちてくるのではなくて、太陽の光の下で新婦が輝くところを見せる、そして、バックには広大な青い海。というのはいかがでしょうか?」
お客様「それなら、天窓じゃなくてもいいかもしれませんね!」



田尻望『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(かんき出版)

この場合、「天窓」は「新婦を輝かせる」という目的を叶えるための「手段」なので、「どうしても欲しいもの」ではなかったということです。


このように、「ニーズの裏のニーズ」を叶えるための別の提案が「代替提案」です。


「ニーズの裏のニーズ」さえしっかり捉えていれば、他のソリューションでもお客様の要望を叶えられるということです。


「お客様、この問題の解決は、絶対にこの商品にしかできないんですよ!」と力説する営業をよく見かけますが、お客様の「ニーズの裏のニーズ」がわかっていないことがほとんどです。


「ニーズの裏のニーズ」がわかっていたとしたら、「絶対にこれでないとできない」ということはそれほど多くありません。


必ず違うやり方があるはずです。


「ニーズの裏のニーズ」さえわかっていれば、営業方法の幅や、ソリューション提案の選択肢がグンと広がるのです。


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田尻 望(たじり・のぞむ)
戦略コンサルタント
株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験が、「最小の人の命の時間と資本で、最大の付加価値を生み出す」という経営哲学、世界初のイノベーションを生む商品企画、ニーズの裏のニーズ®までを突き詰めるコンサルティングセールス、構造に特化した高収益化コンサルティングの基礎となっている。その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円〜4000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億円、年10億円超の利益改善などを達成した企業を次々と輩出。企業が社会変化に適応し、中長期発展するための仕組みを提供している。著書に『構造が成果を創る』(中央経済社)、『キーエンス思考×ChatGPT時代の付加価値仕事術』(日経BP)、発刊10万部を突破した『付加価値のつくりかた』(かんき出版)がある。
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(戦略コンサルタント 田尻 望)

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