文章を速く書くにはどうすべきか…三流はフリック入力、二流はブラインドタッチ、一流が選ぶ「意外な方法」

2024年2月22日(木)13時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zorica Nastasic

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仕事のできる人はビジネス文書を書くときにどんな工夫をしているのか。クロスリバー代表の越川慎司さんは「一流のビジネスマンは音声入力を利用している。調査によれば、平均的なサラリーマンの利用率が0.4%だったのに対し、人事評価トップ5%の社員は23.2%も利用していた。入力中には両手が空くため、同時にほかの作業を進めることもできる」という——。(第4回)

※本稿は、越川慎司『時短の一流、二流、三流』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。


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■トップ社員は音声入力を利用している


文字入力の方法一つ取っても、効率と成果に差がつきます。スマホでフリック入力を活用する人が増えています。片手で素早く文字入力ができるので、たしかに便利です。しかし、大量の文章を入力するのは難しく、画面の小さなスマホでの処理は疲労度が高く、長時間の作業は困難です。


長文の入力や書類作成の効率を上げるために、ブラインドタッチをマスターしようとしている人も多いのではないでしょうか。しかし、タブレットなどのタッチスクリーン端末では効果を発揮できなかったり、ショートカットキーなどの特殊キーを頻繁に使用する作業では、十分な効果をもたらさないことがあります。状況に応じて入力方法を使い分けた方が、時短効果は上がります。


一流が着目していたのは、音声入力です。まだ普及はしていませんが、フリック入力やキーボード入力の補完的な方法として音声入力を試していたのです。2.3万人のビジネスパーソンを対象にした調査では、音声入力を使用したことがある人はたった0.4%しかいませんでした。一方、各企業の人事評価トップ5%社員に同じ質問を投げかけると、音声入力の経験者は23.2%もいました。58倍の比率で使っていたのです。さらに、音声入力を週に1回以上使う人の比率は、一般社員の72倍でした。


■手が空くことでマルチタスクが可能になる


音声入力には多くのメリットがあります。まず、音声で文章を生成するため、入力速度は極めて高くなります。


あるベンチャー企業で20代にして役員候補となっている男性は、つねに時間と戦っていました。彼は一日の大半を効率的に使いたいと考えており、そのために音声入力を活用しているそうです。例えば、車で移動中のときでも、スマホの音声入力機能を使ってメールを作成したり、アイディアをメモしたりします。さらには、音声入力を使って、「note」でブログ記事を執筆しているそうです。


WordやグーグルのDocsで音声入力して文章を作成し、ChatGPTへコピーして、文章の校正や漢字の誤変換を修正していました。音声入力は、まだ100%の精度ではありません。音声を正確に聞き取ってくれなかったり、句読点を正しく入力してくれないこともあります。しかし、一流が音声入力を試用する理由は、単に文字の入力時間を短縮するだけでなく、効果を上げる可能性があるからです。


写真=iStock.com/metamorworks
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音声入力を使うことで、手が自由になり、同時に他の作業を行うことができます。例えば、音声入力でメールを書きながら、データのグラフを確認するといったマルチタスクが可能になります。単に入力時間を短くするだけでなく、より多くの作業を手掛けることが、一流が目指す「More with Less(より多くのことを、より少ない時間で)」を実現するのです。


一流は、音声入力も使う
入力方法を使い分けることで、効果と効率を同時にアップさせる

■誤字・脱字のチェックはどう工夫すべきか


文章作成は、多くのビジネスパーソンが避けて通れないタスクです。そして、文章を書くことが苦手なビジネスパーソンはとても多いです。


1.8万人のビジネスパーソンを対象に調査すると、「最も苦手なタスク」で文章を書くことを選択する人は23%もいました。文章作成を苦手にする理由の一つが、「誤字・脱字をした経験」でした。このようなミスを引き起こすのは、「修正することを忘れる」からです。


例えば、1万字の年次報告書を作成する場合、原稿を書き切った時点で満足してしまいます。しかし、誤字や脱字、内容の不整合を十分にチェックせずにいたら、評価されないどころか、信頼を失います。


こうした失敗をした経験があると、文章作成に苦手意識を持ってしまいます。ミスをした経験を踏まえ、文章を書きながら念入りにチェックして修正する人は多いです。これがダメだというわけではありませんが、何行か書くごとに何度も修正を入れると効率は下がります。例えば、レポートを書いている最中、一つひとつのフレーズを何度もチェックしていては、全体の流れや構造に目を向ける時間が削られます。結果として、文章の質が下がってしまうのです。


■すべてを書き終えてから修正するのが一流


一流は、「すべて書き終えてから修正作業をする」ことが多いです。


一流の作家さんは原稿を執筆する際、一度すべてのストーリーを書き上げた後、修正に入るそうです。この修正作業に時間がかかることも多いですが、全体の流れや構造、一貫性などを総合的にチェックするためには、このような方法は合理的かつ効率的です。一流のビジネスパーソンが長文を書くときは、大まかなアウトラインを作成した後、その骨格に沿って一気に書き上げます。


この段階では、細かい誤字脱字や表現の微妙な違いには、一切目を向けません。全体のストーリーがしっかりと組み立てられているか、主要なポイントが確実に伝えられているか、ということに集中します。次に、すべての章やセクションが完成した後で、初めて修正作業に入ります。この際、一流は一度全文を通して読み、全体の流れや一貫性をチェックします。また、その後で各セクションや段落、さらには一文一文に目を通し、細かい修正を施します。


このような一流の執筆スタイルには、明確なメリットがあります。それは、修正作業が一度に集中するため、その間に「気づき」が多く生まれる点です。小さな修正を何度も繰り返すのではなく、一度の修正で多くの問題を同時に解決できるのです。これなら、確実に時短につながります。修正作業を一度に行うことで、一貫性のある高品質な文章が短時間で完成します。


より短い時間で書き、より大きなインパクトを読者に残すには、書き終えてから一括チェックする一流の方法が適しているのです。


一流は、全体を書き終えてから一括チェックする
「書く」「確認する」「修正する」を分けて行う

■一流はパワポ1枚に何文字使うのか


2017年から2023年まで815社に協力いただき、顧客向けの提案で使用されたパワポ資料の5万ファイル以上を調査しました。1ページあたりの文字数や使用されたカラー数、画像やアイコンの数、そしてその資料が成功につながったのかを調べ上げました。


写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

調査結果でまず驚いたのが文字の数。5万ファイルの1ページの平均文字数は385文字でした。詳細な情報を伝えたいのは分かりますが、冷静に考えて1ページに385文字もあると読む気が失せてしまいます。


各企業で管理職の方々、計806名を対象に調査したところ、78%の人が「一目で要点が分からないと詳細な情報を見ない」傾向であることが判明しました。ということは、1ページに385文字もあると「要は何か」を見出すことが難しいので、残りの情報を見てもらえず、相手の決定を促すことが難しくなります。相手に決定を促した資料、つまり提案に成功した資料について分析を進めると、文字数が少ない傾向にあることが分かりました。


調査の前年に営業目標を達成した人たちの資料を分析すると、平均よりも文字数が少なく、1ページにつき240文字ほどでした。提案相手のことを考えて、相手起点で情報提供する姿勢が、相手の行動に少なからずいい影響を与えることは分かりました。


■対話を生むためにあえて情報を減らす場合も


しかし、一流はさらにその上を行きます。特定の期間だけ成果を残すのではなく、成果を出し続ける人が一流です。


単年度だけでなく3年連続で営業目標を達成した人を抽出し、その方の資料を分析しました。すると、資料の文字数が圧倒的に少ないのです。金融や医薬品、公的機関など情報の網羅性が重視される業界を含めても、一流が作成する資料の1ページあたりの平均文字数は、105文字でした。その短い文字数でしっかりとポイントを押さえ、相手に訴えかける内容が緻密にまとめられていました。



越川慎司『時短の一流、二流、三流』(明日香出版社)

一流がこのようなアプローチを取る理由は、時間の尊重と効率性にあります。彼らは相手の時間も自分の時間も非常に大切にしており、そのためにも最も効率的なコミュニケーションを心がけているのです。さらに、一流は提案書を一方的な情報提供ではなく、対話を生む「きっかけ」の一つと考えます。


なかには、相手に質問させるために資料をコンパクトにする一流もいます。相手に質問してもらうことで、相手に当事者意識を持ってもらい自分の意識で決定してもらうことを促していたのです。


質問をしてもらうために、提案資料には70%程度の情報しか入れないという製造業のトップセールスもいました。つまり、一流の提案書作成とは、相手の興味やニーズに応じて短縮された形で必要な情報を提供し、さらに相手との対話やアクションを促進するものです。このようにして一流は、提案書を真に有用なビジネスツールとして活用して、成果を出し続けているのです。


一流は、1枚につき105文字でまとめ、資料から対話を生む
情報を絞ることで、相手に当事者意識を持って考えてもらえる

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。
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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)

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