イーロン・マスクの半生から、実行力の源を明らかにする

2月23日(金)6時0分 ダイヤモンドオンライン

「スペースX」「テスラ・モーターズ」「ソーラーシティ」「ニューラリンク」……ジョブズ、ザッカーバーグ、ベゾスを超えた「世界を変える起業家」の正体とは? イーロン・マスクの「破壊的実行力」をつくる14のルールを徹底解説した新刊『イーロン・マスク 世界をつくり変える男』(竹内一正著)。この連載ではそのエッセンスや、最新のイーロン・トピックを解説していきます。


イーロン・マスクとは何者なのか


もし、あなたがイーロン・マスクのことを「あまりよく知らない」というのなら、せめてこのプロローグだけでも読んで、この人のことを知って欲しいと思います。


たとえば近年、世界を一変させたビジネスリーダーと言えば、誰を思い浮かべるでしょうか。

スティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、そんな面々を思い浮かべる人は多いでしょう。

たしかに、ジョブズは洗練されたプロダクトと、まったく新しいビジネスモデルを生み出し、人々のライフスタイルを一変させました。ジェフ・ベゾスが作り出したアマゾンは世界中の流通システムを変え、人々の「買い物」という概念を完全にひっくり返しました。


あるいは、ザッカーバーグのフェイスブックは人々のコミュニケーションのあり方を変え、現実の世界に革命をもたらす原動力ともなりました。しかし、そんな彼らの破格の活躍でさえ霞んでしまうほど、イーロン・マスクが実現しようとしている「未来」には、とんでもないスケール感と奇想天外さが溢れています。


グーグル創始者の一人で、資産約5兆円を有するラリー・ペイジはこんなことを言っています。


「もし、自分の莫大な財産を残すとしたら、慈善団体ではなく、イーロン・マスクに贈る。彼なら未来を創れるからだ。」


イーロンと仲がいいラリー・ペイジのこの言葉には、もちろんジョークも含まれているでしょう。しかし、グーグルで世界を変えてきたビジネスリーダーの一人ラリー・ペイジにそう言わせるだけの魅力がイーロン・マスクにあることは間違いありません。ラリー・ペイジをして「未来を託したくなる」という男。イーロン・マスクとはいったい何者なのでしょうか。どんな未来を見据え、何を実現しようとしているのでしょうか。


興味を引かれると思いませんか。ラリー・ペイジだけでなく、世界中の名だたる投資家が「イーロン・マスクが描く未来」に期待を寄せ、莫大な資金を投資しています。これがまた奇妙な話で、イーロン・マスクがやっているビジネスがものすごく大きな利益を出し続けているかと言えば、決してそうではありません。むしろ、赤字であったり、倒産の危機を迎えたりするなど、お世辞にも「投資家が喜ぶ業績」を挙げてはいないのです。


「自らの資産を増やす」ということに熱心な『ふつうの投資家』なら、イーロン・マスクに投資などしません。金儲けが上手な経営者ならほかにいくらでもいるからです。それなのに世界中の投資家がイーロン・マスクに投資するのはなぜか。


それは彼がカネ儲けよりも、未来を作ることに情熱を傾けているからです。その期待感こそが、イーロン・マスク最大の魅力であり、独特の光を放つ個性でもあります。こんなにも愉快で、痛快で、ワクワクするビジネスリーダーがほかにいるでしょうか。


170億円の成功など「ほんの序章」に過ぎない


1971年、南アフリカ共和国で生まれたイーロンは、17歳で母国を離れ、カナダへと移住し、クイーンズ大学に入学。その後、アメリカのペンシルべニア大学に編入すると物理学と経営学を学び、1995年、スタンフォード大の大学院へと進学しました。1995年と言えば、ウィンドウズ95が発売され、世界中の人々のライフスタイルから産業のあり方までも大きく変わっていく年でした。


そんな時にシリコンバレーの空気を吸っていれば、起業への思いが沸き立つのは自然の流れ。イーロン・マスクも例外ではなく、せっかく入ったスタンフォード大学院をわずか2日で辞めると、弟であるキンバル・マスクとソフトウェア制作会社「Zip2」を起ち上げます。天下のスタンフォード大学院を2日で辞めてしまう決断と行動力はさすがですが、それだけシリコンバレーの熱狂がイーロン・マスクを突き動かしたとも言えるでしょう。


そして、イーロンが考えついたインターネットのイエローページ版のアイデアは時代を先取りし、「Zip2」は大成功。PC大手のコンパックに約3億ドル(約300億円)で売れるまでに成長し、この買収によってイーロン・マスクは約2200万ドル(約22億円)を手にします。


この資金を元手に、今度はインターネット決済のサービス事業会社「Xドットコム」を起ち上げました。紆余曲折がありながらも、この会社も結局は成功。「Xドットコム」は創業翌年の2000年にはコンフィニティ社と合併してペイパル社となり、そのペイパル社を、ネットオークション大手のイーベイが15億ドル(約1500億円)で買収することになります。


この買収劇は全米でも話題となりました。端的に言えば、イーロン・マスクが起ち上げた会社は次々と成功し、合併を経て、さらに成長。そして、最終的に大手企業に売り切ることで、とんでもない金額を手にしたわけです。起業家が成功し、大金を手にする典型的なパターンでしょう。


ちなみに、ペイパルの買収によって彼が手にしたお金は約1億7000万ドル(約170億円)。まだ30歳そこそこのイーロン・マスクは、シリコンバレーの風に乗り、まんまと億万長者となったのでした。


火星移住計画を提唱


さらにイーロンは、2002年に「スペースX」という宇宙ロケット開発会社を起業。そして、この男がぶち上げたのが「人類を火星に移住させる」という驚天動地の目標でした。


人類を火星に移住させる。

これだけ聞けばまるでSF映画のストーリーのように感じますが、イーロン・マスクは本気でした。本気どころか、「ロケットの開発コストを従来の100分の1にする」と公言し、「打ち上げに使用したロケットを何度も再利用する」など宇宙ロケット業界ではあり得ない目標を次々と打ち出します。なるほど、ロケットを再利用できればロケットコストは、大幅に減らせます。


そして、人類を火星に移住させることができれば、地球上で起こっている環境破壊、75億人を超え100億人にも届こうかという人口爆発などの問題を根底から解決させることができるかもしれません。しかし、話が飛びすぎていて、ついていけないと多くの人は思いました。ところが、そんな凡人の心配などどこ吹く風とばかりに、イーロンはロケット再利用の妥当性をこう言ってのけたのです。


「飛行機だってロサンゼルスからニューヨークへ飛行したら、それで機体を壊すわけじゃない。向きを変えてロスに向けて飛ばせばいいんだから、ロケットだって同じことをすればいい」


しかし、こんなにもクレイジーな発想を、誰が本気で信じて、誰が支援してくれるでしょうか。普通に考えれば、ツッコミ所が満載の与太話ともとられます。そもそもイーロンは宇宙ロケットに関しては完全なる素人でした。ロケット工学を学んだこともなければ、ロケットを打ち上げる知識も、技術も、ノウハウも知りませんでした。


そんな人間が簡単に手を出せるほど、宇宙産業は甘くはない。誰もがそう思いました。これまでイーロンが成功させてきたビジネスは、いわゆるシリコンバレー型です。つまり、資金がなくても、アイデアとプログラミングの技術があれば、自宅のガレージでだって起業できる。それが当たればお金を生んでいくビジネスでした。


しかし、宇宙ロケット産業は根本的に異なります。開発するのに膨大なお金がかかる上に、苦労の末に運よくロケットを完成させたとしても、打ち上げに失敗すればすべてがゼロになってしまう。リスクが超ド級にでかいビジネスです。プログラミングのように「バグが出たから修正しよう」という類いのものではないのです。


一度ロケット打ち上げに失敗すれば、何百万ドルという「お金の塊」が一瞬にして海の藻屑と消えてしまいます。だからこそ、国家レベルのプロジェクトでしか成し得ない領域で、はっきり言って、ベンチャー起業家が思い付きで参入できる分野ではない。それが業界の常識でした。


しかし、そんな「つまらない常識」がイーロン・マスクに通用するはずはありません。地球環境が汚染されていくのなら、火星に移住すればいい。ロケットだって、飛行機のように何度も同じ機体を使えばいいじゃないか。私なら、100分の1のコストを実現させてみせる。そんなシンプルかつ大胆な発想で、未来を見据え、それに向けて世界を変えていく。それがイーロン・マスクという男のやり方です。

ダイヤモンドオンライン

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