日産新型NOTE トヨタ・ホンダの小型車争いに割って入れるか

2月24日(月)7時0分 NEWSポストセブン

今年モデルチェンジが予定されている日産自動車「ノート」

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 2019年10〜12月期連結決算で11年ぶりに最終損益が赤字になるなど業績悪化が深刻な日産自動車。「日産の実力はこのレベルではない」と内田誠社長は臨時株主総会で再起を誓ったが、起死回生を図るには一にも二にも魅力的なヒット車を出すしかない。その最有力候補といえるのが、今年モデルチェンジが予定されている新型「NOTE(ノート)」だ。果たして、競争が激化する小型車市場で存在感を示せるのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が展望する。


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 日本の自動車マーケットにおいて久々に新商品ラッシュになる見通しの2020年。先陣を切ったのは、2月10日発売のトヨタ「ヴィッツ」あらため「ヤリス」と14日発売のホンダ「フィット」だ。


 どちらも欧州ではBセグメントと呼ばれるサブコンパクトクラス。ヤリスは室内の広さについてはある程度割り切って走りの性能に重きを置いたパーソナル色の強いモデル。一方、フィットは室内・荷室の広さを重視したファミリー色の強いモデルと性格が二分されたが、クラスも価格も近いとあって、今後死闘が繰り広げられることは確実であろう。


 この2モデルの話題の陰に隠れた感があるが、今年、このサブコンパクトクラスで新型への切り替わりが予定されているモデルで忘れてはならないものがもう1台ある。夏から秋にかけて登場するとみられる日産「ノート」だ。2018年には軽自動車を除く乗用車販売台数で1位、2019年はトヨタのハイブリッドカー「プリウス」に負けたものの2位という量販モデルである。


 折しも日産は“ゴーンショック”を機に経営の混乱が表面化し、経営危機の真っただ中。新車販売戦線でもブランドの存在感は急速に弱まっている。その逆風に耐えて反転攻勢に出るうえで、ノートは絶対に空振りの許されないモデルだ。が、果たして先行するヤリス、フィットの両雄対決に割って入ることができるのだろうか。


 ノート最大のセールスポイントは、広大な居住空間と強力な動力性能を提供する電動パワートレイン「e-POWER」だ。次期型に関して、巷では「スライドドアが装備される」「3列シート仕様も用意される」等々の噂が飛び交っている。


 日産のエンジニアに話を聞いても真相はもちろん教えてもらえるはずもない。だが、「常識で考えれば、強みであるe-POWERと居住性の良さを捨てるなどということがあるわけがない。そういう方向性であることは間違いありません」と言う。


 次期型についてのユーザーの関心事のひとつは、このe-POWERの性能がどのくらい引き上げられるかであろう。


 e-POWERが登場したのは現行ノートのデビュー後4年あまりが経過した2016年11月。日産はそのe-POWERを「充電のいらない電気自動車」と宣伝した。EVがなぜ充電なしで走れるのか。そのカラクリは簡単だ。エンジンで発電機を回し、電気モーターにその電力を供給して走るのである。つまり、単なるシリーズハイブリッドである。充電はしなくていいが、燃料を入れなければもちろん走ることはできない。


 それをEVと宣伝したのは半ば欺瞞ともいえるが、ハイブリッドカーは自動車工学的にはHEV(Hybrid Electric Vehicle=ハイブリッド電気自動車)と称されるので、EVと言い張ってもあながち嘘ではない。


 ノートは電気モーターだけを使って走るということを「充電のいらない電気自動車」というキャッチフレーズで分かりやすく伝えることに成功し、e-POWERはまたたく間に消費者に浸透。発売から4年あまりが経過し、販売が失速気味であったノートは一気にセールスパワーを取り戻し、日産車としては史上初の年間販売台数トップモデルになった。


 じつはe-POWERは市販乗用車初のシリーズハイブリッドではない。たとえば2013年にホンダが発売した「アコードハイブリッド」はシリーズ方式の一例だ。


 筆者がアコードハイブリッドで東京〜鹿児島間を3500kmほどツーリングしたときは、オーバーオールで約25km/Lという素晴らしい燃費性能を発揮するなど驚異的な性能を持っていたが、「i-MMD」という何の略だか推測できないシステムネーミングが災いしてか、その特質はほとんど浸透しないまま終わった。充電のいらない電気自動車というふれ込みでe-POWERが爆発的に売れたのを見て、本田技術研究所のエンジニアたちが切歯扼腕するのに接したことは記憶に新しい。


 だが、そのe-POWERマジックも永遠ではない。現行ノートのe-POWERは加速がきわめて良いこと、加速感がスムーズであることなどさまざまな長所がある半面、速度が上がったときの燃費の落ち幅がハイブリッドカーのライバルの中でも大きめという弱点もある。


 もともとe-POWERはハイブリッドでトヨタと同じステージに立つことを嫌ったゴーン氏を「これはEVです」と説得しながら急きょ開発したもので、純EVの「リーフ」のモーターや出力制御コンピュータ、エンジンもノートのガソリンエンジンをチューニングし直したもの……と、ありものを寄せ集めたという経緯がある。


「だから短期間で開発できたのですが、理想的な設計というわけではありません。しかし、次のe-POWERは熱効率を含め、ハイブリッドに適したエンジンを組み合わせることになる。燃費性能自体も向上しますし、運転の仕方や交通モードの違いによる燃費差も小さくできる」(日産のエンジニア)


 次期ノートは走りや快適性については、現行モデルから相応に引き上げられるものと推測される。現行モデルはベーシックカー「マーチ(海外名マイクラ)」と共通のもので、走行性能や乗り心地の滑らかさの確保、騒音・振動の抑え込みには限界があった。「次期型はクルマの基本設計を刷新しますので、とくに快適性については現行よりかなり良くできる」(日産事情通)という。


 ゴーンショックですっかり元気を失ってしまったかに見える日産だが、技術力やクルマづくりの知見は世間のイメージほどには落ちていない。


 筆者は現行ノートでもe-POWERの実力値を見てみることを主目的に東京〜鹿児島を3500kmツーリングしてみたことがあるが、e-POWERのパフォーマンスよりもポテンシャルに限りのある新興国向けベーシックカー用プラットフォームを使ってよくもここまで走りを仕上げたものだということのほうが印象に残ったくらいだった。


 日本車のサブコンパクトカーの中で最良の直進安定性と、アンダーステア(一定の旋回を続けるのにハンドルを切ることが必要な状態)が非常にわかりやすいハンドリングチューンにより、荒れた山道から高速道路まで、不安なく走り通すことができた。


 こうしたクルマ作りのノウハウを生かしつつ、性能的に余裕のあるプラットフォームを使えば、現行より大幅に良いクルマを作ることも十分に可能であろう。


 また、エンジンについても日産は「e-POWER用を前提に世界最高水準の効率を実現させる」とコメントしている。次期ノートのエンジンがそれをフルスペックで実現させるものになるわけではないだろうが、少なくともマイルストーンたり得るだけの技術は投入してくることだろう。


 トヨタvsホンダの激突に日産が割って入ってくるサブコンパクトクラスは、今年の日本の自動車マーケットのなかでもとりわけ盛り上がるカテゴリーとなりそうだ。

NEWSポストセブン

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