「図書館で勉強」はやってはいけない…司法試験一発合格の達人が力説「努力が続く人に共通する思考パターン」

2024年2月25日(日)15時15分 プレジデント社

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勉強を効率良く継続できている人は何をしているか。弁護士で公認会計士の佐藤孝幸さんは「勉強のノウハウ本などには集中力を高める方法として『図書館に行こう』とか『静かな環境を選ぼう』とか書いてあるが、私はそれに反対だ。たとえば図書館で勉強することを習慣化し、集中を高めるためのスイッチにしてしまうと、そこ以外で勉強することができなくなってしまう。何かにつけて『ここは〜だから』というような思考回路ができあがってしまい、勉強しない理由、勉強ができない理由を作ってしまう可能性がある」という——。(第4回/全4回)

※本稿は、佐藤孝幸『仕事と勉強を両立させる時間術』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。


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■気分に任せず生活パターンを作る


人間、誰だってその日の体調やテンションがあります。ですが、私の経験上、その日の気分によってやることを変えるなど邪道です。そのためシステマチックな行動パターンを作ってしまいます。


私の場合、とにかく生活リズムを設定しました。問答無用に体を慣れさせ、そのパターンで動かないと「何だか気持ちが悪いなぁ」というレベルまでもっていきます。


例として私がアメリカにいた頃の生活リズムを紹介します。


当時、私は夜9時に就寝、5時に起床という生活を送っていました。


まず朝5時に起き、熱めのシャワーを浴びます。42〜43℃くらいのシャワーです。多少眠くとも、これで強制的に目を覚ますことができます。頭と体をすっきりさせたらさっさと支度をして家を出ます。電車に乗り、テキストなどを読みながら勉強をスタート。


30分後、電車をおりたら会社近くのコーヒーショップに入って再び勉強です。会社には9時頃行くので、それまで3時間くらい集中します。そして時間になったらトールサイズの「モカ」を買って出社し、朝ごはん代わりに飲みながら仕事をします。


昼は軽食を買い、仕事をしながら食事。そのままノンストップで働き、6時に帰れるようにします。オフィスを出たら、朝と同じく電車の中で勉強。


帰宅し、食事をして勉強や運動など好きなことをして過ごします。で、9時になったら寝てしまうという生活です。基本的にこのパターンは今も変わらず、寝るのを10時くらいにしているのと、朝食はモカからココアになったというくらいのものです。


資格勉強をしていないときは本を読んだりして、好きな時間に充てています。


要は、それぞれの時間帯でスイッチを作ることが重要になります。私の場合、朝起きて「熱いシャワーを浴びる」→「ココアを飲む」というのがある種のスイッチになっていて、あとはもう自動的に体が動きます。


出典=『仕事と勉強を両立させる時間術
出典=『仕事と勉強を両立させる時間術

■嫌なことほど習慣化する


勉強をするといってもいろいろと種類がありますから、特定の科目や単元が苦手とか、特定のやり方が好きじゃないということがあるでしょう。


ただ、それもやらないわけにはいかないのであれば、生活リズムを作るように勉強のパターン化をしてしまうのが望ましいでしょう。


たとえば、テキストは「1日10ページ必ず読む」というノルマを決め、読むと決めたら必ず読むようにします。


最終的には必要なことなのですから、問答無用で自分に鞭を打ってしまうのです。


最初はもちろん「嫌だ」という気持ちがあるものですが、不思議なことにやっているうちにだんだんと体が慣れてきます。


生活習慣を作るのと同じで、勉強パターンも一度作ってしまえば、だんだんとやることに苦痛を感じることがなくなり、次第にやらなければ落ち着かないくらいに変わるのです。


そして、勉強の内容理解もだんだんと進んでいきます。


何となく内容がつかめ、知識をつけることがどんどん楽しくなってくるのです。


あるパターンや法則が見えてきて、自分の成長を実感できるという段階です。


というように、多少無理やりにでも勉強習慣をつけることができれば、学習の効率は飛躍的に伸びます。テレアポが苦手、クレーム対応が嫌という気持ちも、続けているうちに慣れ、そのうち「どうすればもっとうまくいくか」を考えるようになりますね。


仕事と同じように、経験を重ねれば誰だってある程度の能力を身につけることは可能です。本を読むのが嫌いでも、量を読んでいけば次第に活字を追うということに慣れ、本を読むという行為の楽しみがわかるようになります。


ですからまずは習慣を作り、慣れる状態にいち早くもっていけるよう努力してください。


そこからあとは、ものすごいスピードで成長できるはずです。


出典=『仕事と勉強を両立させる時間術

■ケチらずどんと金を出せ


基本的に私は、これまでどんな資格試験を受けたときも独学で行ってきました。


いずれも時間がない中での試験でしたので、周囲から入ってくる情報量をなるべく少なくして、自分の勉強のやり方に迷いが出ないようにしたのです。


その点では、「資格試験には予備校に行かないと受からない」という最近の風潮に少し疑問を持ってしまいます。ただ、かく言う私もUSCPA(米国公認会計士)の試験のときだけは3カ月ほど予備校に通っていました。


人生ではじめての資格試験、しかも外国のものでしたので、どんなテキストや問題集を買えばいいかまったくわからなかったのです。


そこで、どんなものなのかと様子を見るつもりで通ってみたのでした。通ってみて思いましたが、予備校のいいところは何よりもお金を払ったら行かざるを得ないことでしょう。自分の働いたお金で高い受講料を払うわけですから、行かないともったいない。


私の場合、動機としてはそんな貧乏根性でしたが、最初の一歩を踏み出すという意味ではなかなか意味のあるものではなかったかなぁと思っています。


このように、「何かの勉強をはじめたい。でも、何からはじめていいのかわからないなぁ……」というのであれば、とりあえず強制力の働く環境に身を置いてみることです。


予備校やセミナー、講演会、いろいろとありますが、思い切ってお金を出してしまった方が弾みがつきやすいでしょう。


就職をした学生が社内研修を経て見違えるようになることがよくありますが、同じように強制力の働く場所、言い換えればやらざるを得ない状況に置かれると、人は割り切ってできるようになります。


■教えてもらった情報を参考に、あとは完全に独学で臨む


ただ一方で、予備校などにどっぷり浸かっても意味があるのかなぁという気もします。


私も予備校に通ったことで「アメリカのどこどこという出版社のテキストがいいよ」


なんて情報を手に入れることができましたが、何をやるか、どうやるかについては結局自分で考えるしかありません。


そのため、私は教えてもらった情報を参考にして、あとは完全に独学で臨みました。


勉強の場合は特にそうだと思うのですが、やり方のポイントやコツをつかむには自分でいろいろとやってみないとなかなかわかりません。


ところが予備校のようなところでは先生と生徒という関係があるので、どうしても先生の言ったことにはバイアスがかかります。そして、それが本当に自分に合っているかどうか考えることもしないで、何となく続けてしまうかもしれません。


その意味では、いつまでも人におんぶに抱っこという勉強法はおすすめできないというのが正直なところです。予備校は資格を取るための「ヒント」を与えてくれますが、それ以上を期待するのは難しい場所でしょう。


それはセミナーにしても同じで、講師の言うことが100%正しいということでもないと思います。お金と拘束時間の関係もありますので、そのあたりをふまえ、判断してみてください。くれぐれも、カリスマ講師の妄信的な信者にはならないよう気をつけましょう。


出典=『仕事と勉強を両立させる時間術

■「達成感」を積み重ねれば続く


人間にはそれぞれの人に適した学習のレベルというものがあります。


当然ですが、私もある分野をはじめて勉強するときにはまったくの素人です。


では未知の領域に踏み込んだとき、必要なのはどんなことだと思いますか?


それは、とにかく勉強を続けていくことです。


そしてそのためには、簡単なレベルからはじめて、わかるようになった、できるようになったという達成感を感じること。達成感の積み重ねを繰り返していくことです。


このとき大事なのは、自分に合った難易度の適切なものを選んでいくということです。


背伸びをして難しすぎるものを選んではいけません。


かといって、小学生のやるドリルのように淡々と作業するようなものではなく、きちんと自分の頭で考えて解いていけるものが望ましいでしょう。


やったことはないのですが、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といった、ロールプレイングゲームというジャンルのテレビゲームは昔から人気です。


なぜ人気かというと、自分の操作するキャラクターが成長していくと同時に敵のキャラクターもどんどん強くなり、それを倒していくという達成感があるからでしょう。


この敵を倒すという感覚は、勉強を続けるのにとても大事な要素だと思います。


資格試験の場合は過去問題集をとにかくやればいいと思いますが、英語のような語学や経済学などの場合、自分の成長を実感できる本、参考書、問題集を選んでください。


徐々に専門性のレベルを上げていき、倒し、知識を吸収していきましょう。


またマンネリを防ぐという意味では、問題を解いたりテキストを読んだりするとき「何分でどこまでやる」という目標タイムを決めておき、それをクリアしていくというのもいいでしょう。タイムアタックは、仕事でも勉強でも惰性を克服するのにいい方法です。


出典=『仕事と勉強を両立させる時間術

■「静かな場所で勉強」は大間違い


よく、勉強のノウハウ本などには集中力を高める方法として「図書館に行こう」とか「静かな環境を選ぼう」とか書いてあります。ですが、私はそれに反対です。


というのも、たとえば図書館で勉強することを習慣化し、集中を高めるためのスイッチにしてしまうと、そこ以外で勉強することができなくなってしまいます。


極端な話、勉強するたびに図書館に行かねばなりません。


自宅から図書館が5分の位置にあるというのならまだしも、わざわざ20分も30分もかかる場所にある図書館に行く。往復すれば1時間近くにもなる時間をムダにしてしまうのはもったいないことです。そして何より、図書館は人を神経質にしてしまいます。


多くの本で言われているように、静かな場所で勉強するというのはとても理想的な環境です。邪魔するものはありませんし、自分の世界に入り込んで勉強できることには違いありません。


ですが、理想的なものがベストかというと、決してそういうことはないと思います。


図書館のような静まり返った場所での勉強を基本としていると、コーヒーショップやファミリーレストランなどでは「静かじゃないから集中できない」となってしまいかねません。


つまり、何かにつけて「ここは〜だから」というような思考回路ができあがってしまい、勉強しない理由、勉強ができない理由を作ってしまう可能性があるのです。


これは限られた時間の中で勉強をするという意味で非常によくありません。


「静かな環境」という存在が、自分の勉強の制約や足かせとなり、結果的には自分の急所になってしまうかもしれないのです。


その意味で、私は勉強をするのに環境を選ぶべきではないと考えています。


■時間のせいにしない、環境のせいにしない


実際これまでもそうしてきたのですが、勉強場所を決めるときは静かだからというようなことではなく、「会社から近いから」とか「自宅から近いから」とかそうした物理的な距離などで考えています。



佐藤孝幸『仕事と勉強を両立させる時間術』(クロスメディア・パブリッシング)

ある特定の場所でしか集中できない状況を作るのではなく、電車の中でも何でも集中できるようになった方が成果と効率は高まります。


何も轟音響くライブハウスでやれとかそんな極端なことは言いませんが、ちょっと周りの音がうるさいくらいの環境で勉強を習慣化した方が長期的にはいいと思います。


コーヒーショップやファミレス、電車の中で集中できるようになれば、勉強の効率はかなり高まるでしょう。何より、試験の本番で周囲の受験生を気にしたり、変なことに気を回したりといったことにならずに済みます。


時間のせいにしないことと同じで、勉強ができない、結果が出ないことを環境のせいにするのもナンセンスなのです。


環境に左右されず、自分のペースで勉強できるようにならなければなりません。


ただ、もちろん図書館がいい環境であることに異論はありませんので、「たまには気分を変えようかなぁ」というときだけ、図書館に行けばいいでしょう。


出典=『仕事と勉強を両立させる時間術

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佐藤 孝幸(さとう・たかゆき)
弁護士、米国公認会計士
公認内部監査人(CIA)・公認金融監査人(CFSA)・公認不正検査士(CFE)。早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系銀行に就職。職場における資格の強さを実感し、米国公認会計士資格の取得を目指す。働きながら勉強を開始し、わずか1年で米国公認会計士試験に合格した。その後、米国の大手会計事務所に就職し、渡米。帰国後を視野に入れて、米国在住のまま司法試験の受験勉強を開始。2年間の独学で、帰国後に一発合格、弁護士となる。現在、弁護士業務のかたわら、資格取得を目指す方の「資格勉強お悩み相談」を受け付けている。
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(弁護士、米国公認会計士 佐藤 孝幸)

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